ウクライナ空軍、駐機中のSu-27戦闘機6機を失う大損害 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナ空軍、駐機中のSu-27戦闘機6機を失う大損害 「組織的怠慢」に危惧

 

 

 1日かその少し前、ロシア軍の監視ドローンが、ロシアとの国境から150kmかそこらのウクライナ中部ポルタバ州にあるミルホドロ空軍基地に飛来した。
 ドローンは、ウクライナ空軍のスホーイSu-27戦闘機少なくとも6機が白昼、露天駐機されているのを発見した。そしてロシア軍のイスカンデル弾道ミサイルが撃ち込まれた(編集注:クラスター弾頭型が使用された)。この攻撃で貴重なSu-27のうち2機が撃破され、4機が損傷したもようだ。
 ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大して以来、損耗がかさんでいるウクライナ空軍にとって、1日の損害としては最も大きなもののひとつになった可能性がある。ウクライナ空軍のユーリー・イフナト報道官は「損害が出た」と認めた。
 ウクライナの軍事ブロガーたちは、前線に危険なほど近い基地にSu-27を露天駐機させることを搭乗員に命じた空軍将校を一斉に非難した。あるブロガーは「100万年戦争をしても羊たちは何も学ばない」と愚か者の比喩を用いて嘆いた。
 ウクライナ側の狙われやすい航空基地に対しては、このところロシア軍による攻撃が相次いでいる。前線から70kmほどしか離れていないウクライナ南部ドニプロペトロウシク州クリビーリフ郊外のドルヒンツェベ航空基地は昨年秋以降、ロシア軍のランセット自爆ドローンの攻撃を少なくとも4回受け、ミコヤンMiG-29戦闘機とスホーイSu-25攻撃機を少なくとも計3機失っている。
 新たに2機のSu-27をイスカンデルによってミルホドロ空軍基地で大破させたことで、ロシア軍がこの10カ月ほどの間に地上で爆破したウクライナ軍機は少なくとも5機になった。これはウクライナ軍が許容できるような損失ではない。
 2022年2月時点で、ウクライナ空軍はSu-27、Su-25、MiG-29といった作戦機を125機ほど保有していた。以後2年4カ月あまりにおよぶ激しい戦いで90機ほどを失ったことが、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」によって確認されている。
 損失を補うために、ウクライナは数十機のミグやスホーイを支援国から入手したり、長期保管庫から引っ張り出して修復したりしてきた。85機を確保しているジェネラル・ダイナミクス/ロッキード・マーティンF-16戦闘機と、12機前後とみられるダッソー・ミラージュ2000戦闘機が届くまで、ウクライナ空軍はこれらのミグやスホーイで補充して、どうにか戦闘を続けているのが現状だ。
 問題は言うまでもなく、F-16やミラージュもまた、白昼に露天駐機すればロシア側のドローンやミサイルによる攻撃にさらされやすいことだ。

 航空機の保護のためにウクライナ軍の指揮官がとるべき方策は明らかだ。まずは、ロシア側に最も近い基地から作戦機を引き離すことだ。
 ウクライナ空軍は、国内に20カ所ほどある大規模な飛行場や数十カ所あるより規模の小さな飛行場、さらに各地の高速道路に設けられる代替滑走路も利用できる。運用している機材はどれも内蔵燃料で数百km以上の航続距離がある。数tの弾薬を積んだ状態でも1100kmは飛行できるSu-27を、前線から数百kmの航空基地に短時間でも駐機させる理由はない。
 ただ、ロシア軍がウクライナ全土を攻撃できる弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有している限り、作戦機を前線から遠ざけるだけではおそらく十分でない。ウクライナ軍の指揮官はさらに、航空機や搭乗員を移動させ続ける必要もある。
 ウクライナ空軍の戦闘機旅団はもともと、保有機をロシア側に狙われにくくするために、予測しにくい運用をするようにしてきた。在欧・アフリカ米空軍のジェームズ・ヘッカー司令官の説明によると、ウクライナ軍のパイロットは「発進したのと同じ飛行場に着陸することはほとんどない」という。
 駐機中の航空機に対するロシア側の攻撃が増えているため、ウクライナ側はこれまで以上に予測しづらい運用を迫られるに違いない。同時に、駐機中の機材を守る強化型シェルターを建設したり、おとり(デコイ)をもっと配置したりすることも求められる。イフナトは「空軍は、敵に対抗し、敵を欺くために、できることは何でもやっていく」とし、欺く手段の一例にモックアップ(実物大の模型)も挙げている。
 ロシア側による容赦のない攻撃が続くなか、ウクライナ軍は保有機を守るために何をするにせよ、すぐに行動を起こす必要がある。ウクライナのジャーナリストで作家のイリヤ・ポノマレンコは、「組織的な怠慢はこの戦争でわたしたち全員を死に追いやりかねない」と警鐘を鳴らしている。
 主権国家としてのウクライナを支持する人々にとってとくに苛立たしいのは、ウクライナとの国境に近いロシア側の基地でもロシア軍機が同じように、ウクライナ側が攻撃しやすい状態に置かれていることだ。だが、米国が課している制限のために、これらのロシア軍機は米国製兵器では攻撃できない場合がある。

 

◎ウクライナ軍の航空基地にまた攻撃 Mi-24攻撃ヘリ損傷、防空網に穴

 

 

 1日ごろ、ロシア軍の監視ドローン(無人機)が、ロシアとの国境から150kmかそこらのウクライナ中部ポルタバ州にあるミルホドロ空軍基地に、ウクライナ空軍のスホーイSu-27戦闘機6機が白昼、露天駐機されているのを発見した。
 ロシア軍のイスカンデル弾道ミサイルが猛スピードで突っ込み、6機のうち2機を撃破した。これはウクライナ空軍の貴重なSu-27全体の5%ほどに当たるのかもしれない。
 2日、同じようなことが起こった。ミルホドロ空軍基地のすぐ東に位置し、国境から同じく150km程度しか離れていないポルタバ州ポルタバの航空基地の上空に、ロシア軍の監視ドローンが飛来した。数時間の偵察後、イスカンデルが撃ち込まれ、ウクライナ陸軍の所属とみられるミルMi-24攻撃ヘリコプター1機を少なくとも損傷させた。
 何が起こっているのかは明白だ。防空システムが不足しているため、ウクライナ軍の航空基地はロシア側のドローンやミサイルによる攻撃に無防備になっているのだ。ウクライナ軍の航空基地に対するロシア軍の攻撃は昨年秋ごろ以降、どんどん激化している。ウクライナ側はこれまでに、Su-27を2機、ミコヤンMiG-29戦闘機を1機、スホーイSu-25攻撃機を2機撃破されている。さらに今回、Mi-24が撃破された可能性もある。
 損耗の著しいウクライナ空軍とウクライナ陸軍航空隊にとって、とても持ちこたえられないペースの損害だ。空軍はミグとスホーイを各数十機程度しか保有しておらず、同一の代替機の確実な供給元もない。陸軍航空隊はMi-24を50機ほど保有しているが、追加で取得するのに苦労している。
 たしかに、ウクライナ空軍は欧州の支援諸国からジェネラル・ダイナミクス/ロッキード・マーティンF-16戦闘機85機とダッソー・ミラージュ2000戦闘機十数機を受け取ることになっている。しかし、新たにやってくるこれらの戦闘機も現有のミグ、スホーイ、ミルと同じくらい、地上では攻撃にさらされやすいだろう。
 ウクライナの防空網は危機的な状況にある。ウクライナ軍は本来なら、最も重要な基地は地対空ミサイルシステムを何重にも配備して守るはずだ。だが空軍と陸軍は、都市、大規模な部隊集結地点、ミルホドロやポルタバの航空基地など前線に近い基地を同時に守るのに苦労している。
 ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大した時点で、ウクライナ軍の陸軍と空軍は地対空ミサイルシステムをおよそ400基保有していた。以後2年4カ月あまりにわたる戦いで、うちおよそ140基を失い、その代わりとして新たに100基を得た。
 装備点数だけ見れば、ウクライナ軍の防空戦力は10%失われただけに思えるかもしれない。だが実際には、ウクライナの防空戦力は戦争拡大前よりもはるかに薄く引き伸ばされた状態になっている。ロシア軍が集合住宅や病院、さらには教会までも狙った都市攻撃を繰り返しているために、ウクライナ軍は最も優れた防空システムを大都市の周辺に集中して配備せざるを得なくなったためだ。
 これらのシステムはほかのどこかから移してこなければいけなかった。ウクライナ軍は都市の防空を優先した分、航空基地の防空を薄くすることを余儀なくされているとみられる。ポルタバの航空基地を監視していたロシア軍のドローンは、イスカンデルが撃ち込まれる前、3時間にわたって現地の一般のウクライナ人も地上から目視できていた。しかし、誰もそれを撃墜するすべがなかったのは明らかだ。
 補足しておけば、ロシア側も同じ問題を抱えている。ロシア軍もまた、航空基地をウクライナ側のミサイルやドローンによる攻撃から守るのに苦労している。違いは、ロシア軍はウクライナ軍よりも基地や保有する航空機の数が多く、損失の吸収力も大きいことだ。
 ウクライナは近く新たな支援を受けられる見込みにはなっている。米国は、今月半ばにも23億ドル(約3700億円)規模の新たなウクライナ向け軍事援助パッケージを発表すると予告している。これには複数の防空システムや、長射程のパトリオット地対空ミサイルシステムと中射程のNASAMS地対空ミサイルシステム用のミサイルが含まれると報じられている。
 もっとも、ウクライナに新たに届くこれらの防空兵器も、航空基地ではなく都市の防御に充てられるかもしれない。アントニー・ブリンケン米国務長官は「投資が行われている地域を守るには防空体制をしっかり整えなくてはなりません」と語っている。
 ウクライナ軍は、短射程の砲銃を備えたトラックを配備した防空チームを編成して、防空網の穴を埋めようとしてきた。ミルホドロとポルタバの航空基地にもそうしたチームがいたのかもしれないが、上空のドローンに気づかなかったか、気づいても撃ち落とすことができなかったようだ。