WSJ【社説】米軍を縮小するバイデン氏 | すずくるのお国のまもり

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【社説】米軍を縮小するバイデン氏
25年度予算教書の国防予算要求、「管理された縮小」を浮き彫りに
The Wall Street Journal

 

 

 バイデン氏は、今は国防支出の削減が受け入れられる時期だと考えている。政権は、昨年の議会との交渉で決めた予算上限を順守しているだけだと説明している。しかし、削減を免れた優先支出項目はほとんどなかった。
 米陸軍の規模は縮小されるが、それは地上部隊の重要性が下がっているからではない。欧州や中東ではニーズが大きい。バイデン政権は2022年には陸軍兵力として48万5000人を求めていたが、今回の陸軍の要求は44万2300人にとどまっている。必要な任務を踏まえると、より健全な規模は50万人だろう。兵力の縮小は、新兵の採用に苦労しているという根本的な問題を解決する代わりにはならない。
 米海軍は艦船を6隻だけ購入する一方、10隻を早期に退役させる予定だ。艦船数は現在の296隻から2025年には287隻に減る。バイデン政権の恐らく最もひどい決定は、購入するバージニア級原子力潜水艦の数を予定されていた2隻から1隻に絞ることだろう。
 米国の持つ潜水艦技術は米軍事力にとって極めて重要なもので、急拡大する中国の海軍艦隊にはない真の強みだ。米国の産業基盤では年間2隻の潜水艦の建造は難しく、政権はこの能力不足に対する妥協策として購入を1隻に絞る決定を提示している。
 しかし、1隻しか調達しないのは投資に関するひどいシグナルであり、米国は軍備増強に真剣ではないと敵対国に告げているようなものだ。米国は自国海軍向けとともに、米英オーストラリア3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の下で豪州にも潜水艦を供給しなければならず、これらの需要を満たすには年間2.3隻の建造が必要だ。本気で取り組む最高司令官であれば、現状をおとなしく受け入れるのではなく、産業基盤の拡大を目指すだろう。
 ロシアが米本土に脅威となる人工衛星攻撃兵器を配備しているという、ほんの数週間前のニュースを覚えているだろうか。米国は宇宙空間において自国衛星を多様化し、強化する必要がある。しかし、バイデン政権の宇宙軍向け予算の要求額は、昨年の要求水準と比べ6億ドル減となっている。この削減規模は同軍予算の2%に相当する。隊員給与の4.5%引き上げ案の資金を確保しなければならないにもかかわらずだ。
 今回の国防予算案が示す大きな構図は、米軍が「管理された縮小」過程にあるということだ。国内総生産(GDP)に対する国防費の比率は、今年の推計3.1%から2034年には2.4%に低下すると予想されている。米国が冷戦で勝利するための軍備増強を図っていた1980年代には6%近くに達しており、今年の比率は当時の半分にすぎない。
 今年の米国の債務利払い費は国防支出を上回り、その差は拡大し続ける。連邦政府による州政府・地方自治体への交付額(メディケイド=低所得者向け医療保険=関連費用など)も国防費を上回る。これらは平時の福祉国家にとっての優先支出項目であり、強硬姿勢を鮮明にする敵対諸国と最新技術による自国へのリスクが高まっている中、国防を真剣に考える国の優先項目ではない。
 米議会は恐らく年内に補正予算を組む形で予算不足への対処を迫られるだろう。しかし上下両院は機能不全に陥っており、2024会計年度の国防総省向け歳出法案でさえ可決できずにいる。ワシントンの政治家たちは国防という最も重要な責務を怠っている。