ウクライナの無人艇群、クリミアで小型艇4隻を撃沈・損傷 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナの無人艇群、クリミアで小型艇4隻を撃沈・損傷 補給つぶし続く

 

 

 ウクライナはロシアが拡大して2年4カ月目に入る戦争で、ロケット弾や巡航ミサイル、自爆型の水上ドローン(無人艇)によってロシア海軍黒海艦隊の大型艦を十数隻撃沈するか大破させた。これは全体の3分の1にあたる数だ。
 当然のことながらロシア海軍の指揮官たちは残りの大型艦を失うことを懸念し、それらをロシア占領下クリミア半島の港から引き揚げさせ、表向きにはより安全とされるロシア南部の港に移した。
 一方で、掃海艇や上陸用舟艇、哨戒艇といった小型艇はクリミアに残していた。数十艇あるとも考えられるこれらの小型艇は、クリミア周辺水域での日常的な任務で中心を担っている装備だ。そのためウクライナ側はこれらの艇も攻撃目標とし、占領下の水域からの排除をめざしてきた。
 最新の襲撃は、黒海艦隊の小型艇隊にとって最も大きな被害になった可能性がある。ウクライナ国防省情報総局(HUR)の特殊部隊「グループ13」は5月30日未明、数百kgの爆薬を積んだ全長5.5mのマグラV5無人艇の群れをクリミア西部のブジカ湾に向かわせた。
 ロシア側の航空機が迎撃を図ったが、少なくとも数艇がそれを切り抜け、湾内に到達した。ロシア側の射撃手はあわてて射撃を始め、曳光(えいこう)弾をやみくもに撃ちまくったが、襲撃を止めることはできなかった。
 マグラはロシア連邦保安庁(FSB)所属のKS-701哨戒艇4隻を立て続けに攻撃した。HURは、2隻を撃沈し、ほか2隻を損傷させたと報告している。
 FSBが黒海で運用するKS-701は約20艇なので、一度の攻撃で5分の1が一時的もしくは恒久的に失われたことになる。特筆すべきは、ウクライナは同じ日にクリミアで、国産のネプトゥーン(ネプチューン)巡航ミサイルか米国製のATACMS弾道ミサイル、あるいは両者を組み合わせた攻撃で、ロシアのフェリー2隻も損傷させていることだ。これらのフェリーは、ロシア本土からケルチ海峡経由でクリミア東部に物資を補給するのが主な任務だった。

 クリミアに残るロシアの海上戦力は、少しずつ肉を削がれるような痛々しいやり方で死に至らしめられつつある。全長8.5mのKS-701は軽武装で派手さこそないものの、有用な装備だ。HURは、ロシア側はKS-701を「クリミア近辺の水域の哨戒や兵站のために用いていた」と説明している。
 ロシアは直近では昨年9月にもKS-701を失っていた。自軍の部隊向けの積み荷を降ろしていたときに、ウクライナのドローン(無人機)から誘導ミサイルで攻撃され、被弾したもようだ。大型艦ならミサイルや無人艇が命中しても場合によっては生き延びられるかもしれないが、排水量4t程度のKS-701にそのチャンスはない。
 KS-701は言ってみれば、ロシア南部からクリミアに運び込まれる物資用の水上輸送車のようなものだ。それ自体がロシア本土からクリミアへ物資を運ぶのではなく、クリミアに運ばれた物資を最終目的地まで届ける「ラストワンマイル」の輸送がその役割だ。
 ウクライナは、巡航ミサイルやATACMSでクリミアへの主要補給手段である大型揚陸艦やフェリー、橋、鉄道をたたき、無人艇で最終運搬用の小型艇をつぶしている。こうして、クリミアの兵站を根元と先端の両方から断ち切ろうとしている。