ウクライナ軍第47旅団、ロシア軍の進撃抑える | すずくるのお国のまもり

すずくるのお国のまもり

お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎疲弊したウクライナ軍第47旅団が死闘、ロシア軍の進撃抑える 米は補充急送

 

 

 1週間あまり前、ウクライナ東部アウジーウカの北西数kmに位置するオチェレティネ村付近でウクライナ側の防御が崩れたとき、ウクライナ軍は危機に見舞われた際の慣例になっている対応をとった。
 ウクライナの調査分析グループ、コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)の言葉を借りれば、ウクライナ軍の「緊急対応旅団」である第47独立機械化旅団を投入したのだ。志願兵だけで構成される第47旅団は北大西洋条約機構(NATO)の教官の訓練を受け、米国製のM1エイブラムス戦車やM2ブラッドレー歩兵戦闘車、M109自走榴弾砲を配備されている部隊だ。
 第47旅団は先週、ロシア軍の第30独立自動車化狙撃旅団がオチェレティネを制圧し、ウクライナの支配地域にナイフにように突き刺さる長さ8kmほどの突出部を獲得するのは阻めなかった。それでも、求められたことはしっかりやった。緊急事態に対処し、この突出部が南へ大きく広がるのを食い止めたのだ。
 とはいえ、2000人規模の第47旅団もこれまでに非常に大きな犠牲を払っており、休息や補充、再編を切実に必要としている。
 実のところ、第47旅団は4月20日前後、休息のため戦線から離脱して後方に移動していた矢先に、元の陣地にロシア軍の第30旅団から攻撃を仕掛けられたのだった。オチェレチネを含む作戦区域の旅団を統括するドネツク戦術集団は、第47旅団に引き返して戦闘に復帰するよう命じた。
 第47旅団のミコラ・メリニク中隊長は「仕事に戻りました」と報告している。旅団はいつものように、機動力の高いM2を走らせ、ロシア側の陣地に25mm機関砲を撃たせているようだ。
 だが、メリニクは旅団が疲れ切っていることも強調し、部隊は「回復に専念するつもりでした」と吐露している。
 第47旅団は昨年6月、南部反攻作戦を主導したが、ロシア側の稠密な地雷原にぶつかり、甚大な損害を被った。メリニクは片足を失った。

 4カ月後、第47旅団は150kmかそこら東へ移動し、弾薬が枯渇してロシア軍に攻囲されつつあったアウジーウカの守備隊を増援した。今年2月、おびただしい血が流れた5カ月にわたる激戦の末、アウジーウカが陥落した際には、守備隊の撤退を掩護した。
 その後、第47旅団は西へ移動し、オチェレティネの南方面を増強した。休息は先延ばしに、もしかすると無期限に先延ばしになり、旅団は現在もオチェレティネ付近で防御線を保っている。「あと1カ月で、1年間交代がないことになります」とメリニクは書いている。
 第47旅団の戦闘大隊の兵士たちに関して特筆すべきは、たんに1年足らずの間に3つも大きな戦役で戦ってきただけでなく、旅団指導部の異常と言っていいレベルの混乱、不始末に耐えながらそうしてきたことだ。
 ウクライナ国防省は、戦闘部隊を不必要に危険にさらす無謀な指揮判断をしたとして、第47旅団の指揮官(旅団長)を昨年9月以降3人更迭している。ウクライナ軍の部隊の動静を追っている調査分析サイト「Militaryland.net」は、第47旅団について「続投させるに値する指揮官を見つけるのに苦労している」と指摘している。
 第47旅団の指揮官には最近、評価の高い第56独立機械化旅団を率いていたヤン・ヤツィシン大佐が任命された。第47旅団にとって過去7カ月間で4人目の指揮官だ。ともあれ、第47旅団は事実上、休みを求めていると言っていいだろう。
 第47旅団はこれまでに数百人の人員を損耗している。また、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス(Oryx)の集計によれば、200両あったM2歩兵戦闘車は76両が損害を被り、うち40両は撃破されるか鹵獲されている。31両あったM1戦車も、これまでに5両失ったもようだ。
 第47旅団は重量69tのM1がロシア軍のドローン(無人機)の攻撃でさらに失われるのを懸念しているらしく、最近、残っているM1をいったん前線から引き揚げている。その間に部隊長たちが戦術を練り直せるようにする狙いだろう。

 それには供与国の米国も協力する意向だ。米軍のクリストファー・グレイディ統合参謀本部副議長(海軍大将)はAP通信に、「ウクライナ側のパートナーや現地のその他のパートナーと協力して、(M1を)どのように使えるか考え出せるようにする」と語っている。
 米国はまた、重量33tのM2を運用し、第47旅団で最も過酷な戦闘の大半を担っている強襲大隊の再建も支援する。
 米議会のロシアに好都合な一部共和党議員による半年にわたる妨害のあと、米国が先週ようやく再開した対ウクライナ支援の第1弾には、M2が含まれていた。数両は公表されていないが、おそらく数十両だろう。ウクライナ軍でM2を使用しているのは第47旅団だけだ。
 第47旅団は新たな指揮官のもとで指揮・統率問題を解決できるかもしれない。また、新たな戦術を考案できれば、M1を被害を抑えながら運用できるだろう。そして新たなM2が届けば、強襲大隊の車両の損失を補充できると考えられる。
 だが、第47旅団がいま本当に必要としているものは、戦闘からしばし離れて休むことなのだ。
 ドネツク戦術集団はオチェレティネ方面の新たな防御線を強化するために、新たな部隊を投入するとも伝えられる。そうなれば第47旅団はようやく休息をとれるかもしれない。
 少なくとも短期間、あるいは次の緊急事態が起こるまでは。