ロシア軍事機構の再建、米敵対勢力が支援 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ロシア軍事機構の再建、米敵対勢力が支援

 

 

【ワシントン】米国防・情報当局者によれば、ロシアとイラン・北朝鮮・中国との軍事協力は機密技術の共有に拡大しており、ウクライナでの戦争が終結した後も米国とその同盟国を脅かす恐れがある。
 米国の敵対国が関与するこうした安全保障協力の拡大のスピードと深さは、米国の情報分析担当者たちを時に驚かせてきた。ロシアと相手国は歴史的な摩擦を脇に置き、「米国が支配する国際システム」に集団で対抗しているという。
 軍事関係の緊密化の兆候として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は19日に平壌で、両国のいずれかが攻撃された場合に相互支援を提供することで合意したと発表。独裁国家であるロシアと北朝鮮の関係を同盟と表現した。
 ロシアによる北朝鮮・イラン・中国への働き掛けの拡大は、2022年2月にプーチン氏がウクライナ侵攻を開始した後に始まった。初期の戦闘での失敗や西側諸国による制裁を受けて、ロシアは新たな武器供給源を必死に探した。
これらの国々との取り決めは、共同生産協定や技術移転、作業員の供給へと変化してきた。米当局者によれば、こうした関係はロシアの長期的な戦闘能力を向上させており、イラン・北朝鮮・中国の戦闘能力も向上させ得るという。
 旧ソ連は数十年間にわたり、途上国へ大量の武器を輸出していた。ロシアがウクライナでの戦争を続けるための物資を世界中で探し回っている現在、この関係は一部逆転している。
 北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は18日、アントニー・ブリンケン米国務長官との共同記者会見で「ロシアがウクライナで行っている戦争は、中国と北朝鮮とイランに支えられている」と述べた。「彼らは米国が失敗するのを見たがっている。NATOが失敗するのを見たがっている。彼らがウクライナで成功したら、われわれは一層脆弱(ぜいじゃく)になり、世界は一層危険になるだろう」
 イランは、ロシアのタタルスタン共和国における、殺傷能力のある武装無人機の工場建設を支援した。米当局者は、この工場が現在稼働し、イランが設計した無人機「シャヘド136」を年に数千機生産できる状態にあるとみており、生産対象が他の種類の無人機にも拡大されると予想している。
〇ロシア軍事機構の再建、米敵対勢力が支援
 ある米国防当局者は「ロシアは戦争後にこうしたものを持つことになる」と述べ、取引関係として始まったものが今や、「知識移転」になっていると語った。
 イランにとっては、ロシアがウクライナで数十機単位で飛ばしているイラン製無人機が戦場でどのように機能するかを見極められる利点があると、米当局者は指摘する。危険なのは、「こうした教訓のすべてが中東で生かされる点だ」という。
 バイデン政権のある高官によると、中国とロシアは、ロシア国内で殺傷能力のない無人機を共同生産するための協力も行っている。
 別の国防当局者は「世界的に市販されているUAV(無人航空機)の技術と生産を共有しているだけに見えるため、(軍事技術の移転を疑われても)否定できると彼らは考えている」と話した。
 プーチン、金の両氏は19日に軍事協力の強化を発表した際、新たな取り決めが戦争で互いのために戦う約束に相当するのか、単に他の形の支援を拡張する約束になるのか、明確にしなかった。米国と韓国の当局者は、ウクライナでの戦争のために北朝鮮がロシアに提供しているとみられる砲弾や短距離弾道ミサイルの見返りに、宇宙関連技術やその他の先進的なシステムをロシアが北朝鮮に提供する可能性があると指摘する。一部の米当局者によると、兵器の製造ラインの人員補強のため、北朝鮮はロシアに労働者を派遣しているという。
〇ロシア軍事機構の再建、米敵対勢力が支援
 米当局者らによると、ロシア側はその見返りとして北朝鮮にかなりの量の燃料油を供給してきた。懸念されるのは、ロシアの対北朝鮮支援が軍事分野に拡大することだという。
 米国の現・元当局者らは、ロシアと北朝鮮・イラン・中国との安全保障面での協力強化は、今のところ西側諸国間のNATOのような公式の軍事同盟の水準には至っていないと分析する。ロシアと他の3カ国それぞれとの2国間協力の組み合わせになっているという。
「こうした関係はロシア、北朝鮮、そして中国にとってさえも、すべて今のところ熱烈な恋愛ではなく、互いの利益と目標の類似性や整合性に基づく政略結婚のようなものだ」。中央情報局(CIA)とホワイトハウスでの勤務経験を持つスー・ミ・テリー氏は、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が支援するポッドキャストでこう語った。
 とはいえ、より広範囲の戦略・外交協力につながりそうな新たな枢軸関係の初期の輪郭が見えつつある。
 西側当局者や通関データによれば、中国は、米国の制裁対象となっているロシア・イラン・ベネズエラなどとの通商関係強化の取り組みの中心となってきた。米政府の金融面での制裁の影響を回避することが狙いだという。
 アブリル・ヘインズ米国家情報長官は先月の米議会公聴会で、中国とロシアが台湾を標的にしたとみられる初めての合同軍事演習を行ったことを明らかにした。
 ロシアは3月、北朝鮮に対する国際的制裁状況を監視する国連の活動延長を阻止するため、国連安全保障理事会で拒否権を行使した。米当局者によれば、この動きは北朝鮮とロシアとの間の武器の流れを精査されないようにすることが目的だったという。
〇ロシア軍事機構の再建、米敵対勢力が支援
 米国防当局者によると、ロシアにとって最も役立っているのはイランからの供給ルートであり、イランはロシアの主要な兵器供給国になっている。イランはタタルスタンにおける無人機工場建設を支援するとともに、何百機もの無人機をその他の武器とともにロシアに送っている。イランからロシアへの短距離弾道ミサイル売却に向けた両国の交渉は進んだ段階にあり、武器調達関係の大幅な強化が行われると当局者らはみている。
 イランはロシアへの武器提供を否定している。
 米シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」でイランの軍事問題を研究しているシニアフェロー、ベーナム・ベン・タレブー氏は「イランは、かつて自国が生徒だったこうした分野の多くで教師になりつつある」と語った。イランは「歴史上初めて、ロシアにとってジュニアパートナー以上の存在になっている」。
 中国はロシアに対して、武器供与以外は何でも行ってきた。米国の現・元当局者によると、米政府はこうした状況が米国による経済制裁の引き金になりかねないと警告している。
 ウクライナに対する攻撃で初期に失敗し、武器調達を阻む制裁を西側から科されたロシアが、米情報機関の予想より早く軍需物資の生産を回復したことについて、米当局者は、中国からの援助が寄与したと指摘する。
 当局者らによると、中国は、ロシアの軍需産業向けの工作機械や超小型電子部品、戦車および装甲車向けの光学機器、巡航ミサイル用のターボエンジンなど、軍民両用の機器を大量に輸出してきた。中国はまた、ロシアがウクライナでの戦争に活用するための人工衛星など宇宙インフラの能力を向上させる手助けもしているという。
 ある国防当局者は「中国は非常に慎重だが、越えてはならない一線に限りなく近い」とした上で、「中国は自国が犠牲を払わされることなく、ロシアを支援するために可能なことはすべて行っている」と述べた。

How Putin Rebuilt Russia’s War Machine With Help From U.S. Adversaries - WSJ