◎中国の新型空母「福建」が試験航行終了 初回は8日間で動力や電力などのシステム検証

 

 

【北京=三塚聖平】中国国営新華社通信は8日、国産の新型空母「福建」が初の試験航行を同日午後に終えたと伝えた。今月1日に上海市の江南造船所の埠頭(ふとう)を離れており、初回の試験航行は8日間続いた。
 新華社によると、今回の試験航行では動力や電力などのシステムについて検証した。今後も何回かの試験航行を重ねた上で就役する見通し。香港英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は、福建の試験航行には少なくとも1年間を要するという見方を伝えている。
 福建が就役すれば中国の空母は3隻態勢となり、常時1隻が運用可能となる。中国メディアなどによると、福建は原子力ではなく通常動力推進。満載排水量は8万トン余りで、リニアモーターの原理で艦載機を射出する電磁式カタパルトを備える。電磁式カタパルトは、米原子力空母ジェラルド・フォードに次ぎ世界で2隻目となる。

 

◎艦名の由来は台湾の対岸…中国3隻目の空母「福建」が初の試験航海
 空母「福建」、今年中にも正式就役へ
「台湾にとって実質的な脅威になる」

 

 

 米国と中国が台湾海峡を巡って対立を続ける中、中国の3隻目の空母「福建」が初の試験航海を始めた。空母は建造、進水、停泊(係留)試験、海上試験の4段階の準備を経て実践配備されるが、最終段階に達したことで、今年中に正式に就役する可能性が高まった。新型空母の名前は、台湾の対岸に位置する福建省から取ったもので、中国の「台湾統一」の意志が込められているとの解釈が出ている。
 中国国営の新華社通信は1日、「福建」が同日午前8時に上海の江南造船所を出航し、試験航海を始めたと報じた。今回の航海では空母の推進力と電気システムの安全性などをテストする。これに先立ち、造船所のある揚子江河口では、この日から9日まで「軍事活動」を理由に海上交通の統制措置が取られたという。香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が報じた。
 「福建」は旧ソ連の空母のデザインをベースにした既存の「遼寧」、「山東」とは異なり、中国が独自に設計したことで注目を集めている。2012年に実戦配備された「遼寧」は、中国初の空母という象徴性はあるが、旧ソ連で開発が中止となった空母「ワリャーグ」を購入・改造したもので「ソ連のスクラップ船」と呼ばれている。「山東」は中国が独自に建造したとはいうものの、「遼寧」をまねて作ったため見た目がそっくりだ。
 このため「福建」は、「遼寧」「山東」に比べて性能面ではるかに上回る。満載排水量は8万トン以上で、10万トン超を誇る米国の空母よりは小さいが、6万トン前後の「遼寧」「山東」に比べると圧倒的に大きい。J-15や早期警戒機KJ-600など60機以上の艦載機が搭載されるとみられ、特に中国の第5世代ステルス艦載機FC-31が搭載される可能性が注目されている。
 また、「遼寧」「山東」は船首を船尾より高くした「スキージャンプ台」状のスロープを利用して艦載機を発進させるが、「福建」は電磁式カタパルト(射出機)を採用した。カタパルトを利用すれば、重武装した軍用機を短時間で多数発進させることができる。中国国営CCTVが公開した映像には、「福建」に設置された3基のカタパルトが鮮明に映っている。
 ただし、「福建」は原子力ではなく在来式動力を使用するため、電磁式射出機に必要な莫大な電力の確保が課題となる可能性がある。
 台湾国防部は、「福建」が実戦配備された場合、台湾に「実質的な脅威」を加える可能性があると懸念している。中国軍は台湾の総統選挙を控えた今年1月にも「福建」を公開し、台湾に警告メッセージを送った。中国は米軍の空母船団が台湾海峡から1000キロ以内に進入できないようにする海軍力を備えることを目標にしている。また、2030年までに最低でも4つの空母船団を構成し、米国に次ぐ世界第2位の大洋海軍を育成する計画だ。このため35年までに計6隻の空母を確保しようとしている。中国が空母に力を入れて海軍力を増強させることで、中国と米国との海上覇権争いも激化するとみられる。

◎中国軍の最新空母「福建」が初の試験航行 「4隻目」は建造の情報も

 

 

 中国軍の3隻目となる最新型の空母「福建」が1日、初の試験航行を始めた。中国国営中央テレビ(CCTV)などが伝えた。2022年6月の進水以来、空母が常に1隻は任務に当たる3隻態勢に向けた準備が着々と進んでいる。
 CCTVの報道によると、福建はこの日朝に上海郊外の長江河口付近にある埠頭(ふとう)を離れ、東シナ海の海域に向かった。この海域では、軍事活動を理由として、9日まで無関係の船舶の進入を禁止する通告が中国の海洋当局から出ており、試験航行は数日間にわたるもようだ。
 国営新華社通信は、試験航行では主に艦の動力や電力、その他のシステムの信頼性と安定性をテストするとしている。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、中国軍の空母は就役までに約10回の試験航行を重ねており、同紙は専門家の見方として、福建は試験航行に少なくとも1年間かかるとみられると伝えた。

 

◎港出たぞ! 中国初の電磁カタパルト空母「福建」ついに洋上へ 空母3隻態勢は目前か

 

 

 排水量8万トンの巨大空母がついに
 中国人民解放軍海軍は2024年5月1日(水)、国産の正規空母「福建」が、中国造船グループ江南造船所を離れ、初の公試に向けて出航したと発表しました。
「福建」は排水量8万トンで、全長は約320m、最大幅は約80mあります。中国にとっては3籍目の空母となりますが、これまでの「遼寧」や「山東」がスキージャンプでの艦載機運用だったのに対し、「福建」はカタパルト射出での運用がメインのため、飛行甲板は艦首から後端までフラットな全通式となっているのが特徴です。
 なお、一部報道などによると「福建」のカタパルトはリニアモーターカーなどと同じ構造を持つ電磁式とのこと。2022年6月の進水式以降、長らくカタパルト部分は黒い覆いで見えないようにされていましたが、今回の出港ではその覆いが外され、3本のカタパルトらしきラインを備えているのが確認できます。
 就役は2024年を予定しているとのことで、実戦配備されると中国は3隻の空母によるローテーション配備を行える体制が構築できるようになると見込まれています。【了】

 

 

 

◎中国新型空母「福建」、米アナリストらの見方は? 米空母と比較すると…

 

 

 中国の最新空母「福建」が1日、上海から東シナ海に向けて出航した。今回の目的である初の海上試験などを経て、2026年までの就役を見込む。米メディアは改良されたカタパルトに注目し、米最新空母「USSジェラルド・R・フォード」と肩を並べたとする一方、能力などの差についても指摘している。
◆電磁式カタパルトで遠方の制圧能力を強化
 「福建」は中国最新の空母であると同時に、最大の空母でもある。最大の特徴は、電磁式カタパルトの採用だ。スキージャンプ式を用いる既存1番艦「遼寧」および2番艦「山東」よりも、重量のある航空機を発艦させる能力がある。すなわち「福建」は、既存艦よりも重量のある弾薬を搭載した、より航続距離の長い戦闘機を発進させることが可能になる。
 東シナ海における中国の存在感はますます大きくなりそうだ。こうしたことから、アナリストたちは、中国人民解放軍海軍(PLAN)がいわゆる「ブルーウォーター・ネイビー」の能力を手にすることになるとみる。外洋海軍とも呼ばれ、自国沿岸から遠く離れた外洋の制圧能力を有する海軍を指す。
 米ナショナル・インタレスト誌(4月30日)は、「PLANは、2023年(注:2035年の誤記とみられる)までに6隻の空母を就役させるという目標を掲げており、アメリカに次いで世界第2位のブルーウォーター海軍となる」との見方を示している。
◆米空母との比較
 米CNN(5月1日)は、「電磁式カタパルトシステムにより福建は、現役空母として世界で唯一電磁式カタパルトを搭載している米海軍の最新空母『USSジェラルド・R・フォード』と肩を並べることになる」と指摘。米海軍はほかに10隻の旧式のニミッツ級艦を保有するが、いずれも蒸気式カタパルトを使用している。
 しかし、航続力や大きさなどの面でまだ米海軍の空母とは差がある。ニミッツ級艦を含む米空母はすべて原子力空母だが、通常動力空母の福建は燃料補給のために寄港するかタンカーによる海上補給を必要とする点で制限がある。福建の満載排水量が8万トン(山東は6.6万トン、遼寧は6万トン)であるのに対し、ジェラルド・R・フォードは10万トン(ニミッツ級10隻は9〜10万トン)だ。
 また、カタパルトの数は、福建は3基と、アメリカの空母より1基少ない。収容できる航空機も、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の推定によれば、福建は約60機、ジェラルド・R・フォードは約75機だ。
 米外交問題評議会のブラッドフォード研究員は、アメリカの空母は「依然として独自の地位を保っている」と述べている(CNN)。
 米ポピュラー・メカニクス誌(4月10日)は、中国の電磁式カタパルトはアメリカの空母で採用されている方式と異なると指摘する。中国式ではフライホイールに運動エネルギーを蓄え、物理的に直接接触しない渦電流クラッチと呼ばれる機構を介し、空母を牽引(けんいん)するフックを巻き上げる。アメリカ式はこれよりも先進的で部品点数も少ないが、それでも初の空母からわずか12年で電磁式を実現した中国は「相当な実績」を積んだと同誌は述べている。
◆中国の野心の高まりを象徴
 カタパルトは中国の野心の象徴と捉えられている。ポピュラー・メカニクス誌は、中国が2012年の「遼寧」と2019年「山東」を含め、わずか12年間で3隻の空母を建造したと振り返る。最新式カタパルトへの変更は、「中国が強大なアメリカ海軍に匹敵する、あるいはそれ以上の能力を発揮しようとする意欲を示している」と同誌はみる。
 ナショナル・インタレスト誌によると「福建」はまた、電磁気と水圧により着艦時の衝撃を抑える「先進着艦拘束装置(AAG)」を搭載する。航空機の収容能力は60~70機分になるとみられる。こうしたスペックから記事は、「世界第2位のブルーウォーター海軍になるという目標の達成に近づくもの」であり、「中国の海軍の力と戦略的野心の高まりを強調するものだ」と分析している。
 軍事分野における中国の存在感は、日増しに高まっている。