EA-650を分解する(1)
先日の福袋がきっかけで、都合2台のEA-650(PSU)を手に入れました。
では1つを分解してみましょう(爆)
コンテンツが長くなりそうなので、2回に分けます。
文字ばっかりの暇コンテンツです(爆)
早速ですが、ふたを開けるとこのような感じ。
最近のPSUは大体どれもこのようなレイアウトが多いですね。
PSUの解説自体はこちらのサイトをで流れを参照して頂きまして、
当方はあくまでも部品と実装に着眼していきます。
「DOS/V Power Report ATX電源頂上決戦 夏の陣」
http://www.dosv.jp/other/0809/02.htm
この記事、内容はさわりだけですが、流れを把握するにはちょうどいい感じです。
まずは入力部。
インレットのコネクタ、スイッチと
EMC対策のセラミックコンデンサがあります。
ちなみにこのセラミックコンデンサは村田製のDEXHシリーズ。
この手の製品で国内メーカー品は珍しい印象があります。
セラミックコンデンサは+(R)と-(N)の両方から出て、
ともに「FG」(PSUケース、そして電源の緑ライン)に接続されます。
機種によってはさらに±間(R-N間)には高抵抗が挿入されていますが、
これは後段に続くEMC対策のフィルムコンデンサの放電用です。
電源ケーブルを抜いた直後にR-N間をさわっても感電しないようにするためです。
なければ効率はよくなります。
ちなみにEMCとは
・EMI(本体から出る電磁波)
・EMS(本体が外部から受ける電磁波に対する強さ)
の両方を指す表現です。
VCCIやFCIなどの認証には欠かすことのできない項目です。
特に家庭用は、比較的厳しい規格が採用されています。
ちなみにこの対策は一般的には数式や解析モデルで何とかなるものではなく、
その形状だけでも左右されてしまうものなので、
現物を実測して、実機で様子を見ながら位置や定数を決めるのが一般的です。
基板に向かう途中経路でコアを通過。
これもEMC対策で、コモンモードチョークとして作用します。
そして基板へと到達します。
ちなみに基板材は紙エポの模様。
両面対応で、表面はディスクリート部品、裏面はSMD(面実装部品)のみです。
子基板も同様です。
そのままフィルタ部門に入ります。
いきなり10W相当のセメント抵抗(メーカー不詳)…これ、どうもヒューズ内蔵型のようです。
このPSUの場合、ヒューズが見あたりませんでした。
どうやらメイン回路のヒューズとしてヒューズ内蔵型抵抗を用いているようです。
切れると、一般には交換しづらい部品です。
その後ろ、フィルタ中核部はコモンモードチョークと
フィルムコンデンサ(Xコン)の組み合わせが2つ。
数百Wの電源でVCCI ClassB準拠品であれば一般的な構成です。
フィルタ部門の最後にリレーがあります。
リレーのメーカーまでは接着剤が邪魔してわかりません。
ちなみにこのように接着剤が随所に塗られているのは
・輸送振動対策
・コイルの励磁振動対策
・コモンモードのセパレーター役
・(接着剤の種類次第では)絶縁
のいずれかが多いと思われます。
そして回路はPFC部門へと続きます。
まずは全波整流のため、ブリッジダイオードを通します。
ブリッジダイオードは新電元製のD25XBシリーズ。
単独のヒートシンクを使っています。
背後には電流検出に使用しているとおぼしき抵抗も見えます。
近くにはサージ吸収に効果があるビーズコアのようなものが入っています。
その後、俗に言うActivePFC回路(昇圧コンバータ)が待ちかまえます。
ぶっちゃけますと、PFCがなければ効率は2~5%以上アップします。
しかも価格も大きく下げられます。
というのもPFC自体が1つの電源回路だからです。
なのにPFCがなぜ必要か…その理由は、どこかで別途記事を書こうと思います。
PFCは昇圧コンバータと書きましたが、
電圧はDC200~400Vまでアップさせます。
(製品によって電圧は違うようです)
基板内にひときわ大きな電解コンデンサがあると思いますが、
大抵はこれがPFC用のコンデンサです。
こいつの容量が大きいほど、瞬時停電に強くなります。
400Vあたりの電圧で使用することもあり、
定格電圧は400~450Vのものがよく選ばれます。
電解コンデンサはSAMXON(萬裕三信電子)製LPシリーズ。
メーカーとしては結構メジャーです(もっとも中国メーカーですが)。
85℃1000時間の寿命で、リップル重畳対応品です。
リップルがちゃんと規格内であれば、
とりあえず35℃環境での目安寿命は約3.6年という計算です。
この製品は元々3年間保証の製品ですので設計上は問題ないことになります。
仮に期待寿命で5年持たせるには、電解Cをかなり冷やして使わないとダメです。
ちなみにメインパワーの電解コンデンサを交換するのは大変危険を伴います。
この部品を前提に周辺定数が決定されているのですが、
コンデンサを替えるにしても実装状態におけるESR、ESLがデータシートだけでは読めないためです。
この製品の設計寿命を示すものとしてそのまま使うのがよいでしょう。
どうしても取り替えたい方は
・50W以上のはんだごて、できれば自動半田吸い取り機(3万円~)も
・100MHz以上の帯域、250MSanples/sec以上の測定能力のあるオシロスコープ(50万円~)
(メインスイッチなどの波形測定が必要です)
・DCの測定が可能な電流プローブ(アンプ付きで50万円~)
(線の引き出しをした上でチョーク電流やコンデンサリップル電流の測定が必要です)
・500V、10MΩが測定可能な絶縁抵抗計(10万円程度)
・EMC測定の予約(測定サイトのレンタル利用で10万円/日くらい)
を準備して測定・確認をしましょう(苦笑)
忘れてはいけません、この電源は5千円の電源なのです。
…通電中、通電直後はこの電解コンデンサやその近辺は絶対にふれないでください。
停止中であれば「かなり痛い」「気分が悪い」で済む可能性が高いレベルですが、
動作中に触れてしまうと触れた状況次第では生死に関わるおそれがあります。
この付近にはPFCのメインスイッチング素子(大多数はFET)があります。
メインの電流を扱いますので発熱が大きく、
大きなヒートシンクについているのが通例です。
EA-650の場合、FETはInfeneon製CoolMOSシリーズ、「SPW20N60C3」というものです。
600V対応のFETにしてはRon(オン抵抗)が非常に小さく、
25℃時0.16Ωにとどまります。
なかなかいい部品を使っていますね~。
予想ですが、シルクからみると2個並列で使っているようです。
制御を司る部分はこのヒートシンクの裏側に起立しています。
PFCの制御ICはInfineon製「ICE1PCS02」。
ちなみにこの基板、二次側DC-DC部の制御ICも搭載しています。
というわけで長くなりそうなので今回はここまでに。
この続きは来週へ…
ちなみに
「モバイルSandy Bridgeを搭載したNano-ITXマザーボード
」
なる記事がAKIBA PC Hotline!殿に掲載されました。
128mmはともかく、写真で見る限り穴位置はNano-ITXの基準になっているようですし、
スペック面からすると非常に気になっているところです。