◎ロシア軍部隊「ドローンから身をかわす訓練」始める 「散弾銃送って」と訴える兵士も

 

 

 ロシア軍のドローン(無人機)対策のジャマー(電波妨害装置)はあまり効果を発揮していない。ロシア軍の防空システムは前線から何百kmも離れた基地や工場、製油所をウクライナのドローン攻撃から守るため、薄く広がった状態になっている。
 だとすれば、ロシア軍の歩兵はウクライナ側がロシア側の陣地に毎月およそ10万機送り込んでいる自爆型のFPV(一人称視点)ドローンから、どうやって身を守ればよいだろうか。
 この目的では散弾銃は案外悪くない。機体重量900gかそこらのFPVドローンは、大きさも飛ぶ速さも鳥くらいだ。すばやい射撃手なら、飛んでくるFPVドローンをカモのように仕留められるかもしれない。
 じつのところ、ロシア軍はドローンからの防御用に散弾銃を少数ながら部隊に支給している。しかし、ウクライナに進駐している40万人規模の軍隊全体を守るにはとうてい足りない。そのため、少なくとも1人のロシア兵は母国の支援者に、散弾銃を買って前線に送ってほしいと頼み込んでいる。
「どうかわたしたちに、ポンプ連射式の散弾銃のご支援をお願いします」。戦闘で疲弊したこの兵士は、支援者に向けたビデオメッセージでそう訴えている。「どんなにボロいものでもかまいません」
 兵士の懇願は、ロシアが軍のルートを通じて大量の散弾銃を調達し、ドローン対策の武器として前線の部隊に配備するのに苦労していることを浮き彫りにしている。
 最後の手段として、少なくとも1つのロシア軍部隊は、飛来してくるFPVドローンをかわす訓練を兵士に施しているようだ。ウクライナのドローン専門家セルヒー・ベスクレストノウが入手し、ソーシャルメディアに投稿した動画には、兵士たちがドローンをよけて駆け回る訓練をしている様子が映っている。一部はドローンの視点からの映像になっている。
「(第二次世界大戦のロシア軍人の)ひ孫たちは『ウクライナのFPVドローン回避コース』を受講中だ」とベスクレストノウは皮肉っている。
 ロシア側にとって問題は、突っ込んできたドローンをかわそうとして失敗し、爆発で犠牲になったロシア兵の映像が山のようにあることだ。
 FPVドローンは普通、最低でも450g以上の爆弾を搭載している。米バージニア州にあるシンクタンク、CNAのドローン専門家であるサミュエル・ベンデットは、「FPVドローンが至近距離で爆発すれば、たとえ(狙った相手に)命中はしなくても、負傷させたり重傷を与えたりするでしょう」とコメントしている。
 散弾銃の提供を要望したロシア兵も、ウクライナのドローンについて「わたしたちをひたすら燃やしにかかっている」と訴えている。1機爆発しただけで「人はばらばらになってしまう」と。