ウクライナ軍の虎HIMARSがロシア軍に撃破 | すずくるのお国のまもり

すずくるのお国のまもり

お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎◎がついにHIMARS撃破でウクライナに動揺広がる
 ロシアがついにHIMARS撃破でウクライナに動揺広がる|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

<アメリカがウクライナに供与したHIMARSが、初めてロシア軍に破壊された。ここでもウクライナとロシアのバランスが変わってしまったのか
 ロシア軍をさんざん痛い目に合わせてきたアメリカ製のM142高機動ロケット砲システム(俗称HIMARS=ハイマース)。これを撃破するという目標を、ロシア軍は20カ月かけてついに達成したようだ。
 ドネツク州東部のニカノリフカ村(現在の戦線から西に約48キロ、占領されたアウディーイウカとバフムートからほぼ等距離にある)の付近で、ウクライナ軍が保有する39基のHIMARSのうちの1基がロシアの弾道ミサイル攻撃で破壊されたように見える動画が、3月6日に公開された。
 HIMARSは、ロシアの侵略に対するウクライナの頑強かつ巧妙な抵抗の象徴であり、NATOとウクライナの軍事協力の成功の象徴でもある。2022年6月に実戦配備されて以来、ロシア軍はHIMARSを主要な標的として攻撃を続けてきた。
 ロシアはすでに多くのHIMARSを破壊したと主張しており、最近もHIMARS2基を榴散弾で攻撃し、成功寸前までいった例があった。だが、実際に破壊されたのは今回が初めてのようだ。
 HIMARSが破壊されたことで、ウクライナは不安を抱いている。ロシア軍の司令部や兵站拠点、兵力集中地など価値の高い標的を攻撃するうえでHIMARSが重要な役割を果たしていたことを考えれば、当然といえば当然のことだ。
〇弾薬不足のほうが深刻
 ウクライナ議会の国家安全保障・防衛・情報委員会のロマン・コステンコ事務局長は、なぜHIMARSが破壊されたか、調査を求めている。
「イスカンデル(ロシア軍の短距離弾道ミサイル)のような弾道ミサイルの照準を合わせるには、かなりの時間がかかるはずだ」と彼はウクライナの代表的なネットメディア、ウクライナ・プラウダに語った。
「なぜこのようなことが起きたのか、専門家に調査させる。HIMARSはウクライナ軍陣地の後方から発射している。だから、敵の諜報機関がHIMARSの位置を探知するために動いているはずだ」
 今回の損失は注目を浴びたが、ウクライナ軍のもとにはまだ多くの、作戦行動が可能なHIMARSがある。むしろ、ウクライナにとって急を要する問題は、弾薬が足りるかどうかだ。党派的対立によって行き詰っているアメリカ議会のせいで、あらゆる種類のHIMARS用ロケット弾の供給も止まっている。
 今回の損失は、ウクライナとアメリカおよびその同盟国にとって警鐘となるだろう。
「HIMARSがやられたということは、戦争はまだ続いているということだ。だから、われわれは警戒しなければならない」と、ウクライナ保安庁の元将校で、現在はウクライナ議会の国家安全保障・防衛・情報委員会の顧問を務めるイヴァン・ストゥパクは本誌に語った。
 今回の攻撃は高高度対応ドローンの支援を受けて行われたようだ。
「これはひとつには、ロシア軍の能力を示すものだが、他方ではウクライナ側に高度なレーダーステーションがないことを示すものでもある」と、ストゥパクは語る。「また、地上部隊の安全を守るための対空システムも不足している」
「その証拠に、ときおり、ロシアの物体認識機能付きドローンがウクライナ領土の内側50キロ地点を飛行しているところを目撃することがある」と、彼は付け加えた。
 ロシアの軍事アナリストでフレッチャー法律外交大学院客員研究員パベル・ルジンは、最も注目すべきは、ロシア軍が初めてHIMARSを破壊するまでに、非常に長い時間がかかったということだと語る。
「これほど長い間、HIMARSが無事だったことこそ興味深い。すばらしい成果だ。ロシアは同じ時期に何百基ものMLRS(多連装ロケットシステム)と何千発もの榴弾砲を失った」
「ロシア軍の運のなさが大きかったと思う」と、ルジンは付け加えた。「もちろん、ウクライナ人が創造性に富み、ロシア軍にとって貴重なものを破壊するためにはリスクも冒す、という長所もある」。
 米国防総省はそれほど心配しないだろう、と、ルジンは示唆した。「それに、ウクライナ側もより強固にHIMARSを守る方法を学んでいる」

 

◎ウクライナ軍の虎の子兵器HIMARS、ついにロシア軍に撃破される

 

 

 ロシア軍は長らく攻めあぐねてきたウクライナ軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS)のうち、1基をついに撃破した。
 ロシア軍のドローン(無人機)は、ウクライナ東部ドネツク州ニカノリウカ村の樹林帯近くにHIMARSの装輪車両と、随伴する支援車両がとまっているのを見つけた。前線から40kmほど離れた場所だった。
 ミサイルがHIMARSの発射車両のそばに着弾し、17tほどのこの車両は炎上する。それによって、発射機に装填されていた227mmのM30またはM31ロケット弾がクックオフ(周囲の熱による爆発)したもようだ。撃ち込まれたのは地上発射型で超音速のイスカンデル弾道ミサイルだった可能性がある。
 攻撃でHIMARSの部隊員に死傷者が出たのかは不明だ。HIMARSが白昼、目立つ場所に停車していた理由もわからない。ウクライナ軍でHIMARSを運用する唯一の部隊である第27ロケット砲兵旅団は通常、夜明け頃か夕暮れ時に行動し、射撃任務に就いていない間は車両を移動させ続けたり、地形など利用して隠したりしている。
 いずれにせよ、HIMARSの撃破はウクライナ軍にとって手痛い損失だ。一方、この米国製兵器への反撃におおむね失敗してきたロシア軍にとっては、対砲兵戦でのまれに見る勝利になった。遠くまで飛ぶ偵察ドローンと、すばやく目標を狙うイスカンデルの組み合わせによって、ようやく第27旅団に一矢を報いたとみられる。
 ロシア側がHIMARS狩りに血眼になった理由は明らかだ。ロシア軍は先月、1週間のうちに3回も、閲兵などのために野外に集合した部隊をHIMARSで攻撃されていた。HIMARSから発射される6発の射程約92kmのM30/31は、それぞれ18万2000個のタングステン調整破片を巨大な散弾銃の弾丸のように撒き散らす。
 HIMARSによる3回の攻撃ではロシア軍の将兵百数十人が死亡したとされる。HIMARSはロシア軍の部隊を丸ごと粉砕するだけでなく、野砲や指揮・補給の拠点などを破壊するのにも使われてきた。昨年は短期間、米国から供与された数少ない射程約160kmのM39弾道ミサイルも、ロシア軍の航空基地や防空サイトに向けて発射していた。
 ウクライナ軍はHIMARSを1基失ったが、これは致命的な打撃ではない。ウクライナは米国からHIMARSを39基供与されており、さらに英国とドイツ、イタリア、フランスからM270多連装ロケットシステム(MLRS)も計25基受け取っている。MLRSとは簡単に言えば、装填できるロケット弾の数が2倍(12発)に増えた装軌車両版のHIMARSだ。つまり、ウクライナ軍には西側から供与されたHIMARS/MLRSの98%がまだ残っているのだ。
 ウクライナ軍のHIMARSにとって、ロシア側の対砲兵射撃による消耗が最大の脅威というわけでもない。そもそも、HIMARSの射撃任務のペースはここ数カ月落ちていたように思われる。理由を推測するのは難しくない。
 ウクライナにとってロケット弾の最大の供与国だった米国は、昨年10月以来、ロシアに融和的な共和党議員の妨害でウクライナへの新たな援助を停止している。HIMARSが枯渇するとすれば、まず先に尽きるのはシステム自体ではなく、その弾薬のほうだろう。