LEDを光らせる(1)
LEDはPCのインジケータとしてだけでなく、
当方と仲良くさせて頂いている多くの方にとって
「イルミネーション」という役割も担う、大事な素子です(笑)
当方でも、その扱い方を書いてみたいと思います。
ただし、例に漏れず長々と書いておりますのでご了承をm(_ _)m
LEDはアノード(A)とカソード(K)の2極の受動素子です。
ダイオードの仲間ではありますが、逆方向耐圧(破壊電圧)が5V程度と低いため
一般的な整流用途に使用することはできません。
ちなみに球型のLEDはこんな形。
アノードとカソードの見分け方ですが、リードの長い方がアノードです。
「内部の皿のように広がっている電極をカソード」ととらえる向きもありますが、
アノード側電極が広がっているタイプも2~3例ほど見たことがありますので過信は禁物です。
いずれにしても、データシートに記載されている内容を確認します。
LEDはたいてい20mA以上の電流を流してしまうと壊れてしまいます。
データシートに記載されている順方向電流(IF)以上流すとアウトです。
そのため電流を制限する何らかの回路とともに使用しなくてはなりません。
今回は2回にわたって、電流制限の方法と、スズメなりにやや細かな考察をしてみます。
「やや」なのは、今回はLEDのVFのばらつきを考慮していないからです。
真剣に計算をする場合、
①使用するすべての部品の納入仕様書をメーカーや販売代理店に請求して、
決して「予告なく変更されることがない」電気特性を調べる
(ばらつきの範囲、高低温試験などだけでなく、半田付けの条件、部品保管条件なども重要です)
②どの部品も「絶対最大定格」を超えないように設計する
という作業が必要になります。
もちろん、個人では納入仕様書の取り交わしはできないことですが…(^^;)
1.抵抗を利用する
抵抗法はオームの法則、V=RIから電流を決めているものです。
素子の価格はもっとも安く、また計算自体も特に難しいものではありません。
また、可変抵抗などを組み合わせることで、
簡単な調光を行うこともできます。
抵抗自体はFit数も少なく、故障のしにくさでも秀逸です。
PCでLEDを点灯させるような場合はこれがもっともおすすめです。
○抵抗値の算出
1つ例を考えてみましょう。
たとえば電源電圧12Vで青色のダイオード1つを明るく光らせる場合…
青色のダイオードはほとんどGaN(窒化ガリウム)系ですので、
20mAほど電流を流したい場合の順方向電圧(=VF)を3.3Vとします。
※3.3Vは例です。実際のVFはデータシートの値を調べます。
※VFは順方向電流(IF)によって変化します。
シート上は代表値しか記載されないのでグラフで読みます。
※VFは同じ型番のLEDであっても、個体によってばらつきがあります。
※赤や黄緑、黄色といった「昔からある」ダイオードはGaAs(砒化ガリウム)系で、VFは2.0V前後です。
青、白、青緑、桃色あたりはVF=3.3V程度、紫外光は3.7V程度です(いずれもVF=20mA程度時)
順方向電圧(VF)は電源電圧からそのまま引き算。残った電圧が抵抗にかかります。
式としては
12-3.3=8.7[V]
となります(上図のxVは8.7V)。
8.7Vで20mAが流れるような抵抗を選定すると
8.7[V]/0.02[A]=435[Ω]
という抵抗値を導き出します。
実際に入手できる抵抗は通常「E24系列」と呼ばれる
1.0、1.1、1.2、1.3、1.5、1.6、1.8、2.0、
2.2、2.4、2.7、3.0、3.3、3.6、3.9、4.3、
4.7、5.1、5.6、6.2、6.8、7.5、8.2、9.1
という数字と、桁数のかけ算から選ぶことになります。
この中ですと4.3×100=430Ω、もしくは4.7×100=470Ωが近いことになります。
ここで430Ωですと20mAを超えることになってしまうため、
470Ωを選定する方がよいと考えます。
※±5%の精度の抵抗の場合、470Ωの最低値は446.5Ωとなります。
この最低値の場合でも20mAの限界点である435Ωよりも高く設定しておくべきです。
ちなみに
1.0から1飛びした12個(■■■)を「E12系列」
1.0から3飛びした6個(■■)を「E6系列」
1.0、2.2、4.7の3つ(■)は「E3系列」
と呼び、このE系列は抵抗に限らず非常によく使われる値です。
また、E24よりもE12、E6、E3系列になるにつれて入手しやすくなります。
○抵抗の定格を気にする
470Ωに20mA(例では正確には8.7[V]/470[Ω]=18.5[mA]です)を流すと
この470Ωの抵抗の消費電力は
P=I^2*R=0.02*0.02*470=0.188[W] ※もちろんP=VIで計算しても可
となります。
一応、1/4W抵抗を使えば
使用率=0.188[W]/0.25[W]=0.752=75.2[%]
ということになり、電力的には問題ないことになります。
1/6Wでは100%を超えてしまうのでアウトです。
今度は抵抗の発熱と、電力低減の必要性の確認。
一例としてKOA製の炭素皮膜抵抗「CF」シリーズのデータシート
http://www.koaproducts.com/pdf/cf.pdf
の「定格電力比率グラフ」によれば
1/4W製品で0.188W程度を使用した際、約25℃の温度上昇であると読むことができます。
実は多くの部品は「負荷軽減曲線」というグラフが存在しまして、
これを超えない範囲で使用しなくてはならないのです。
1/4Wとかかれていても、温度によっては1/4Wをかけてはいけないケースがあります。
CFシリーズにも「負荷軽減曲線」がちゃんとあります。
この例では100%負荷時は75℃、0%負荷時は155℃という直線で囲まれた領域です。
さて、多くのこれを直線として式に表すと… (2点間を通る直線…中学数学ですね)
温度低減を考慮した温度上限 =(155-70)*(1-x)+70
となり、xに75.2%を代入すると
(155-70)*(1-0.752)+70=0.9108=91.1[℃]
そう、75.2%の使用率で使用するためには91℃以下で使用しなければなりません。
91℃になるためにはケース内部温度が91-25=66℃の時ですので、
問題ないであろうと考えます。
※ここで紹介したデータシートはあくまでもKOA製CFシリーズのデータです。
ほかの炭素皮膜抵抗で同じ結果になるわけではありませんのでご注意ください。
また、完成時に熱収縮チューブ(たとえば住友製スミチューブAシリーズ)で処理を施している際、
抵抗の発熱の影響(+25℃)ではチューブに問題は起きないといえます。
http://www.sei-sfp.co.jp/products/pdf/SUMITUBE-A.pdf
(連続使用可能温度上限は105℃と記載されているので問題なし。
もしも上限85℃のチューブであればケース内部温度は60℃以下で使うことになりますが、
そもそも60℃になることは考えにくく、問題ないでしょう)
…ここまでやって、初めて部品選定が終了します。
なお、最初の例の回路全体、LED+抵抗の消費電力は
12[V]*0.02[A]=0.24[W]
ですから、抵抗が実に8割弱も電力を消費していることになります。
○抵抗のロスの少ない使い方を考える
(1)LEDを直列にする
さて、元々車載需要から発展したもののようですが、
フレキシブル基板上にLEDを載せ、防水処理を施したものを
「LEDテープ」と呼んでいます。
これ、3個のLEDと電流制限の抵抗が直列に搭載された1単位が
いくつも電源ラインにぶら下がっている、というものです。
3単位が連なったタイプを回路図に書くとこうなります。
それぞれに電流制限素子が直列に入っています。
さて、このLEDテープの1単位に12Vをかけるとどうなるでしょうか。
LEDは先ほどと同じVF=3.3Vの青色LEDとします。
各LEDはそれぞれ3.3Vの電圧降下がありますから、3個で9.9Vの降下。
残り、12-(3.3*3)=2.1[V]が電流制限素子にかかります。
最初の例と同じく20mA流したいとすれば、
直列であればほかに電流が流れ出ない(=分流しない)ので計算は20mAそのまま。
2.1[V]/0.02[A]=105[Ω]
となります。
E24系列では110Ω、入手難度からすれば120Ωが選定しやすいでしょうか。
念のため110Ωを選んだとして、110Ωの消費電力を計算すると、
P=0.02*0.02*110=0.044[W]
※±5%の誤差の場合最低値は104.5Ωとなり、実用上は無視できるものの逸脱がある点は注意です。
…なんと、先ほどと同じ「12Vラインから20mAをとる」という想定で
3個のLEDを光らせることができました。
LED+抵抗の消費電力はどちらも 12[V]*0.02[A]=0.24[W] で同じですから、
3個直列の方が仕事量3倍と大変お得です。
実際、抵抗で消費する電力も大幅に減りました。
ただし、4個直列にすると3.3*4=13.2Vとなり、
電源電圧よりも高くなってしまうため、どうやっても光りません。
(2)電圧を下げる
PCは幸いなことに5Vラインもあります。
最初の例題で出てきた条件を変えます。
電源電圧5Vで青色のダイオード1つを明るく光らせる場合…
式を1行にまとめると、
(5-3.3)/0.02=85[Ω]
となります。
LED+抵抗の消費電力は 5[V]*0.02[A]=0.1[W] となります。
最初の例は0.24Wで1個のLEDを光らせましたが、
12Vを5Vに変更したことで、同じ個数で同じ光、すなわち同じ仕事量を0.1Wで実現したことになります。
2.4倍のお得度です。
(3)検証
最初の例題がいかに非効率なのかが見えてきますが、
(1)では3倍、(2)では2.4倍の仕事量を実現できました。
ではどちらがいいか、といいますと… ケースバイケース、というのが正解です。
えっ、3倍の方が大きいから、(1)で決まりじゃん?
もちろん、大量に光らせる場合は(1)が大方の正解で間違いありません。
(1)は制限抵抗1つ、LED3つの回路構成です。
どれか1つでも(オープンモードで)故障すると、3個同時に点灯しなくなります。
これでは困る用途が考えられる場合は、
(2)のように1個ずつ独立した回路にする方が安心なのです。
ただし「LED3個を点灯する」場合、
(1)では4個の部品だけで実現できるのに対し、(2)は部品点数が6個必要ですから
コスト面、設置面積、(部品が多いことによる)故障リスクの増加が考えられます。
…そう、一長一短です。
用途に応じて回路を考えるのがよいのです。
○抵抗法では難しいこと
電源電圧が変動する場合、
V=RIのVが動く、つまり電流も動いてしまいますから
20mAなどの固定した電流にすることはできなくなります。
次回は別の電流制限や点灯法を紹介します。