ロシアは年内に核兵器の宇宙配備も、米国が同盟国に通知 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ロシアは年内に核兵器の宇宙配備も、米国が同盟国に通知

 

 

 米国はロシアが年内にも宇宙に核兵器または模擬弾頭を配備する可能性があると同盟国に伝えた。事情に詳しい関係者が明らかにした。
 匿名を条件に語った関係者によると、ロシアは宇宙空間の拠点から核兵器を使って人工衛星を破壊する能力の開発を進めている。地球周回軌道への核弾頭配備は1967年に発効した宇宙条約への違反で、ロシアは同条約に署名している。
 米下院情報特別委員会のターナー委員長(共和党)は先週、ロシアによる重大な安全保障上の脅威が存在すると、具体的な内容を示さずに発言。その後バイデン大統領は、ロシアが対人工衛星の宇宙兵器を開発しているが、人類の生命に直接的な脅威にはならないとの見解を示していた。
 ホワイトハウス報道官はコメントを控えた。
 ロシアのプーチン大統領は20日、テレビ放映されたショイグ国防相との会合で、「われわれは宇宙への核兵器配備に断固反対の立場を貫いてきた。現在もそうだ」と述べ、「ロシアが宇宙で行っているのは、米国を含む他国がしていることに過ぎない」と主張した。
 プーチン大統領、宇宙への核兵器配備に反対-米国の主張を否定
 ロシアは軌道上のいかなる核兵器も爆発させる計画はないというのが現時点での分析だと、関係者は述べた。だが、事故のリスクはあり、核爆発が起きれば衛星の約3分の1に影響を与え、地上の通信システムに大混乱をもたらす恐れがあるという。
 宇宙兵器に詳しい人物によると、爆発の影響は核弾頭の大きさに左右され、必ずしも衛星の破壊を意味するわけではないが、エラー修正が必要な混乱をもたらす危険がある。
 国連宇宙部によれば、昨年4月時点で、地球軌道上では7800基近い人工衛星が稼働している。
 ロシアは2年前のウクライナ侵攻以来、戦況が不利になる度に核使用をちらつかせる威嚇行為を繰り返してきた。またプーチン氏は昨年、米ロ間の核兵器保有を制限する「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行を停止している。
 米国とその同盟国は、ロシアに対して影響力があるとみられる中国とインドの関与を通じて、ロシアに核戦力の配備を思いとどまらせるよう取り組んでいる。関係者が明らかにした。こうした働きかけの一部については、米紙ニューヨーク・タイムズが先に報じていた。

 

◎米国「ロシア、全世界の通信網を麻ひさせる核EMP兵器を開発中」

 

 

 ロシアが宇宙で人工衛星を無力化できる新しい核兵器の開発に乗り出したことが分かった。米国は中国に関連事実を知らせ「中国も被害を受ける恐れがある」と警告するなど共同対応を求めた。
 CNNは情報筋を引用して「ロシアが爆発時にものすごいエネルギー波動を起こして(宇宙で)衛星を破壊できる核兵器を開発している」と17日(現地時間)報じた。これは衛星の形で一定軌道に乗せた核兵器が爆発して起こす電磁パルス(EMP)攻撃を意味する。
 消息筋は「米情報当局がロシアが新型核EMPの兵器開発に成功し実戦配置する可能性に備え、関連情報を収集し続けている」と伝えた。ロシアが核EMP攻撃に出る場合、米国の核指揮・統制衛星はもちろん、全世界の携帯電話やインターネット、衛星航法装置(GPS)など衛星基盤体系が不通になり日常生活が止まる可能性もある。
 米政府関係者らは「このような兵器が使用される場合、核兵器史上最も危険なルビコン川を渡ることになる」とし「日常生活に深刻な混乱を招きかねない」と懸念を示した。米国防当局は、まだ開発中の段階に軌道に乗せるなど配備していないことが分かった。
 米国はロシアのこうした動きを中国・インドなどとも意見を交わし始めた。ニューヨーク・タイムズによると、アントニー・ブリンケン米国務長官は16~17日、ドイツで開かれたミュンヘン安保会議で、中国共産党中央外事弁公室の王毅主任(外交部長兼職)とインドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相に相次いで面会し、「宇宙で核爆発が起きれば、米国の衛星だけでなく中国とインドの衛星も破壊されるだろう」とし、「ロシアに近い中国とインドが乗り出して止めなければならない」と呼びかけた。
 米国はロシアが核EMP兵器を配備するのは宇宙空間での軍事的利用を制限する「宇宙条約」(1967年発効)に違反すると見ている。同条約によると、宇宙空間では核兵器などの大量破壊兵器(WMD)の配備が禁止される。
 ジョー・バイデン米大統領は16日「現在、ロシアがやっていることで米国民や世界のどこにも核の脅威はない」としながらも「彼らがやっているか、今後やるすべてのことは衛星や宇宙、そして潜在的に衛星を損傷させることと関係がある」と述べた。
 峨山(アサン)政策研究院のヤン・ウク研究委員は「ウクライナ軍がスペースXの『スターリンク』のような小型集合衛星を活用してロシア軍が苦戦した」として「かつて開発していたミサイルでは広範にわたって散らばった衛星を無力化することができないため、核EMP兵器の開発に乗り出した可能性がある」と話した。

 

◎アングル:ロシアの新宇宙兵器、高出力で衛星の電子装置を無効化か

 

 

[ワシントン 15日 ロイター] - 米情報機関はロシアが新たな宇宙兵器の開発を進めていると見ているが、専門家の見立てによるとこの兵器は人工衛星を爆破する核弾頭ではなく、核エネルギーを利用して人工衛星に組み込まれた電子装置を無効化するタイプである可能性が高い。
 ロシアの新宇宙兵器開発は、米下院情報委員会のマイク・ターナー委員長(共和党)が14日に「国家安全保障上の深刻な脅威」と警告する異例の声明を発表したことをきっかけに判明した。
 この問題に詳しい情報筋は、米政府はロシアの核能力と宇宙兵器開発計画に関する新たな情報を入手したと明かしたが、ロシアの新たな能力は米国にとって緊急の脅威ではないと付け加えた。ブリンケン米国務長官も15日、同様の見解を示した。
 ロシアの宇宙開発計画に詳しい専門家は、ロシアの新兵器は核弾頭ではなく、人工衛星を標的とする、核エネルギーが必要な高出力の装置ではないかと見ている。例えば、衛星の信号を妨害したり、画像センサーを無効化したりする装置などが考えられ、強力な電磁波で特定の軌道にある衛星の全ての電子装置を使えなくする「電磁パルス(EMP)」の可能性もある。
 米シンクタンク、軍備管理協会のダリル・キンボール会長は「ロシアが開発しているのは核弾頭を搭載した兵器ではなく、軌道に乗れば電子戦が可能な(中略)核を動力源とするシステムである可能性が高い」と述べた。
 米国防情報局(DIA)は2023年の報告書で、ロシアは個々の衛星を標的とする兵器のみならず、「全ての衛星の内部構造に被害を与えうる高出力のシステム」を開発しているようだと指摘した。
 ロシア政府は15日、同国の宇宙兵器開発を巡る米国の警告について、「悪意のあるでっち上げ」だと否定した。 もっと見る
<核の脅威>
 核を搭載しない対衛星兵器は既に何年も前から開発されており、ロシアは21年に米国、中国、インドに続き、老朽化した衛星を標的とする対衛星ミサイルの発射実験を行っている。
 しかし核兵器による衛星爆破はこうした非核ミサイルとは全く異なる。
 セキュアワールド財団のアナリスト、ブライアン・ウィーデン氏は、ロシアが宇宙で核兵器を爆発させれば、軍事と商用の両方の衛星にとって深い意味を持つ可能性があり、ロシアの信頼が損なわれると指摘。「ロシアは過去40年もの間、宇宙を兵器化し、宇宙空間に兵器を配備したがっていると米国を強く批判し、ロシアは決してそんなことはしないと言明してきた。そのロシアが宇宙で核兵器を爆発させれば、全てを失う」と話す。
 シンクタンク、カーネギー国際平和財団の核専門家、ジェームズ・アクトン氏は、ロシアが軌道上に核兵器を配備すれば国連の「宇宙条約に対するあからさまな違反」だと述べた。
 1967年に発効した宇宙条約は「核兵器やその他の大量破壊兵器を搭載した物体を地球の周回軌道上に置くこと」を禁じており、米国とロシアも調印している。
 アクトン氏によると、ロシアが宇宙条約に違反すれば、米国とロシアの軍縮の取り組みが一段と損なわれる。ロシアは23年に米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止している。
 専門家の話では、対衛星兵器は軍事的、商業的な通信を麻痺させ、軍の活動能力を損なうだけでなく、配車から食品配達サービスまで幅広く利用されている全地球測位システム(GPS)を使用不能の状態に陥らせる恐れがある。
 米情報機関の元幹部は「ロシアは、人工衛星にアクセスできなければわれわれは盲目だと考えており、これは事実だろう。人工衛星に頼ることができるということは、潜在的な対立関係における大きな利点だが、同時に大きな弱点でもある」と説明し、衛星が攻撃された場合の影響の広範さに危惧を示した。