ロシア軍の「亀戦車」、FPVドローンで撃破 | すずくるのお国のまもり

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◎ロシア軍の「亀戦車」、ついにFPVドローンにもやられてしまう ウクライナ側の進化速く

 

 

 ロシア軍の「亀戦車」は進化を続けている。しかしその進化のスピードは、ウクライナ軍の破壊力を増すFPV(一人称視点)ドローンなど、重量級の弾薬の餌食になるのを逃れられるほど速くはない。
 重量37t、乗員4人のT-62戦車をベースにしたある亀戦車は、4月上旬にウクライナ東部の戦場に初めて出現したこの新種の改造車両のなかでも、最も進化したものだったかもしれない。
 ロシア軍の第20親衛自動車化狙撃師団に所属しているとされるこの亀戦車は、ドネツク市のすぐ西の廃墟化した都市マリンカの周辺に出没し、地雷除去任務で活躍してきた。甲羅のような追加装甲が功を奏し、ロシアのある軍事ブロガーによると「10発の直撃」を生き延びたこともあった。
 直撃したのが何だったのかは不明だが、いずれにせよこの亀戦車は先週末に運が尽き、マリンカ近郊でウクライナ軍によって爆破された。
 ほかの亀戦車と同様に、この亀戦車も屋根材を転用したとみられるドローン対策用の追加装甲を何重にもまとい、車体前方に地雷を安全に起爆させるローラーを備えていた。
 他方、この亀戦車はほかの同類と異なり、砲、というより砲塔全体が取り外されていたようだ。そうするのは理にかなっている。というのも、亀戦車は基本的に戦闘車両というより地雷除去車両であり、地雷だらけの中間地帯を突き抜ける突撃部隊を先導する車両して使われているからだ。
 そもそも砲塔に金属製の甲羅をかぶせると、その支柱のせいで砲塔はろくに回転できず、さらに乗員の視界も遮られ、ほぼ前方しか見えなくなる。地雷除去車両としてはともかく、これではもはやほとんど戦車の体をなしていない。
 亀戦車は最初に確認されてから6週間のうちに、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月たつ戦争の1000kmにおよぶ戦線のあちこちに姿を見せるようになった。最初の数週間は、その新奇さと、半年にわたる米国の支援停止などによるウクライナ軍の深刻な砲弾・ミサイル不足のおかげで、乗員は助けられていた。

 また、ウクライナ側が砲弾やミサイルの代わりにFPVドローンに頼らざるを得なくなるなかで、亀戦車は当初、実際に有効でもあった。ロシア軍の部隊を先導して地雷原を越えさせ、ウクライナ側の陣地を攻撃させるのに成功したことが何度もあった。
 とりわけ、バフムートの西のチャシウヤール方面の作戦で亀戦車は精力的に働いた。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は「ロシア軍は、追加防護のために金属板を溶接した戦車や装甲車両を用いることが多くなっており、(中略)明け方や夕暮れに頻繁に攻撃している」と報告している。
 米シンクタンク、外交政策研究所のシニアフェロー、ロブ・リーは、亀戦車について「嘲笑する人がいるのは知っているけれど、わたしはおかしな適応だとは思わない」と述べていた。「ロシア側は、ウクライナ側にFPV(ドローン)はたくさんあるがATGM(対戦車誘導ミサイル)や対戦車地雷、砲弾は不足しているという、戦場の特定の状況に適応しているのだ」
 だが、その状況は変わっている。米議会のロシアに融和的な共和党議員らによるウクライナ支援の妨害は4月下旬に終わり、以後、米国防総省は数回にわたり大量の砲弾や対戦車ミサイルをウクライナに送った。またウクライナは、大きめのFPVドローン向けにより重い弾薬を開発した。それには、スウェーデン製の対戦車ミサイルを参考に、下向きに爆発するようにした弾薬もあるようだ。
 5月上旬には、ウクライナ軍の旅団は以前より破壊力を格段に高めていた。そして、亀戦車ははるかに破壊されやすくなった。複数の亀戦車が大砲やミサイル、数珠つなぎにされた地雷、大きめのFPVドローンを食らい、破壊されている。ある有名な亀戦車は立て続けに地雷を食らい、乗員は脱出したようだが焼損している。
 T-62から砲を取っ払った亀戦車はFPVドローンで仕留められた。このドローンが新たな重量級の弾薬を搭載していたのか、それともたんに運がよかっただけなのかはわからない。ともあれ、その死は亀戦車全体の衰退を早めることになるだろう。