北朝鮮の不審な構造物、休戦ライン数カ所に | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎北朝鮮の不審な構造物、衛星写真で分析…休戦ライン数カ所に

 

 

 英BBCが新しい衛星写真と共に「北朝鮮が休戦ラインの数カ所に障壁とみられるものを建設している」と主張した。韓国軍当局は「障壁よりも対戦車防壁などの障害物である可能性が高い」という立場を明らかにした。
 BBCは21日(現地時間)、「新しい衛星写真を分析した結果、休戦ラインに障壁とみられるものが建設されていて、非武装地帯(DMZ)内の土地が開墾されたとみられる」と報じた。
 続いて「休戦ライン付近の変化を見るために休戦ライン7キロ区間の高解像度衛星写真を依頼して分析した結果、休戦ライン東端に近い約1キロにわたり少なくとも3つの区間に障壁が建てられたように見える。他の地域にも多くの障壁が建設されている可能性がある」と主張した。
 この地域を撮影した以前の高解像度の写真がないため正確な建設開始日は分からないが、2023年11月に撮影されたイメージは障壁と推定されるものは見えなかったと、BBCは伝えた。
 専門家らは障壁の建設やDMZ内の土地開墾が事実なら、韓国との長い停戦協定を違反した可能性があると指摘した。
 米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ・アジア・韓国上級副所長は「DMZに構造物を建設するのは異例であり、事前協議なく停戦協定を違反するものとみられる」と述べた。障壁の建設でなくとも停戦協定違反の余地があるという解釈だ。
 NKニュースのシュレイアス・レディ特派員は「北朝鮮が国境に沿って軍事力と要塞を強化しようとするものと推測できる」と話した。
 高麗大のバン・キルジュ国際関係大学院教授は「軍事的な側面と非軍事的な側面を共に考慮したものかもしれない」とし「北が韓国の軍事活動を監視し、韓国に国境を越えようとする脱北者を発見するために観測所を設置している可能性もある」という見方を示した。
 ギングス・カレッジ・ロンドンのラモン・パチェコ・パルド欧州国際問題研究所所長は「北朝鮮の障壁建設は北朝鮮が統一を追求しないという信号を送っているとみることができる」と分析した。
◆韓国軍「障壁よりは対戦車防壁など障害物」
 韓国軍当局は土地開墾に関連してすでに内容を把握したという立場を明らかにした。
 合同参謀本部の関係者は最近のブリーフィングで「軍が『戦術道路の補強、地雷埋設、開墾』に関連して北が進めている活動を把握した」と説明した。
 ただ、障壁建設に関しては「(障壁というよりも)コンクリート打設や覆土を見ると、対戦車防壁など障害物である可能性が高いとみている」と伝えた。

 

◎北朝鮮が軍事境界線近くに「壁」建設、作業はほぼ人力…韓国軍「死傷者出ても日の出から日没まで」

 

 

 【ソウル=中川孝之】北朝鮮が4月頃から、南北軍事境界線の北側の一部地域で高さ約4~5メートルのコンクリート製の壁の建設を始めた。韓国軍関係者が18日に明らかにした。対戦車用の防御壁に似ており、北朝鮮の兵士が工事に大量動員されている。
 壁が確認されたのは4か所で、工事の初期段階とみられる。現時点では最長で数百メートルだが、設置区間が延びる可能性も指摘されている。兵士らは重機をほとんど使わず、ほぼ人力で作業している。韓国軍内では、東西冷戦を象徴したドイツの「ベルリンの壁」を連想させるとの声も出ている。
 北朝鮮の 金正恩キムジョンウン 朝鮮労働党総書記は昨年末の党の重要会議で、南北は同じ民族ではなく、「敵対的な二つの国家関係だ」と宣言した。その後、韓国への敵対行為をエスカレートさせている。
 壁の建設は、物理的な国境線を引いて、韓国との敵対関係を際立たせる狙いがあるとの分析も出ている。この点について、韓国軍関係者は「可能性は排除できないが、現段階では断定は難しい」との見方を示した。南北軍事境界線の長さは248キロ・メートルある。
 壁の建設と並行し、北朝鮮は軍事境界線に沿って設けられた非武装地帯(DMZ)付近で、地雷を埋設したり、軍事用の道路を整備したりする作業を活発に行っている。住民や兵士が韓国側に逃走するのを防ぐための措置とみられる。
 作業中に地雷が爆発する事故が数回起き、韓国軍は負傷者が担架で搬送される様子も確認した。韓国軍関係者は、「北朝鮮兵は死傷者が出ても構わず、日の出から日没まで作業を続けている」と明かした。
 韓国軍合同参謀本部は18日、DMZで作業中だった北朝鮮兵20~30人が同日午前8時半頃、南北軍事境界線を越え、韓国側に一時侵入したと発表した。韓国軍が警告放送と警告射撃を行ったところ、北側に引き返したという。同じような北朝鮮兵の一時侵入は今月9日にもあった。いずれもDMZで作業中の北朝鮮兵らが誤って侵入したとみられている。

 

◎対戦車防壁を設置する北朝鮮、通常戦力の空白を意識か

 

 

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が年初から南側を狙って「領土完整と修復」を叫びながらも休戦ライン一帯に対戦車防壁を建てて地雷を埋設するのは、対南防御ラインを構築するためのものだという分析があった。口では攻撃と威嚇しながら行動では防御的戦術を駆使する矛盾した形態に対し、複数の軍関係者は24日、「最近の休戦ライン一帯での北の軍の作業が一種の防御中心の対南戦術変化を意味するかどうかを含め、いくつかの可能性を分析中」と明らかにした。
 これは核兵器の高度化とは別に、ロシアへの大規模な砲弾輸出などで通常戦力で韓国との格差が開いているという判断のためと考えられる。韓国国防研究院(KIDA)のイ・サンギュ研究委員は「朝ロ軍事協力で砲弾輸出などによる通常戦力の空白が発生し、防御ライン構築レベルの対戦車防壁の設置が必要だったとみられる」とし「これは北が従来の攻勢的な軍事戦略から防御を強調する守勢的な戦略への変化の可能性を意味するものかもしれない。軍事作戦計画変更の可能性もある」と分析した。
 実際、ウクライナ・韓国国防部など国際社会は北朝鮮が122ミリ、152ミリ砲弾のほか、地対空ミサイルのような精密通常兵器までロシアに輸出していると推定している。政府関係者は「北が僻地に備蓄された砲弾まで集めてロシア輸出物量に合わせているとみられる」と話した。正確な数値を確認するのは難しいが、情報当局は北朝鮮が生活必需品工場などまで総動員する場合、砲弾を最大約200万発近く(年間)生産できると推定している。数百万発をロシアに送れば北朝鮮の戦争持続実行能力に「穴」が生じるのは避けられないということだ。
 北朝鮮が最近、非武装地帯(DMZ)軍事境界線(MDL)付近に高さ4、5メートルの対戦車防壁を構築するのもこうした背景のためとみられる。MDL付近では土壌平坦化作業と同時に地雷の埋設も進めている。韓国軍の合同参謀本部の関係者は「亡命、越南などを遮断するための内部統制用であり、有事の際、我々の対応を念頭に置いた措置とみられる」と発言した。
 統一研究院のホン・ミン選任研究委員は「北が最近『戦争準備』を強調しながら核・ミサイル戦力を強調するのも、通常戦力の劣勢を隠そうとするものであり得る」と強調した。