ロシア軍の「亀戦車」がまた進化 | すずくるのお国のまもり

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◎ロシア軍の「亀戦車」がまた進化、甲羅が二重化してますます巨体に

 

 

 4月上旬、ウクライナ東部ドネツク市のすぐ西にある都市クラスノホリウカの郊外を監視していたウクライナ軍のドローン(無人機)操縦士は、車体と砲塔を粗雑な金属製の屋根で覆ったロシア軍のT-72戦車を見つけた。
 ほどなくして、同じような格好をした戦車が、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月目に入る戦争の約1000kmにおよぶ戦線の各地に出没し出した。多くはドローン対策のジャマー(電波妨害装置)も備えるようになっている。この戦車はロシア側では「皇帝のグリル」、ウクライナ側では「亀戦車」などと呼ばれている。
 ロシア軍の攻勢で運用され始めて2カ月目に入るなか、亀戦車はまた新たな進化を遂げたようだ。最新の映像では、甲羅のような硬い金属製外殻の上にもう一層、金属製の格子をまとっていた。
 亀戦車はだんだんと図体が大きくなり、ますます異様な格好になってきている。しかし、与えられた目的はむしろしっかり果たせるようになっているのかもしれない。亀戦車は実は車体前方に地雷を起爆させる金属製ローラーも装備していて、英国の兵器史家マシュー・モスは「装甲突撃縦隊の前に走らせる地雷除去車両として使われている」と解説している。
 前線近くの作業所で付け足されているこれらのDIY装甲は、ウクライナ軍が毎月10万機投入している自爆型FPV(一人称視点)ドローンから車両本体を守るのにかなり役立っているらしい。通信アプリ「テレグラム」のウクライナ側のあるチャンネルは「(ロシア軍の)戦車1両に対して多くのFPVドローンを費やすことになった」と明かし、「みな(亀戦車の)納屋のような構造をあざ笑うけれど、実際はムカつくほど効果がある」と憤っている。
 亀戦車はロシア軍による戦場への「適応」の一形態である。問題は、それがたったひとつの脅威、つまりFPVドローンに対する適応だということだ。たしかに、ウクライナ側がここ数カ月のように砲弾や対戦車ミサイルが枯渇し、大量の国産FPVドローンでの代替を余儀なくされている間は、亀戦車が自分の役目を果たしつつ攻撃を生き延びる可能性は十分あるだろう。

 しかし米議会の一部の共和党議員による半年にわたる妨害がついに終わり、およそ610億ドル(約9兆4000億円)の新たな予算が使えるようになったことで、ウクライナ軍は砲弾やミサイルを大量に手にしようとしている。米国防総省はすでに、10億ドル(約1540億円)分の武器・弾薬をウクライナへ発送している。
 亀戦車の二重のDIY装甲は、500g程度の爆弾を装着した機体重量1kg弱のFPVドローンからは車両本体を守れるかもしれない。だが、モスが指摘するように「ほかのものからはほとんど防護できない」だろう。
 とくに、何重もの防護層を貫通するように設計された約8.5kgのタンデム弾頭を搭載する約16kgのジャベリン対戦車ミサイルに対しては、この追加装甲はほとんど役に立ちそうにない 
 亀戦車の乗員が、ウクライナ軍のジャベリン部隊の攻撃をかわせるなどとも思わないほうがいい。重い甲羅を背負う亀戦車はその名のとおり鈍足なだけでなく、甲羅に邪魔されて視界がひどく遮られているらしいことも最近の動画であらわになっている。
 少なくとも1両の亀戦車は、乗員が周りをよく見えなかったらしく、攻撃中に間違えた方向に曲がってしまい、ウクライナ側の陣地からそれていく様子が目撃されている。

 

 

https://x.com/StettingerN/status/1787161672446001359