ウクライナの最新ドローンに対抗するロシアの「ローテク戦略」 | すずくるのお国のまもり

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◎ウクライナの最新ドローンに対抗するロシアの「ローテク戦略」

 

 

 ロシアとウクライナの戦争はドローン(無人機)の大規模な使用が特徴であり、ドローン対策の技術も同様に重要な役割を果たしている。戦場に新しいドローン技術を導入しては、数カ月もするとそれが時代遅れになるということが双方で繰り返されてきた。
 このいたちごっこは、特にウクライナが国内の防衛産業を大幅に拡大し、より高度な自律性など、ますます先進的な能力を備えたドローンを配備するようになったことで拍車が掛かっている。対するロシアは従来のドローン対策からやや逸脱し、代わりにウクライナのドローンの威力を最小限に抑えるためにかなり単純でこれまでにないアプローチを取っている。
 従来のドローン対策は、動的なものか、そうでないものの2つに分類される。動的なソリューションは通常、地対空ミサイルや機関銃などを用いた撃墜だ。一方、静的なアプローチでは、ジャミング、スプーフィング、ハッキングなどの電子戦技術を用いてドローンの制御信号や搭載ナビシステムを妨害する。
 ウクライナがこれらの対策を併用しているのに対し、ロシアは主に静的なソリューションに依存している。実際、ロシア軍はドローンに危害を加えられる数々の電子戦装備を持っており、昨年5月には1万機以上のウクライナ軍のドローンを無力化した。
 戦争が進むにつれ、ウクライナは防衛産業基盤の拡大によりかなり優位に立っている。商業的な技術と専門知識を活用して軍事用の新型ドローンを迅速に開発・配備することができる。新型ドローンには新機能と向上が図られた自律性が搭載され、ロシアのドローン対策に対抗できるよう強化されていることが多い。
 ウクライナの防衛関連企業が技術の進歩のスピードに合わせて動いているのに対し、ロシアの防衛産業基盤は新しい技術の取り込みに柔軟でなく、動きが鈍い。こうした問題とウクライナのドローン開発スピードを考慮し、ロシアはウクライナのドローンに対抗するために、ローテクでこれまでにない対策を取ることにした。これらの策は電子戦システムほど高度ではないものの、効果的であることが証明されつつある。
 例えば、ロシアは石油精製所など重要な施設をウクライナのドローン攻撃から守るためにドローン侵入を阻むフェンスを導入した。大きな金属製のフェンスは建物全体を覆うことができ、金属の杭を地面に打ち込んで固定された係船索(船舶の係留に用いられる太い綱)で支えられている。ロシアでは、標的となり得るあらゆるものを守ることができる防空物資が不足しており、また既存のシステムの多くがウクライナのドローンに対して効果がないことが明らかになっているため、こうしたフェンスは貴重なものとなっている。
 さらに、ロシアの複数の企業が現在、ドローン対策のフェンスを提供し、フェンスはドローンの侵入を阻止する上で大きな効果を発揮している。実際、ドローンがフェンスを検知するのは難しく、衝突して墜落することが多い。検知できたとしても、目的の標的に到達することはできない。

 前線では、全体を大きな装甲で覆った、まるで亀のような見た目のロシア軍の戦車が登場している。砲弾不足に陥っているウクライナ軍は、少量の爆薬を搭載したドローンを使ってロシア軍の戦車の脆弱な部分を正確に狙い、効果的に無力化する作戦を取っている。
 木と金属を組み合わせた亀の甲羅と戦車の車体の間には隙間がある。この設計により、ドローンが甲羅を攻撃しても、爆発によって戦車本体が傷つくことはない。だが、このかさばる重い甲羅には欠点がある。砲身の角度が制限され、機動性は低く、戦車の機能が損なわれる。ともあれ、このドローン対策はかなり効果的なようで、生き延びられるよう殺傷能力と機動性を犠牲にするロシア軍の戦車が増えている。
 戦略的なレベルでは、最近ロシア軍がウクライナのエネルギーインフラに対して行っているミサイル攻撃も広範なドローン対策の一環だ。攻撃は脆弱性につけ込んでいる。この場合、ウクライナの防衛企業がドローンを開発・製造するのに電力が必要という点を突いている。
 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4月初め、インフラ攻撃の主な目的は「ウクライナの軍産複合体に影響を及ぼすこと」だと明言した。エネルギーインフラを標的にすることで、狙い通りウクライナ企業が新しいドローン技術を軍に提供できないようにしている。ウクライナのドローン開発を鈍らせれば、ロシアはドローン対策の新技術を開発して実戦投入するのに必要な時間を稼ぐことができ、戦場での重要な優位性を自軍にもたらすことができる。
 ロシア軍は歴史的にドローン対策の技術でリードしており、現代の戦闘における電子戦を編み出してきた。だが戦争が長引くにつれて、ロシアの従来のドローン対策はウクライナのドローンの進歩に遅れをとっている。その結果、ロシア軍はウクライナ軍のドローンの脅威を軽減するために、これまで取っていなかったローテクな戦術を採用している。フェンスの設置や戦車への甲羅の取り付け、ウクライナの送電網への攻撃などだ。これらの策は、少なくともウクライナのドローンが進化し、ロシアのドローン対策が古いものになるまでは当面有効と思われる。