韓国造船企業、米国現地で生産へ | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎<「韓国造船の競演場」になった米国>衰退した米国、軍艦建造も厳しい…K造船が力入れる

 

 

 韓国企業で史上初となる米国造船業進出が実現した。ハンファグループは20日、米ペンシルベニア州フィリー造船所の株式100%に対する取得契約をした。ハンファシステムとハンファオーシャンが参加し、買収金額は1億ドル(約160億円)だ。ハンファシステムのオ・ソンチョル代表は「(主力輸出市場だった)中東、東南アジア、欧州を超え米国まで輸出領土を拡張し新たな成長動力を確保していくだろう」と明らかにした。フィリー造船所はノルウェー企業アケルの米国子会社で、1997年に米海軍のフィラデルフィア国営造船所用地に設立された。その後米本土沿岸で運航する大型商船を建造し、米連邦海事局(MARAD)の多目的訓練艦建造や米海軍輸送艦の整備・修理・オーバーホール(MRO)事業などをしてきた。
◇米国、中ロとの対立高まり軍艦需要増加
 米国が韓国造船業(K造船)の新たな競演場として浮上した。ハンファグループが今回糸口を開き、HD韓国造船海洋とサムスン重工業など他の企業も米国造船業進出に弾みを付けるという見通しが出ている。関連業界と専門家らはK造船を媒介に韓国の防衛産業輸出領土が米国に拡張されたことに注目している。ハンファグループが買収したフィリー造船所は米海軍の発注を受けて軍艦を建造する資格がある。また、フィラデルフィア海軍基地と近く、軍艦に対するMRO事業拡大に有利だ。ハイ投資証券のピョン・ヨンジン研究員は「米海軍の戦闘艦建造と核心戦闘システムのMRO事業受注まで期待できる」と話す。年間国防予算だけで1000兆ウォンを超える米国だが、韓国がこうした米国に軍艦などを輸出する環境が作られたのだ。
 これは米国が中国・ロシアとの地政学的対立の高まりで軍艦とそのMROに対する需要が増加したのに対し、自国の造船業は回復するのが難しいほど衰退したことと関連が深い。過去に米国は第1・2次世界大戦を契機に空母と原子力潜水艦など先端軍艦を建造し、世界的造船大国としての位置付けを確立した。軍艦で蓄積した造船技術を商船でも発展させ、造船業は全盛期を迎えた。1920年に自国の造船業保護と育成に向け制定した「ジョーンズ法」もやはり短期的に役立った。米国内で運航・停泊するすべての船舶は米国で建造されなければならないと規定した法律だ。これに伴い、米国の造船所は世界的競争なく寡占の船舶建造をする一方、生産能力拡大の代わりに設備投資を縮小し、建造効率を最大化できた。
 だが米国は1960年代を基点に造船技術を速やかに発展させた日本に押され、80年代まで世界での船舶建造の割合が徐々に低くなった。ここに80年代以降に価格競争力を掲げた韓国と中国まで加勢すると造船市場で米国の立地は毎年急速に狭まった。それまでレーガン政権が自由競争を重視して造船業に対する補助金を縮小したこと、続く経済好況にともなう賃金上昇で製造業基盤が衰退したことも作用した。ジョーンズ法の長期的副作用も油を注いだ。設備老朽化にも造船所の適切な投資がなかったため納期遅延と建造費用増加など造船競争力低下要因が増えた。2020年に米国の造船企業は米海軍の次世代護衛艦建造事業者入札でイタリア国営造船所に押されるほど遅れをとった状態だった。
 その結果、昨年基準で世界の船舶受注シェアは中国が59%、韓国が23%、日本が13%であるのに対して米国は0.04%にとどまるほど造船業が衰退した。結局中国と対立している米国の立場では、弱くなった自国の造船業能力にともなう軍艦建造とMRO事業萎縮を、主要同盟国であり中国に敵対する世界2位の造船業を備えた韓国で埋め合わせる必要性が大きくなったのだ。米戦略国際問題研究所(CSIS)は4月に「中国が運用する戦艦は234隻で米海軍の219隻(軍需・支援用除外)より多い。中国は造船業の生産能力が米国の約230倍と戦争の際に損傷した艦艇をより速く修理し、代替艦艇をより速く建造できるが、米国は船舶建造能力を拡大しにくい」と診断した。その上で「造船大国である韓日と協力して格差を縮めなければならない」と公開助言した。
◇米海軍長官、蔚山・巨済の造船所訪問も
 実際に2月には訪韓したカルロス・デル・トロ米海軍長官がHD現代重工業の蔚山(ウルサン)造船所とハンファオーシャンの巨済(コジェ)事業所を訪問して協力の可能性を模索した。トロ長官はハンファグループの今回のフィリー造船所買収に対しても、声明を通じて「画期的な事件」としながら歓迎の意向を明らかにした。専門家らは、K造船が今年の1500億ドルから2029年には2300億ドルと53.3%の成長が予想される世界的艦艇市場、そして同じ期間に10.1%成長すると見込まれる世界的艦艇MRO市場(ジェーン、モードーインテリジェンス見通し)で高い割合を占める米国進出を積極的に模索していかなければならないと助言する。SK証券のハン・スンハン研究員は「米国造船業は長期間にわたり衰退しており米国政府の全幅の支援にも回復は容易ではないだろう。米国の中国造船業制裁まで加わり韓国企業にとっては利益を得られる機会」と分析した。

 

◎韓国造船企業、米国現地で生産へ…フィラデルフィア「フィリー造船所」を1億ドルで買収

 

 

 韓国造船企業が米国現地で生産を始める。商業用船舶の建造だけでなく艦艇事業拡大のための現場基地として活用するのが目標だ。ハンファグループは20日(現地時間)、米フィラデルフィアにある「フィリー(Philly)造船所」の全株を引き受ける契約を締結したと明らかにした。買収代金1億ドル(約160億円)はハンファシステムとハンファオーシャンが負担する。
 ハンファによると、韓国造船企業の米国現地での生産は初めてとなる。フィラデルフィア南側のデラウェア川沿いにあるフィリー造船所はノルウェー石油・ガス・再生可能エネルギー専門企業「アケル(Aker)」の子会社だったが、今回の契約でハンファに所属することになった。フィリー造船所の専門領域は沿岸を主に運航する商船の建造だ。石油化学製品運搬船(PC船)、コンテナ船など米国内の大型商船の約50%がフィリー造船所で建造されている。
 ハンファが買収検討過程で特に注目したのは幅広い分野の船舶建造実績だ。フィリー造船所は米運輸省海事局(MARAD)の大型多目的訓練船、海洋風力設置船、官公庁船などを建造した経験がある。海軍輸送艦の修理・改造事業も核心事業領域の一つだ。昨年7月にはバイデン米大統領が海上風力設置船の鉄鋼切断式(建造過程で行う行事)に出席するためフィリー造船所を訪問した。
 ハンファシステムはシステム関連ソリューションのECS(統合制御装置)、IAS(船舶自動制御システム)などをフィリー造船所の商船ラインナップと結びつけてシナジー効果が出す計画だ。これを通じて無人水上艇や艦艇など特殊船で市場の拡大を狙う。米国艦艇市場は海軍の艦隊需要に対して供給が不足している状況だ。ハンファオーシャンも米国内最大規模の設備を備えたフィリー造船所を基盤に中型級タンカーとコンテナ船の受注を拡大する方針だ。造船業界ではグローバル潜水艦・艦艇市場規模が今後10年間で2430億ドルに達するという予想がある。
 ハンファは昨年末にもオーストラリア造船企業オースタル(Austal)の買収を推進した。ハンファオーシャンが10億2000万豪ドル(約1080億円)で買収を提案した後、今年初めに現場調査の直前段階まで進んだ。双方はオーストラリア当局による外国人投資規制審査などを通過すれば具体的な交渉に着手するという。
 ハンファシステムのオ・ソンチョル代表は「フィリー造船所買収を通じてグローバル船舶と防衛産業市場をリードする事業的シナジーを創出していく」とし「中東・東南アジア・欧州を越えて米国市場にまで輸出領土を拡張し、新しい成長動力を確保したい」と述べた。