◎北朝鮮IT技術者への業務発注 過去摘発の事件で使用の仲介アカウントを引き継ぎか

 

 

 北朝鮮のIT技術者にアプリ開発業務を発注したとみられる韓国籍の男ら2人がIT関連会社設立を巡り不正に登記した容疑で再逮捕された事件で、同社が過去に摘発された北朝鮮のIT技術者への不正送金事件で使用されていた事業仲介サイトのアカウントを使っていたことが27日、捜査関係者への取材で分かった。神奈川県警などは北朝鮮側とのつながりが引き継がれることを警戒して捜査を続行。捜査は新局面を迎え、全容解明を進める。
 広島県福山市のIT関連会社「ROBAST」の設立を巡り不正に登記した電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで再逮捕されたのは韓国籍、別のIT関連会社の社長、朴賢一(53)と、ROBASTの代表を務める蓑毛勇郎(42)の両容疑者。
 捜査関係者によると、朴容疑者が主導して令和3年10月に設立したROBASTが事業仲介サイトを通じて国内企業から業務を受注し、北朝鮮のIT技術者に発注、報酬を支払っていたとみられている。
 神奈川県警などが令和4年5月に摘発した北朝鮮のIT技術者への不正送金事件ではアプリ開発の報酬が支払われていたとされ、送金した関係者2人を銀行法違反容疑で書類送検した。2人はいずれも不起訴処分となったが、その捜査の過程で発覚したのが、朴容疑者らの存在だった。
 もともとは北朝鮮のIT技術者が他人名義で受注する際に使用していた事業仲介サイトのアカウントを朴容疑者の関連会社が使用している形跡があったことから捜査を継続し、ROBASTでの使用も把握。捜査関係者は朴容疑者がアカウントを引き継いだとみており、「北朝鮮のIT技術者とのつながりも引き継いでいるのなら、断ち切る必要があった」と振り返る。
 北朝鮮との関連を隠して仕事を受注するためにROBAST代表に日本人の蓑毛容疑者を据えたとみており「発注した企業も北朝鮮のIT技術者が絡んでいるとは想像もしていなかったようだ」と厳しい表情をみせる。
 北朝鮮側への資金の流出だけではなく、IT技術者が受注業務を行う際のアクセス権限を悪用し、サイバー攻撃に加担する危険性も指摘されている。政府は26日、北朝鮮のIT技術者に関する注意喚起の文書を公表し、相場より安い報酬で業務を募集している場合などに注意することを呼びかけている。