ポーランド、MiG-29十数機もウクライナに? | すずくるのお国のまもり

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◎ポーランド、残りのMiG-29十数機もウクライナに供与する可能性

 

 

 ポーランドは残りのMiG-29戦闘機をウクライナに供与する可能性を示唆した。実現すれば、ウクライナ空軍のMiG-29の保有数は2022年2月の戦争拡大前の水準まで回復するかもしれない。ウクライナ空軍はF-16戦闘機とミラージュ2000戦闘機の到着も待っている。
 とはいえ、ウクライナ空軍が現在、最も緊急に必要としているものは新たな戦闘機ではない。それは、駐機中の現有機を守るための防空装備だ。防空装備が手薄なまま戦闘機を増やしても、1回も出撃する前に地上で撃破される事態にもなりかねない。
 ポーランド空軍のMiG-29は、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領とポーランドのドナルド・トゥスク首相が8日、ワルシャワで2国間の安全保障協定に署名した際に話題にのぼった。
 トゥスクは記者会見で、ポーランド空軍がMiG-29に代わる新たな戦闘機を取得できるまで北大西洋条約機構(NATO)の同盟国がポーランド領空の哨戒活動を支援してくれる場合に限り、MiG-29をウクライナに譲渡してもよいとの考えを示した。「ミグは現在、警備任務を実施しているので、いますぐ引き渡すことはできない」と説明した。
 しかし、ポーランド空軍の15機前後のMiG-29戦闘機が領空警備任務を外れても、大きな問題にはならないはずだ。NATOは普段から、米国や英国、フランス、ドイツといった大国の加盟国の戦闘機部隊を、より小規模な加盟国の上空の哨戒に振り向けている。エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国は戦闘機を保有すらしておらず、これまでずっとほかの同盟国の戦闘機が上空の哨戒にあたってきた。
 ポーランドはいずれ、残りのMiG-29もウクライナに譲渡するとみていいだろう。ウクライナは持ちこたえられないペースで戦闘機を失っており、必要性は明白だ。先週にはおそらく3日連続で、飛行場に飛来したロシア軍の偵察ドローンに駐機中の目標を発見されたあと、イスカンデル弾道ミサイルを撃ち込まれ、貴重な戦闘機少なくとも3機を失っている。うち1機はMiG-29だった。

 ウクライナ空軍にMiG-29があと何機残っているのかは不明だ。2年4カ月あまり前に戦争が拡大した時点では、旧ソ連製の双発の超音速機であるこの戦闘機は現役の戦闘機全体の半分近くにあたる50機ほどあったのかもしれない。
 だが、MiG-29部隊にとってもこの戦争は厳しいものになっている。これまでの激戦で、ウクライナ空軍のMiG-29はOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストに確認されているだけでも28機が撃破されている。この間、ポーランドとスロバキアはウクライナにMiG-29を計27機供与しているが、一部は飛行不可能でスペアパーツ用にしか役立たなかった。
 ポーランドからMiG-29が追加で十数機供与されれば、ウクライナ空軍のMiG-29は以前の数を上回りはしないものの、同数程度に戻るかもしれない。向こう1年かそこらの間にF-16とミラージュ2000-5が少しずつ届く間、時間を稼げるとも期待される。F-16の最初の数機は間もなく到着することになっている。
 ただ、ポーランドから新たなMiG-29がウクライナに届いても、飛び立つ前につぶされてしまう危険もある。ロシア軍はウクライナの防空網の隙を突いて、偵察ドローンをウクライナの飛行場の上空に飛ばしてはイスカンデルを撃ち込むことを繰り返している。
 だからこそ、いまは追加の戦闘機以上に追加の防空装備が必要なのだ。ウクライナにとって幸運なことに、支援諸国もその切実な必要性を理解している。米首都ワシントンで今週開かれているNATO首脳会議で、ウクライナ向け防空装備は中心的な議題のひとつになっている(編集注:9日の共同声明によると、パトリオット防空システム4基とSAMP/T防空システム1基が新たに供与される)。