ロシア軍の「亀戦車」が早くも進化 | すずくるのお国のまもり

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◎ロシア軍の「亀戦車」が早くも進化、甲羅の上にこぶ出現 正体は…

 

 

 古いT-72戦車にドローン(無人機)対策の甲羅のような大きな装甲を後づけしたロシア軍の「亀戦車」は、1両限りのものではなかった。ロシアはこうした仕様の戦車を明らかに数多くこしらえていて、その「不細工ぶり」の改善も多少は図っているようだ。
 16日、ソーシャルメディアで共有されたウクライナ軍のドローン映像やそのスクリーンショットにも、大きな屋根に覆われたロシア軍戦車の姿が映っている。本体はT-62、T-72、T-80、T-90のいずれかの戦車の通常型だろう。ここ数週間でウクライナの前線に登場した3両目の亀戦車であるこの戦車は、ウクライナ東部ドネツク州クラスノホリウカ周辺のウクライナ側の陣地を攻撃したもようだ。
 この亀戦車には、「甲羅装甲」以外にも目を引くものがあった。もうひとつのドローン対策として、複数のジャマー(電波妨害装置)のかたまりが甲羅の上に張り付いていたことだ。
 ジャマーを使えば、理論的には、ウクライナの戦場で多用されているFPVドローンの操縦に使われる無線信号を妨害し、その飛行を不可能にできる。機体重量1kgほどのFPVドローンは500gほどの爆発物を搭載し、自爆攻撃などによって歩兵を殺傷したり装甲車両を動けなくしたりしている。
 ジャマーをはじめ、ロシア側が開発する新たな電子戦システムに、ウクライナ側は重大な関心を寄せている。新たなジャマーは機能するのか、機能するとすればどのようにかをウクライナ側は知りたがる。
 ドネツク州リマン近郊の村テルニの東で今月、ジャマーを山のように積んだロシア軍のT-72が動けなくなったとき、ウクライナの精鋭部隊であるウクライナ国家親衛隊第12特務旅団アゾフ(通称アゾフ旅団)は、3夜にわたる襲撃を敢行してこの戦車をどうにか鹵獲し、ジャマーを調査している。
 FPVドローンの飛行を妨害するジャマーと、妨害を突破したドローンの爆発物を車体の外で爆発させる装甲を備えていれば、亀戦車は理屈としてはウクライナ側のFPVドローンに対してかなりの防護力を得られると考えられる。ウクライナ軍はFPVドローンを月におよそ10万機投入し、連日、ロシア軍の歩兵を何十人と殺害し、装甲車両を何両も破壊している。

 だが、実際のところ亀戦車には重大な欠陥がある。甲羅の支柱のせいで砲塔はほとんど回転できず、機動性も損なわれている。
 それ以上に問題なのは、甲羅と本体の間に隙間がある点だ。この隙間は、熟達した操縦士ならドローンを潜り込ませられるほど開いている。
 また、ジャマーのほうもたいして役に立たないかもしれない。ロシア軍の電子戦システムは必ずしもうまく機能していない。ロシアのある軍事ブロガーは、ロシア軍の新型ジャマーのひとつについて「製造品質があまりにお粗末だ」と嘆いている。アゾフ旅団が回収したT-72のジャマーも、旅団員によれば急場しのぎの手製の品で「非常に使い勝手の悪い」代物だったという。
 甲羅にジャマーの山を載せた3両目の亀戦車が付近のドローンに発見されていることからも、その有効性に疑問符が付く。
 亀戦車は、目立つことが危険な戦場で注目を浴びる存在にもなってしまっている。最初の亀戦車はクラスノホリウカ近郊に登場してからたった1日かそこらのうちに、ウクライナ軍のドローンチームに追跡され、ドネツク市の西に位置するペトロウシキー地区の格納庫に隠れているところを見つけられた。
 その後、格納庫はウクライナ軍の砲撃を食らった。ソーシャルメディアなどを通じて世界的に有名になっていた亀戦車は、ほかの車両もろとも破壊されたようだ。
 今後、亀戦車が似たような仕方で粉砕されたり、あるいはドローン対策もむなしく、まさにドローンで仕留められたりする例が続出しても、驚くには当たらない。