韓国統一部「北朝鮮経済・社会実態認識報告書」 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎韓国統一部が6日に公開した「北朝鮮経済・社会実態認識報告書」

 

 「いまはほぼ50%がみんな(携帯電話を)持っています。それで商売連係もして基本電話も使って、家族と会いたい時もビデオ通話もする。社会の流れがこうなのでだれもかも電話を使います」(2019年脱北者)
 

「ピアノを教えて、英語やコンピュータの家庭教師もつけて。金持ちの家の子どもたちがあのように私教育にお金を投資するのにできないわけがありません。北朝鮮で1位である理科大学に送るという」(2019年脱北者)
 

「ジーンズのようなぴったりしたのがあるでしょう。そんな人たちが通ると捕まって罰金を取られます。私は取り締まられたんです。そうじゃないと言えばその人はかんしゃくを起こすため(服を)破ったりもします」(2018年脱北者)

 

 韓国統一部が6日に公開した「北朝鮮経済・社会実態認識報告書」に登場する脱北者インタビューの一部だ。報告書は2013~2020年に脱北し韓国に定着した6451人の証言に基づいて作成された。崩壊した配給制、「白頭(ペクトゥ)血統」に対する反感拡散、二極化深化など北朝鮮内部の最近の実状がそのまま表れた。

 

 

 韓国統一部が6日に公開した「北朝鮮経済・社会実態認識報告書」に登場する脱北者インタビューの一部だ。報告書は2013~2020年に脱北し韓国に定着した6451人の証言に基づいて作成された。崩壊した配給制、「白頭(ペクトゥ)血統」に対する反感拡散、二極化深化など北朝鮮内部の最近の実状がそのまま表れた。

◇金正恩政権でさらに瓦解した配給制
 韓国政府はこれまで毎年脱北者を対象に実態報告書を作成してきたが、一般に公開したのは初めてだ。以前は脱北者の個人情報露出の懸念などを考慮し、報告書を3級秘密に分類していた。今年10年間収集した資料を分析して報告書を公開したのは、北朝鮮の実状を正しく知らせようという尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の基調が反映されたもので、北朝鮮の人権増進努力の一環と解釈される。統一部の金暎浩(キム・ヨンホ)長官は発刊辞で「北朝鮮の実状に対する正確な理解は北朝鮮を正しい変化に誘導し、自由で平和な統一韓半島(朝鮮半島)を準備するための最初の段階」と強調した。
 報告書によると、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が執権してから配給制崩壊速度はさらに速くなった。2006~2010年に脱北した回答者のうち「食糧配給を受けたことがない」という回答は63.0%だったが、金正恩委員長執権後の2016~2022年の脱北者では72.2%で10ポイント近く増えた。
 1990年代の「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な経済難を体験してから社会主義が標ぼうする計画経済と配給制が正常に作動していないが、ますます状況が深刻化しているということだ。これに対し住民らはチャンマダンと呼ばれる闇市場での経済活動を通じて生活をやりくりしていく方式で生存戦略を模索している。
 報告書は「北朝鮮住民が体験している経済難と民生苦の原因はほかでもない北朝鮮政権の歪んだ政策と経済支出」と指摘した。1970年代以降に核開発だけに総額11億~16億ドルを投じるなど核・ミサイル能力の高度化に財政を注ぎ込むのに民生苦から目を背けているということだ。
 ここには2016年から本格化した国際社会の高水準の対北朝鮮制裁と新型コロナウイルス拡散による国境封鎖により北朝鮮政権の収益そのものが減ったのも影響を及ぼしたとみられる。
 2009年11月に実施した貨幣改革の失敗後、北朝鮮国内ではドルなど外貨の通用が大きく増えたことも確認された。報告書は「自国通貨に対する信頼度が下落したこと」を主要因に挙げた。外貨通用は国境周辺地域でより活発になっており、保有通貨の種類を問う質問に対しても外貨だけ保有しているという回答が増加した。

 

◎脱北者の7割「配給受けたことない」…残酷な北朝鮮の実情証言(2)

 

 

◇「3代世襲」「白頭血統」への冷ややかな視線も

 権力世襲や白頭血統そのものに対する否定的認識も増えた。金正恩委員長の権力継承に対する否定的評価は執権直前である2006~2010年の脱北者では36.6%だったが、金委員長が各種粛清などを通じて権力を固めた2016~2020年に脱北した人たちでは56.3%に達することがわかった。
 北朝鮮版ロイヤルファミリーの「白頭血統」に対する反感も大きくなった。金正恩委員長の父親である金正日(キム・ジョンイル)国防委員長時代に脱北した人では白頭血統世襲に反対する回答者が30%前後水準だったが、金正恩委員長が執権した直後である2011~2015年の脱北者は42.6%が否定的評価を出した。2016~2020年の脱北者では半分を超える54.9%が白頭血統世襲に反対した。
 体制に対する反感が高い脱北者を対象にした調査である点を考慮しても、こうした上昇推移は注目する価値はあると指摘される。金正恩委員長が娘のジュエ氏を後継者と示唆する中で、白頭血統4代世襲に対する内部の認識はさらに悪化する可能性もある。
 ここには金正恩委員長執権後に住民らの思想の緩み防止に向け社会全般にわたって統制と規律体系を強化したことが影響を及ぼしたとみられる。報告書によると、社会監視と統制の強化レベルを問う質問に、金正恩委員長執権前である2011年以前に脱北した人たちは50.7%が「とても強い」「やや強い」と答えたのに比べ、金正恩体制が正式に始まった2012年以降に脱北した人では71.5%が、統制がより深刻になったと答えた。
 実際に北朝鮮は反動思想文化排撃法、平壌(ピョンヤン)文化語保護法などを通じて外部情報の流入を防ごうと全力を挙げている。これはそれだけ内外の情報流通が活発になっているという傍証だが、報告書によると外部の映像を視聴したという回答は83.3%に達する。最近北朝鮮国内でコンピュータや携帯電話などの情報機器使用もやはり拡散している。
◇深刻な平壌と地方の格差
 報告書によると、北朝鮮でも貧富の格差は深刻な水準だ。既存の核心階層である党・政・軍幹部の金稼ぎ行為に加え私経済活動により富を蓄積した「金主」など一部上位階層が登場して二極化が激しくなったと分析される。2016~2020年に脱北した人のうち93.1%が貧富格差が激しいと答えた。
 平壌と地方の生活水準格差もこうした二極化をあおる要因だ。地方は平壌より公共サービスとインフラ供給ではるかに劣悪な状況と現れた。食糧配給経験も地方の国境隣接地で33.9%、非国境隣接地で30.1%と、平壌の60.9%に比べほぼ半分水準だった。
 暖房燃料の場合、平壌は石炭が59.2%、電気が9.5%と割合が高かったが、国境隣接地域では木材燃料で暖房する割合が72.7%だった。最近金正恩委員長が地方経済活性化に死活をかけ党・政・軍の主要幹部を投じているのもこれによる民心離反を懸念した結果とみられる。

 

◎正恩政権への不信、北朝鮮で拡大 私的経済活動も増 脱北者調査

 

 

 韓国統一省は6日、脱北者6351人に北朝鮮の経済や社会について聞いたアンケート調査の報告書を公表した。金日成(キム・イルソン)氏の血筋による指導者の世襲制や現在の金正恩(キム・ジョンウン)政権について否定的な評価が増加。統一省関係者は「核・ミサイルの開発に注力する一方で、民生をないがしろにしており、市民の期待感が失われている」との見方を示した。
 調査は2020年までの脱北者に対し、13~22年に実施した。これまでの調査は非公開だったが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は北朝鮮への強硬姿勢を強めており、政権運営が揺らいでいることを強調する狙いがあるとみられる。
 報告書によると「(脱北前に)世襲制を維持すべきではないと考えていた」と答えた人は、00年以前の脱北者は22・7%だったが、16~20年の脱北者では54・9%に増加した。11年に最高指導者になった金正恩氏について「肯定的に思っていた」と答えた人は、11~15年の脱北者では22・3%だったが、16~20年では14・5%に減少した。
 また、禁止されている私的な経済活動を行う人が増え、計画経済に対する否定的な意見が増加した。12年以降の脱北者の約7割が主な所得源が「非公式所得」と回答。以前はチャンマダン(野外市場)での小売業が多数を占めていたが、密貿易や農業、貸金業、飲食業などに広がり、多様化している。16~20年の脱北者の46・2%が個人間では禁止されている住宅売買や譲渡の経験があり、市場経済が拡大している実態も明らかになった。
 一方、貧富の格差については、16~20年の脱北者の93・1%が「拡大している」と回答。海外映像を視聴したことがある人が8割を超え、国外への関心も増加した。
 金暎浩(キム・ヨンホ)統一相は「住民からは変化の動きがうかがえる。国際社会と共に北朝鮮の変化を促せば、北朝鮮当局も民生や人権改善のプレッシャーを感じざるを得ないだろう」とコメントした。【ソウル日下部元美】