ウクライナ軍のレオパルト2戦車が「絶滅」の危機 | すずくるのお国のまもり

すずくるのお国のまもり

お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナ軍のレオパルト2戦車が「絶滅」の危機 部品不足で修理進まず

 

 

 ウクライナ軍は西側諸国からドイツ製レオパルト2戦車の最初の供与分として71両を受け取った。ロシアとウクライナの戦争で使われている兵器の損失を調べている団体Oryx(オリックス)によると、その後1年にわたる激しい戦闘でうち少なくとも12両を撃破されて失った。
 もっとも、ウクライナ軍が現在、戦闘可能なレオパルト2を用意するのに苦慮しているのは、撃破による損失が主な理由ではない。ウクライナ軍のレオパルト2の損耗では、撃破、つまり二度と戦闘で使えないほど完全に破壊されたものよりも、損傷にとどまるものが多い。ウクライナ軍は、これら損傷した戦車を修理して前線に復帰させるうえで問題を抱えているのだ。
 レオパルト2は攻撃を受ければすぐ終わりになるような戦車ではない。乗員4人、重量70トンのこの頑丈な戦車は、被弾しても修理を施せば前線に戻ることができる。「被弾→修理→前線復帰→被弾……」というサイクルで繰り返し使用できる戦車なのだ。
 つまり、レオパルト2は再生可能なリソースだ。ただ、整備士がこのリソースをどれだけ早く再生できるかは、もっぱら部品の入手しやすさにかかっている。そして、ウクライナ軍のレオパルト2では部品の入手が難しい状態が続いているのだ。
 ウクライナ軍は昨年夏に反転攻勢を始めた時点で、レオパルト2A4を50両、装甲を強化したスウェーデン版レオパルト2A5のStrv(ストリッツヴァグン)122を10両追加装甲や、より砲身の長い120mm滑空砲を装備したレオパルト2A6を18両保有していた。
 レオパルト2A4は南部方面の第33独立機械化旅団Strv122は東部方面の第21独立機械化旅団レオパルト2A6は南部方面の第47独立機械化旅団にそれぞれ配備された。第47旅団はのちに、北東部の激戦地アウジーイウカ方面への増援に送られている。
 3旅団は反攻を進めるなかで、ロシア軍の地雷やドローン(無人機)、砲撃、ミサイルによって戦車を失った。レオパルト2A4は少なくとも7両、レオパルト2A6は4両、Strv122は1両が撃破された。
 差し引きするとウクライナ軍には59両のレオパルト2が残っていることになるが、実際はそのうち数十両が修理できずに使えない状態になっている可能性がある。今月、ドイツのテレビ放送局n-tvのクルーがウクライナ軍のレオパルト2A6の小隊を現地で取材した時、この小隊が運用する戦車4両のうち戦闘可能なものは1両だけだった。

 ドイツの政党「同盟90・緑の党」のゼバスティアン・シェーファー議員は状況を把握するため、レオパルト2の製造元のドイツ企業、ラインメタルとクラウス・マッファイヴェークマンがリトアニアに設けている整備工場を訪ねた。ここではレオパルト2A6とStrv122の修理が行われている。レオパルト2A4のほうはポーランドで修理されている。シェーファーはシュピーゲル誌に、供与されたレオパルト2A6のうち「ウクライナがまだ使用できているのはごくわずかだろう」と語っている。
 レオパルト2の部品は、前線だけでなくこれらの修理拠点でも不足している。ただ、これは1991年のソ連崩壊以降、ドイツの軍事力が衰退したのをつぶさに観察してきた人にとっては、驚くようなことではないだろう。
 ドイツ国防省でウクライナ情勢センターを率いるクリスティアン・フロイディンク陸軍少将は、部品を切実に必要とし、自力で戦車を修理したいウクライナはとくに損傷が激しいレオパルト2に関しては部品を取り外してからトラックや列車に積み、ポーランドやリトアニアに送ることが多いと説明している。
 フロイディンクによれば、ウクライナ側によるこうした「共食い」修理のために、ポーランドやリトアニアの整備工場では、戦場で傷んだ箇所を直すだけでなく、剥ぎ取られた部品の補充もしなくてはならなくなっている。作業は戦車を修理するというより「作り直す」のに近いという。
 前線と修理拠点で部品在庫を充実させれば、共食いは減り、修理のペースも上がるはずだ。修理にかかる期間は数カ月ではなく数週間に縮むかもしれない。
 ドイツ政府もウクライナ政府も問題は理解している。ドイツ政府がこのほど発表した新たなウクライナ支援パッケージに、レオパルト2A6用の部品が数多く含まれていたのはその証拠だ。
 ウクライナ軍は先ごろ、第47旅団に残っていたレオパルト2A6を第21旅団に譲渡させ、第21旅団のStrv122とまとめた。兵站を整理するのが目的とみられる。
 一方、オランダとドイツは、新たに14両のレオパルト2A4をウクライナに引き渡し始めている。こちらはおそらく第33旅団に配備されるだろう。
 いずれにせよ、より長期的な解決策としてはドイツの産業界による部品の生産が求められる。大量の部品を、持続的に生産していくことが必要だ。