ロシア軍の「亀戦車」は地雷除去車両か | すずくるのお国のまもり

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◎ロシア軍の「亀戦車」、実は地雷除去車両だった? 専門家が新説

 

 

 ウクライナのドローン(無人機)操縦士はこの2週間に、ロシア占領下の東部ドネツク市のすぐ西に位置するクラスノホリウカ方 面で、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月近くたつ戦争で最も奇妙な部類に入る装甲車両を、少なくとも3両見つけた。
 砲塔と車体を金属製の外殻でほぼすっぽり覆ったT-72戦車だ。大きな甲羅のような追加装甲を背負い、その縁から125mm滑腔砲を鼻のようにのぞかせた格好が亀のように見えることから、「亀戦車」というあだ名を付けられている。
 これらの亀戦車はすべて、ウクライナ東部におけるロシアの傀儡勢力の元部隊で、現在はロシア軍の指揮下にある第5自動車化狙撃旅団に所属しているようだ。
 この戦争ではロシア側もウクライナ側も、戦車などの車両をミサイルやドローンから防護するため、さまざまな追加装甲を施すようになっている。一般的なのはケージ(鳥かご)型やスラット(格子)状のもので、これらは付けても乗員の視界は妨げられず、砲塔の回転もあまり邪魔されない。
 ところが亀戦車の場合、乗員がのぞき見ることのできる前方の隙間はわずかしかなく、おそらく砲塔も左右にほとんど回転できない。ひと目でわかるこうした欠陥から、当然こんな疑問が浮かぶ。第5旅団はいったい何を考えているのだろうかと。
 英国の兵器史家マシュー・モスがひとつの回答を示している。亀戦車の「役割はどうやらブリーチャーのようだ」というものだ。
 ブリーチャー(啓開車両)とは、地雷除去用のプラウ(すき)などを装備した工兵車両のことで、ほかの車両が敵陣近くまで接近して攻撃できるように、地雷原を先導して走るのが主な任務だ。プラウなどで地雷を掘り起こしながら進む間、敵の砲射撃にもさらされることを想定して、分厚い装甲を備える。
 米陸軍は世界最高峰のブリーチャーを保有している。重量70t近くのM1150アサルト・ブリーチャー・ビークル(ABV)だ。ABVは簡単に言えば、M1エイブラムス戦車から主砲を取っ払い、プラウなどの地雷除去器具を取り付けたものだ。米国は昨年後半、ウクライナにABV数両をひそかに譲渡していた。 

 ロシア軍には米軍のABVと同等のブリーチャーはない。ロシア軍のIMR工兵車両は、ぬかるみにはまった車両の吊り上げや遺棄された車両の牽引など、レッカー用途に使われることが多い。重量は50t程度で、ABVと比べると防御力も劣り、クレーンもかさばる。
 ウクライナ側の地雷原や小さなFPV(一人称視点)ドローンの大群に直面し、専用のブリーチャーもないため、第5旅団の工兵らはブリーチャーを自作することにしたのだろう。少なくとも、モスはそう推測している。
 彼らは古いT-72を入手し、ブリーチャーに必要な2つの装備である追加装甲と地雷除去器具を取り付けたと考えられる。また、砲塔がそもそもろくに回らないT-72を選んで改造したのかもしれない。
 亀戦車のトレードマークである追加装甲のほうは、あるのが見てすぐわかるが、プラウなどの地雷除去器具がすべての亀戦車に装備されているのかは、もう少し確認しづらい。
 米国のシンクタンク、外交政策研究所のアナリストであるロブ・リーは、16日にクラスノホリウカへの攻撃を先導した3両目の亀戦車に、マインローラーらしきものが装備されているのを見つけている。マインローラーは、車両本体の少し前で地雷を起爆させる頑丈な車輪セットだ。
 ドローン対策のジャマー(電波妨害装置)を甲羅に張り付けた最初のタイプでもあったこの亀戦車は、「複数の地雷を踏んだあとも前進を続けている」とリーは指摘している。
 この亀戦車の装備や行動は、モスの「亀戦車=ブリーチャー説」を裏づけているように見える。もしそうだとすれば、亀戦車はブリーチャーとしての役割はしっかり果たしていると言えるかもしれない。
 地雷原の啓開は非常に危険な任務だ。実際、ウクライナ側はわずか6両かそこらしかないABVのうち、少なくとも2両を、2月半ばに失陥したアウジーウカ北西のベルディチ方面の激しい戦闘で失っている。一方、亀戦車のほうは、これまで破壊されたのは、8日の戦闘後、基地に帰還していたところを、砲撃を食らって粉砕された1両にとどまっている。

 

◎ウクライナ軍 ロシアの新兵器“亀戦車”を発見したと報告「投入の目的とは? 性能は!?」
 砲塔だけではなく車体も装甲で覆う!?

 

 

 ウクライナ国防省のオフィシャルメディアである「アーミーインフォーム」は2024年4月9日、ドネツク州のクラスノホリヴカ集落近くを走行する“亀戦車”を発見したと発表しました。
 亀戦車とは、自爆ドローンや爆弾投下する無人偵察機への対策のため、戦車の砲塔だけではなく、車体の部分も前面以外を装甲で覆っている改造車両です。亀の甲羅のように見える形状から、そのように呼称しているようです。
 ホルティツィア作戦戦略グループが公開した偵察ドローンによる動画では、T-72もしくはT-90と思われる戦車4両が移動しており、先頭の1両のみが車体の大部分を覆う追加装甲で守られていました。なお、後続の3両はドローン対策としてはお馴染みとなった、砲塔上面への攻撃(トップアタック)対策用のコープケージ(鳥かご)装備車両でした。
 ドネツク州の戦場では、これまでもロシア軍の戦車や装甲車に対し、自爆ドローンや無人機の爆弾投下、歩兵が携行できる対戦車ミサイル「ジャベリン」などによる激しい攻撃が行われており、コープケージでは不十分と考えたロシア側による、新たな戦車防衛策とみられています。
 とはいえ、動画を確認したホルティツィア作戦戦略グループのナザール・ヴォロシン中佐は「この追加装甲が機能するかどうかは非常に疑わしい。砲塔の回転を妨げ、重量も機動性を悪くしている」と同車両を評価しており、脅威度は低いとみているようです。
 また、亀戦車は、移動する都合上車体の前面は、装甲で守られていません。そのため、ウクライナ軍のドローンオペレーターの技量ならば、装甲の隙間から自爆ドローンを入れることが可能とのことです。【了】