◎日本製砲弾、英経由のウクライナ提供計画に暗雲
送付構想の頓挫、西側の弾薬追加供給に課題
<Alistair MacDonald in London and Alastair Gale in Tokyo/2024年1月30日>
日本製の弾薬を英国経由でウクライナに提供する計画に暗雲が垂れ込めている。欧米各国が目指すウクライナへの弾薬供給拡大を巡り、課題が改めて示された格好だ。
提案されていた計画は、日本企業が英防衛大手BAEシステムズのライセンスを得た上で155ミリ砲弾を生産するもの。これはその後英国に輸送され、英政府がさらに多くの弾薬をウクライナに提供できる見込みだった。
だが事情に詳しい関係者によれば、この計画は暗礁に乗り上げている。
欧米各国はウクライナ向けにさらに多くの弾薬を供与しようとしているものの、今のところその成果はまちまちだ。米国はウクライナでの開戦以降、155ミリ砲弾の生産を倍増したものの、欧州各国の供給体制は強化に時間がかかっている。その中でも問題となっているのが、標準化されているとみられていた砲弾に互換性がない場合があることだという。
ロシアとの戦争が2年近く続く中、ウクライナの大きな課題は枯渇しつつある砲弾をさらに多く確保することだ。戦争では大砲を多用していることから、ウクライナ政府は砲弾の使用制限に追い込まれたこともある。
一方、ロシアは北朝鮮から砲弾の供与を受けつつ、国内での生産も増やしているという。
ダグ・ブッシュ米陸軍次官補(調達・兵たん・技術担当)はインタビューで、より多くの砲弾を手に入れることは、ウクライナにとって最大の優先事項のひとつだと述べた。
日本製弾薬を英国経由で提供する計画は、長年続く武器輸出制限の緩和を決めた日本政府の判断を受けたものとなる。日本政府は昨年12月、外国からライセンスを受けて日本で生産された兵器に関し、ライセンス元の国へ輸出することを承認した。