茨城味自慢;日本が生んだ佃煮文化を届けたい | ショートシナリオの館

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気ままに会話形式を中心としたストーリーを書いています。

茨城県の佃煮といえば、霞ヶ浦で漁獲されるハゼや貝類などを、醤油や砂糖で煮込んだものが

代表格で、湖畔には佃煮の加工会社が点在しています。茨城県の佃煮の歴史は明治時代からで、佃煮の創業者は、奥村吉郎兵衛という人物。東京の佃島で佃煮の製法を学んだ後、郷里に帰って、当時は肥料にしかならなかったハゼを佃煮にしました。西南の役で軍用食料として認められ、その後も佃煮製造は周辺地域に広まり、産業として定着しました。その功績をたたえる碑が、行方市粗毛の上羽神社にあります。現在の霞ヶ浦の佃煮にはハゼ、ワカサギ、エビの漁獲品以外にも、くるみや生姜などを使った製品がありますが、いずれも、素材の美味しさを活かすためにみりんに頼らず、地元茨城のまろやかな醤油や秘伝の隠し味でコクと照りを出しています。農林水産大臣賞を過去8回受賞した「出羽屋」や、漁師がつくる「安部」などが有名です。霞ヶ浦が育む、四季折々の恵みを、古いのれんと確かな技術で丹念に手作りした風味豊かな味の佃煮を紹介します。

 

<佃煮文化の誕生>

佃煮文化の歴史は400年以上で、発祥の地は東京の佃島です。誕生秘話として定説になっているのが「本能寺の変で、命の危険を感じた家康が堺を脱出する際に、手助けをしたのが、大阪の摂津国佃村の漁師たちで、船の他、小魚を塩辛く味つけた道中食も提供。家康は無事に三河(現在の愛知県)に辿りつきました。その後、家康は江戸に幕府を開くにあたり、江戸には漁師が少なかったことから、佃村の漁師を江戸に呼び寄せます。彼らが居住地としたのが隅田川の中洲の小島。この島は「佃島」と名付けられました。佃島の漁師は江戸幕府への献上品にならない、小魚を煮付けて保存食として食べていたのですが、それが参勤交代で土産として持ち帰った武士によって全国に広まり、「佃島で作られた煮物=佃煮」として広まった」といいます。初期の佃煮は現在のようなしょうゆと砂糖を使ったものではなく、塩のみで煮たシンプルなものだったよ
うです。本格的に佃煮が全国区で知られるようになったのは日清・日露戦争後です。軍用食として採用されたからです。この頃には現在に近い食味になっていたようです。

 

<佃煮とは伝統の味>

佃煮は、小魚、小エビ、貝類、昆布などの水産物や野菜などの農産物を原料に砂糖、醤油、飴、みりん、調味料などで作られた濃厚な調味液を浸透させ甘辛く煮つめた加工食品です。各地には、それぞれ郷土色豊かな自慢の料理や名産品がありますが、佃煮もその一つですね。 佃煮は、あまりに身近な食品だからなのか、空気のようにあまり意識される存在ではありません。ところが、コンビニやスーパーなどで人気のオニギリでは、佃煮昆布のオニギリが必ずランキングの上位に入っています。ふだん意識はしないけど、皆さんが大好きな食べ物、それが佃煮です。グルメや飽食と言われる時代にこそ、歴史を持った伝統的な日本特有の食べ物として、また、最も貯蔵性の長い保存食品として見直したいものですね。

 

<佃煮の種類>

佃煮の種類は使用する原料によって分類されます。主な佃煮だけで118種類の佃煮があるといわれていますが、この他に地方の特産品もいろいろあります。

1.水産佃煮:昆布、わかさぎ、いわし、あさり、えび、しじみなどの佃煮
2.農産佃煮:ふき、葉唐辛子、豆、キャラブキ、ワラビ、ごぼうなどの佃煮
3.その他の佃煮:いなご、くるみ、蜂の子などの佃煮

これ以外に、混合佃煮製品といって2品、あるいは3品を一緒に煮た佃煮もあります。さらに、人気商品の昆布佃煮でも、塩昆布、角切昆布、昆布巻、しそ昆布など多くの種類があります。その他にあめ煮、でんぶ、しぐれ煮など、その形状や製造方法によっても多種に分かれるので、これらを数えあげれば佃煮の種類は相当な数になります。

 

<佃煮の豆知識>

1.佃煮原料の栄養価

  佃煮は水産物、農産物などを原料とし、醤油、砂糖、食塩、水飴などで甘辛く煮詰めた加工

  食品ですが、素材をまるごと使用するため、各素材の栄養価をそのまま摂取することができ

  る素晴らしい食材です。たとえば、海藻類は、ビタミン、ミネラル、植物繊維などが豊富に

  含んでいます。魚類・貝類では、良質なタンパク質や各種ビタミン、カルシウム、鉄、リン

  などを多く含み、農産類では、豊富な食物繊維や各種ビタミン、カルシウム、アミノ酸など

  が多く含んでいます。めずらしい食材では、「畑のカルシウム」と呼ばれる、いなごには豊

  富なカルシウムが含まれております。また、健康食材として大人気のくるみには、抗酸化値

  が最も高く、さらに各種ビタミンや食物繊維、ミネラル、メラニン、マグネシウムなど人間

  の健康維持、増進に必要な成分が豊富に含まれています。そんな原料をそのまま味わえる佃

  煮はまさに健康食と言えるのでないでしょうか。

 

2.6月29日は佃煮の日

  佃煮発祥の地、佃島の守り神である住吉神社が建立されたのが正保2年(1646年)6月29日。

  「29」と「佃煮」をかけ、「佃煮の日」になりました。

 

3.姿、形が違うが、れっきとした佃煮の仲間たち

 (1)しぐれ煮:牛肉のしぐれ煮・ハマグリのしぐれ煮など

    佃煮が関東の佃島発祥とされているのに対し、しぐれ煮は関西生まれの保存食として知

    られています。たくさんのたまり醤油と千切りにした生姜をたっぷりと絡ませて、甘辛

    の煮汁をしっかりと煮詰めるのが、しぐれ煮の特徴です。三重県桑名のハマグリのしぐ

    れ煮が有名ですね。

(2)でんぶ:桜でんぶ・おぼろなど

    でんぶとは、魚肉や鶏肉を加工したもので、これらを茹でた後、皮や骨を取り除いてす

    り鉢で身をほぐします。ほぐした身を酒、みりん、砂糖、塩などと混ぜながら、フライ

    パンで炒ることで完成します。桜でんぶの場合はここに食紅も入れて、ほんのり桜色に

    仕上げます。「魚を元の形がないほどに崩した無粋な料理」という意味だそうです。

(3)甘露煮:くるみ。黒豆、柚子、ユリ根、ソラマメの甘露煮など

    甘露煮の「甘露」の名前の由来は中国とインドにあります。甘露煮は、水飴を使ってい

    るのが特徴です。砂糖と共に糖分を多く使用しており、味は佃煮よりも甘く、蜜に覆わ

    れたような見た目です。

(4)あめ煮:サツマイモ、レンコン、ニンジン、かぼちゃのあめ煮など

    あめ煮とは、水飴を極端に多く使用することで、甘くつやよく煮たものです。甘露煮は

    煮汁を濃くして、素材に味をしみ込ませるのに対して、あめ煮は煮汁を薄くして、素材

    の持ち味を生かします。

 

4.佃煮(魚介類のみ)の一年間の消費量ランキング(2020年)

   1位は秋田県で911円、2位は三重県で782円、3位は滋賀県で730円・・・12位が茨城県

   で440円でした。最下位は沖縄県の100円となっています。たしかに、沖縄料理に佃煮の

   イメージはありませんね。

 

5.自分で佃煮を作る

   材料はしらす干し、醤油、酒、みりん、砂糖だけ。フライパンに材料をすべて入れ、美味

   しそうな色になるまで心を込めて炊きます。それだけで完成です。もう見るだけでお腹が

   鳴ります。できたての佃煮はやわらかくて美味しい!もちろん冷まして、味が染み食感の

   いい佃煮も美味しいです。簡単なので皆さんもぜひ挑戦してね!

 

6.佃煮は冷蔵庫で保存を

   佃煮はもともと保存食ですが、最近は健康志向を反映して塩分が昔よりも控えめになりつ

   つあります。ご家庭では冷蔵庫へ入れましょう。しばらく食べないときは、密閉容器に入

   れて冷凍保存もできます。

 

<代表的な佃煮の製造方法>

佃煮製品には原料の原形のまま、或いは、食べ易い形にした単一品と混合品とがありますが、い

ずれも日本人の嗜好に合わせて原料素材と醤油の風味を生かしたもので、甘味を程よく調和させた調味液が素材によくにじみ込むまで丹念に煮熟又は焼煮して原料素材中の水分が調味液中の塩分、糖分その他の調味料と入れかわるまで煮詰め、保存性を高めた調理加工食品です。

 

(1)〔浮かし煮〕(うかしに)

   浮かし煮は、生鮮原料や形が崩れやすい材料で作る場合に適した製造方法です。事前に原

   料をよく選別、洗浄し水を切っておきます。水、寒天、醤油、砂糖、水飴など調味した煮

   熟用の煮液を釜に入れて加熱、沸騰させます。沸騰した煮液のなかに前処理済の原料を投

   入して一定時間煮た後、これを別の容器にすくい上げ、ただちに冷却用の盤またはコンベ

   アに薄く広げて乗せ、送風機、扇風機などで風を送って冷却する製造方法です。

 

(2)〔煎り付け煮〕(いりつけに)

   昆布やスルメ、干しえび等の乾燥材料やいかなご、わかさぎ等の比較的形が崩れにくい材

   料で作る場合は、煎り付け煮が適しています。事前に配合調味した糖度の高い調味液を、

   一定の少量釜に入れ、加熱沸騰させ、その中へ前処理済の原料を投入して焦げつくことの

   ないよう手早くかき混ぜながら煎炊きします。こうして液が全部の原料に浸透したとこ

   で、別の容器にすくい取る方法で、冷却は浮かし煮の場合と同様に行います。

 

(3)〔浸漬法〕(しんしほう)

   煮豆の場合はほとんどこの方法が採用されていますが、佃煮でも農産原料品、昆布などで

   この方法が一部使われています。ボイル、水炊きなどによって充分水分を含ませ軟化させ

   た原料を、熱い調味液のなかに漬け込んで煮熟したと同じ効果を得る方法です。一定時間

   浸漬することによって、原料中の水分と漬込液中の塩分、糖分その他が入れ替わって味が

   つきます。見た目にはそんなに大差のない3つの製造方法ですが、食べてみると意外にも

   それぞれ味の違いが感じられます。基本の佃煮、生姜を感じるしぐれ煮、甘くツヤツヤし

   た甘露煮。好みを見つけてみてはいかがでしょうか。

 

<茨城県の佃煮メーカー>

ここでは霞ヶ浦産にこだわり、湖畔で漁から加工まで一貫生産している企業を紹介します。(HPより)

 

1.農林水産大臣賞を過去8回受賞した「出羽屋」

  出羽屋は、霞ヶ浦の畔で佃煮をつくり続けて80余年。昭和7年創業より、霞ヶ浦湖畔の本

  社工場で佃煮・煮干をつくっています。霞ヶ浦で獲れるわかさぎ、えび、白魚をはじめ、く

  るみや昆布を使った様々な商品を取り扱っています。佃煮は保存食として、固く塩辛く炊き

  上げ日持ちすることが大切にされてきました。しかし、私たちは「日持ち優先のものは作ら

  ない」をポリシーに、素材の味を生かした佃煮を作っています。ずっと食べ続けてもらえる

  佃煮をつくっていくこと。それを大切にしていきます。

 

2.漁師が作る佃煮「安部」

  あべ佃煮の始まりは、帆曳船で有名な霞ヶ浦の漁師です。漁師だけに、魚の鮮度には徹底し

  てこだわっています。加工所の目の前には満々と水を湛える広大な霞ヶ浦が広がっていま

  す。水揚げされてから加工所に運搬されるまで、特殊な方法で魚の鮮度を保っています。あ

  べ佃煮の炊き込みは、みりんに頼らずコクと照りを出すために、地元茨城のまろやかで長期

  熟成させた「清原醤油」を使い、秘伝の隠し味を用いて味の深みをつけ、じっくり時間を掛け

  ることで、どこにもまねのできない独自の味を守り続けています。

 

3.日本の食卓にいつまでも佃煮文化を届けていきたい「島田商店」

  株式会社島田商店では、先代から引き継いだ佃煮伝統製法を大切に守り、また、伝統を土台

  に常に技術革新に磨きをかけていきます。わたしたちは、これからの日本を背負っていく世

  代の方々にも「美味しい」と言ってもらえる商品づくりを通して、日本の食卓に新しい佃煮

  文化をお届けします。

 

4.通なあの方もきっと喜ぶ味「小松屋」の佃煮

  製法については、吟味された素材を、わかさぎは湯引きをしたり、えびは炒り込みなどの伝

  承の技法を用い、新鮮な帆立のぷりぷりした食感を残すために浅煮き、また低温調理など時

  代を取り入れた新たな製法と、無添加醤油や本味醂、清酒等を贅沢に使い、他とは違う上品

  な味の佃煮に仕上げます。

 

贈答品としても重宝されている佃煮は、和食には欠かせない食品の一つです。通販で佃煮を購入して、さまざまな地域の味を楽しんでいる人も多いでしょう。

 

是非茨城県、霞ヶ浦の佃煮を加えてくださいね!