茨城味自慢:名瀑が育んだ奥久慈の「こんにゃく」をご賞味あれ! | ショートシナリオの館

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気ままに会話形式を中心としたストーリーを書いています。

 

茨城県の奥久慈地方は、古くからこんにゃく栽培が盛んです。これは、水戸藩の中島藤右衛門
がこんにゃく芋を粉末にする方法を考案したことに由来しており、生芋を薄く輪切りにして串
に刺して乾燥させ砕くことによって、貯蔵や遠方への持ち運びがしやすくなりました。これに
より、こんにゃく栽培が飛躍的に増加し、江戸時代には水戸藩の専売品として藩の財政を支え
るまでになったそうです。そのため特産品として今でも栽培が盛んであり、大子町には「蒟蒻
神社」もあります。ですから大子町はそれまで保存が効かないため、秋限定の作物だったこん
にゃくを、通年で流通する商品にして全国に広めた発祥の地なのです。
通常こんにゃく芋は、収穫されるとすぐに精粉処理されます。市販されているほとんどのこん
にゃく製品は、この精粉された「こんにゃく粉」から作られたものです。しかし、こんにゃく
処の奥久慈・大子町のスーパーや直売所では、冬になると「手作りこんにゃく」が見られ、手
作りこんにゃく専門店もあります。こんにゃく芋を直接すって作った手作りこんにゃくは、も
ちもちとした食感と芋本来の香りが味わえる逸品。「こんにゃく作りは、素材そのものをすっ
て固めるシンプルな製法なので、芋の良し悪しで味が決まる」と言われます。奥久慈・大子町
のこんにゃくは袋田の滝の名瀑が育んだ、滋味豊かな伝統の味です。今回は奥久慈・大子の特
産品・こんにゃくを紹介します。

 

<こんにゃく芋の品種>

こんにゃくの原料である、こんにゃく芋は東南アジアを中心に130種ほどありますが、一部を
除いてほとんどはマンナンという食物繊維が含まれていないので「こんにゃく」になりません。
マンナンを含むこんにゃく芋は東南アジア・中国で原種と呼ばれる一部の品種と、日本国内で
栽培されている下記の7品種です。

 

1.既存の品種

  ①在来種:日本では古くから栽培されてきた。繊細な品種で生産者が激減している。
  ②支那種:大正15年頃の中国由来品種。環境変化に強いが、芋の品質保持が難しい。
  ③備中種:在来種とともに古くから国内で栽培されてきた品種。価格は安い。

2.育成品種・・・全て群馬県農業試験場で品種改良されました。

  ④はるなくろ:支那種と在来種の交配種。在来種よりも大きめで着生数は並。
  ⑤赤城大玉:支那種と在来種の1系統である金島在来の品種との交配種。国内生産の90%
        はこの品種です。育てやすく、出来高も高い。
  ⑥みょうぎゆたか:支那種の自殖育成系統である群系26号と支那種の1系統である富岡支
         那の交配種。支那種並の晩生。萌芽が遅いため、出芽期、開葉期は遅れる
  ⑦みやままさり:支那種と備中種の交配で生まれた種と在来種との交配種。

 

<製品としてのこんにゃくの種類>

こんにゃく製品には、板状に整形した「板こんにゃく」、玉状に整形した「玉こんにゃく」、
細い糸状に整形した「しらたき(糸こんにゃく)」、中央部に切り込みを入れてひねりねじっ
た「手綱こんにゃく」、アクが少なく加熱なしで食べられる「刺身こんにゃく」、高野豆腐の
ような加工をした「凍みこんにゃく(氷こんにゃく)」、三酸化二鉄で赤く着色した「赤こん
にゃく」などなどがあります。また、製法により、精粉から作る「精粉こんにゃく」と、生イ
モを蒸したり煮たりして作る「生芋こんにゃく」がありますが、市販製品のほとんどは「精粉
こんにゃく」からつくられています。

 

<こんにゃく芋国内生産量ランキング>

全国計は54,200tですが、トップは群馬県の51,200tで、シェアではなんと94.5%となっています。この内の90%が赤城大玉種だそうです。そして、生産量の約半分は下仁田町で集荷されており、製粉加工も日本一です。(2021年)
実は江戸~明治時代までは茨城県が日本一でした。ではなぜ群馬県のこんにゃく産業が発展し
たのかというと大きな要因は二つ。1つ目は、品種改良による成果です。今ある育成品種は全
て群馬県の農業試験場生まれです。2つ目はこんにゃくを作るのに適した土壌がたくさんあるこ
とです。こんにゃく芋は、種芋を植えてから収穫までに3~4年かかります。また蒟蒻の「蒻」
の字は草冠に弱いと書くことからもわかるように、こんにゃくは風害や病気などにとても弱い
植物なのです。そんなこんにゃく芋を従来のものより強く、収穫も早くできるような品種に改良
したのが群馬県です。そして群馬県の中でもこんにゃく芋の主産地となっている赤城山麓の広大
な緩斜面や火山灰の土壌が、湿気を嫌うこんにゃく栽培にとても適した地域となっているのです。

 

<こんにゃくの供給事情>

生産者の高齢化等で国内のコンニャク生産量は減少しています。昭和40年代に約18000haの栽培面積でしたが、令和元年(2019年)には3660haまで減少しています。このため国内供給量の
10~20%を中国や東南アジアからの輸入品で賄っています。コンニャク芋(精粉)の輸入先は
84%がミャンマーであり、製品としてのコンニャクの輸入は、87%が中国産です。(令和元年)そして、国内の消費量も最近は減少傾向にあります。(農水省 2020)

 

<こんにゃくの豆知識>

 

1.こんにゃくを食べているのは日本だけ?
   作物として栽培し全国民が日常的に様々な料理で食べているのは日本だけでしたが、中国
   では日本の食べ方が急拡大し中華料理などにも使われています。又、近年になってグルテ
   ンフリー、ダイエット、健康食材として世界が注目しています。これは、コンニャクの主
   成分であるグルコマンナン(グルコースとマンノースが結合した多糖類)が人間の消化酵
   素では消化できず、かつ胃の中で膨れて満腹感が得られるためであり、また血糖値抑制効
   果なども報告されているのです。肥満とグルテンアレルギーに悩む欧米では、ローカロリ
   ーとグルテンフリーの麺として「しらたき」が注目されています。

2.こんにゃくの水分は何%?
   こんにゃく粉(グルコマンナン)を30~40倍の水で練って固めるので水分は97%程度、
   残り3%の固形分のほとんどが食物繊維のグルコマンナンです。生芋こんにゃくも水分は
   96%程度です。

3.こんにゃくの栄養・効能
   こんにゃくはカロリーが100gあたり5〜7kcalという超低カロリーな食品です。主成分は

   優れた整腸作用をもつグルコマンナンという食物繊維で、体内で消化されず腸まで届き、

   腸内の有害物質や老廃物を吸収して便とともに体外へ排出するため、こんにゃくは便秘解

   消やダイエットに最適な食べ物です。また、グルコマンナンには糖質の吸収を遅くし、コ

   レステロールを減少させる働きもあるため、糖尿病や生活習慣病の予防にも役立ちます。
   ただし、こんにゃくは体を冷やす作用があるため、冷え性の方は食べ過ぎに注意が必要で
   す。食物繊維のほかには、カルシウムやカリウム、鉄などのミネラルが含まれています。
   生芋こんにゃくには、精粉こんにゃくに含まれていないヨウ素も含まれています。脂質や
   ビタミン類はほぼ含まれていません。日本人の栄養摂取量で不足している主要な栄養素は
   食物繊維とカルシウムですが、この二つの成分をカロリーの過剰摂取を気にせずに補給で
   きるのがこんにゃくの魅力です。

4.白いこんにゃくと黒いこんにゃく!
   西日本では、こんにゃくと言えば黒いこんにゃく、東日本では白いこんにゃくが一般的で
   す。普通のこんにゃくの加工方法は、こんにゃく芋を切り干し粉にした精粉からこんにゃ
   くは作られています。このまま作ると白いこんにゃくが出来上がります。西日本向けの黒
   いこんにゃくは海藻のアラメの粉を入れて黒くしています。このほかに芋から直接作った
   「生芋こんにゃく」も少し黒っぽく出来上がります。

5.こんにゃくの旬の時期は?
   コンニャク芋の収穫期は10月から11月頃で秋が旬です。しかし、原料の精粉や整形され

   たこんにゃく製品は通年で流通しており旬はありません。

6.こんにゃくの選び方
   こんにゃくは、やわらか過ぎず適度に弾力があるもの。製造年月日が新しいものを選びま
   しょう。

7.保存方法
   未開封のこんにゃくは常温保存が可能です。衛生的にパックされており、高温で殺菌処理
   されているので、保存状態が過度に悪くなければ賞味期限より半年~1年過ぎても腐るこ
   とはないようです。開封後は袋に入っている水と一緒に保存容器に入れ、冷蔵庫で保存し
   ます。この水は殺菌作用のあるアルカリ水なので、こんにゃくを長持ちさせる効果があり
   ます。冷凍保存する場合は、冷凍保存袋に重ならないよう平に広げて入れ、できる限り空
   気を抜いて保存します。冷凍は約1か月保存可能です。

8,こんにゃくづくりは灰汁でアクを抜くのがミソ
   こんにゃく芋は、少しかじっただけでも口の中がピリピリするほどの強烈なエグミがあり
   ます。正体はシュウ酸やシュウ酸カルシウムです。取り除くために必要なのが、こんにゃ
   くを固める働きをする灰汁(あく)です。灰汁には、昔は草木灰が使われていましたが、
   最近では消石灰(水酸化カルシウム)や炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)が使用されていま
   す。使用量は、消石灰なら、生いもの重さの0.5~1%(精粉の場合は重さの約5%)が目

   安です。しっかりとアクを抜くためには、固めたこんにゃくを30分~1時間ほど煮てから

   十分に水にさらすことが肝心です。なお、生のこんにゃく芋500g分で板こんにゃく5~6

   枚を作ることができます。

9.生芋こんにゃくと精粉こんにゃくの違い
   精粉こんにゃくと生芋こんにゃくの製法の違いは最初の工程にあります。精粉こんにゃく
   はこんにゃく粉を水になじませるところからはじまりますが、生芋こんにゃくはこんにゃ
   く芋をすりつぶす工程からです。こんにゃく芋の皮を剥き、ペースト状になるまで根気強
   くすりおろす作業は簡単なものとはいえず重労働です。

 ①生芋こんにゃく:こんにゃく芋をすりおろして固めたものが「生芋こんにゃく」。芋の保存
   期間は短いため、収穫時期にのみ生芋こんにゃくは食べられます。食物繊維のグルコマン
   ナンをしっかりと練り上げて作る生芋こんにゃくは弾力ある食感が特徴です。むちっとし
   た歯ごたえと弾力ある食感はたまりません。
 ②精粉こんにゃく:収穫した生芋を水洗いした後、栽断し切り干し (荒粉) にし、さらに乾燥

   させたものを混じり気のないきれいな精粉にします。ただし、こんにゃくマンナンが変質

   しないで糊カのある粉に仕上げるためには、熟練した高度な技術が要ります。

10.生芋こんにゃくの作り方
    芋300gぐらいが作り易い量です。茹でて皮を剥いた芋1㎏に対し,ぬるま湯3.5L、ぬ

    るま湯350ccに炭酸ソーダ25g位の割合で作ります。保存は水に入れて冷蔵庫。使い終

    わった器具は、その都度、直ぐに洗うと糊が落ちやすい。(作業はゴム 手袋必須)

 

<奥久慈地方のこんにゃく芋栽培>
  3年物で収穫したこんにゃく芋についている種イモを4月~5月に株間10㎝で植えます。
  そこから地下茎が伸び、秋には生子(きご)というこんにゃく芋の赤ちゃんができます。
  この生子を収穫・貯蔵し、次の春に植え付け(1年生: 約15g)、秋に収穫したものを
  2年生(約100g)、さらに次の春に2年生を植え付け、秋に収穫したものを3年生
  (約600g)、次の春に3年生を植え付け、秋に収穫したものを4年生(約2~3kg)と
  言います。
  生子(1年生)~2年生では5~10倍に、2年生~3年生では5~8倍に、3年生~
  4年生では4~7倍に成長します。通常は3年生の芋を秋に出荷します。4年生まで育てて
  収穫するところもあります。こんにゃく芋の安定した栽培法が確立されたのは、昭和30 年
  頃です。こんにゃく芋は、葉にキズがついただけで病気になってしまうほど、デリケート
  な植物です。尚、こんにゃくの花は5年生以降になってから咲きますので、通常は畑で見る
  ことはありませんね。
  こんにゃく作りは、「ボカシ肥料」作りから始まります。こんにゃくの木は根腐れをおこし
  やすいため、それを予防できる“放線菌”という菌を増やして培養した「ボカシ肥料」を作

  り、これを有機質肥料と共に土にすきこみ土づくりをします。デリケートな植物なので、強

  い日光・風・干ばつ、水はけの悪い場所ではうまく育ちません。更に、年平均気温が13度

  以上必要なため、寒冷地での栽培は難しく、東北南部が北限となっています。
  10月の大子町では、各所で一面に白緑色の綺麗な葉を付けたこんにゃく畑が見られます。
  約1カ月もすれば、葉はすっかりと枯れ、いよいよ土の下のこんにゃく芋の収穫が始まりま

  す。「こんにゃくは、それほど手間のかかる作物ではないのですが、収穫がとにかく大変で

  す。掘り起こすまでは機械でやりますが、掘り起こした芋の選別は人の手でなければできな

  い。小さい芋を先に取って、大きい芋を綺麗に掃除していく作業を行いますが、この辺りの

  土は特に粘土質が強いので、芋にへばり着いた土を取るのが容易じゃないのです」とのこ

  と。10月末から12月半ばにかけて行われる収穫作業。寒い日はマイナスにまで気温の下が

  る大子町で、かじかんだ手を吐息で温めながら芋の選別を行うのは過酷な農作業なのです。

 

<特産品「奥久慈大子こんにゃく」>
  粉から作られるこんにゃくだけでなく、大子産のこんにゃく芋を使用した「奥久慈大子こん
  にゃく」は大子の特産品です。水質と水量に恵まれた奥久慈の清流で育った、滋味豊かな味
  わいが楽しめ、芋の風味豊かな産地ならではのこんにゃくです。

 

1.「凍みこんにゃく」
   こんにゃく芋の皮むき、力がいる撹拌、成型、乾燥などすべてを手作業で行ううえに、こ
   んにゃくらしからぬ食感であったため、次第に生産が減少していきました。しかし近年、
   「歯ごたえがよい、珍しいこんにゃくの伝統食品がある」「風土が育てた伝統食材をきっ
   かけに地元を活性化したい」と注目が集まり、「凍みこんにゃく」への期待が高まってい
   ます。昼夜の大きな寒暖差と、冬に雪が降らない奥久慈地方だからこそ誕生した「凍みこ
   んにゃく」、毎冬、敷き詰めたワラの上にこんにゃくを並べ天日干しをする昔ながらの製
   法で作り続けています。煮物はもちろん、天ぷらやフライ、炒め物などのお料理で美味し
   く味わうことができます。

2.生トロ極上さしみこんにゃく
   お刺身にしていただきます。限界までやわらかく仕上げたお刺身用こんにゃく。ふにゃ

   ん、ふにゃんの、とろんとろん。箸で持ち上げるのも難しい!喉をツルツルと滑り行くの

   で、噛む必要がない程!付属のお醤油タレをつけていただきます。山葵を足しても美味し

   いですが、繊細な味わいが山葵に負けて消えてしまうので、美味しいお醤油でいただきた

   いですね。

3.こんにゃくの田楽
   なんと、冷たいこんにゃくなのです。とろけるような生こんにゃくにゆず味噌がとてもお
   いしい!夏限定の味噌田楽だそうです。迷わず、お土産用に田楽用こんにゃくとゆず味噌
   をお買い上げください。

4.こんにゃくを使った大子のお土産品

   ①こんにゃくスイーツ:プルプル感を生かした商品
   ②こんにゃくスムージー:玉こんにゃくを原料にした商品
   ③こんにゃくパン:こんにゃく粉を生地にした商品。もっちりとした食感。
   他に、こんにゃくゼリー、こんにゃくラーメン、こんにゃくパスタなど。

 

是非、奥久慈・大子のこんにゃくをご賞味あれ!