北朝鮮、極超音速ミサイルの試射を行う | すずくるのお国のまもり

すずくるのお国のまもり

お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎極超音速ミサイルの試射を行う

 

 

【平壌1月15日発朝鮮中央通信】1月14日の午後、朝鮮民主主義人民共和国ミサイル総局は、極超音速機動型操縦戦闘部を装着した中・長距離固体燃料弾道ミサイルの試射を行った。
 試射は、中・長距離級極超音速機動型操縦戦闘部の滑空および機動飛行の特性と新しく開発された多段大出力固体燃料エンジンの信頼性を実証するのに目的を置いて行われた。
 試射は、成功裏に行われた。
 当該の試射は、周辺国家の安全にいかなる影響も与えなかったし、地域の情勢とは全く無関係に行われた。
 ミサイル総局は、今回の試射が強力な兵器システムを開発するための総局と傘下の各国防科学研究所の定期的な活動の一環であると説明した。---

 

◎北朝鮮のミサイル等関連情報
 北朝鮮は1月14日14時53分頃、北朝鮮内陸部から、1発の弾道ミサイルを、北東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが、発射された弾道ミサイルは、最高高度約50km程度以上で、少なくとも約500km程度飛翔し、落下したのは朝鮮半島東岸付近の日本海であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外であると推定しています。

防衛省・自衛隊:北朝鮮のミサイル等関連情報 (mod.go.jp)

 

◎北朝鮮発射のミサイル高度50キロ以上少なくとも500キロ飛行か?韓国軍は飛距離約1000キロの中距離弾道弾と推定

 

 

 北朝鮮が、2024年初めてとなる弾道ミサイルを、14日、日本海に向けて発射した。
 防衛省によると、14日午後2時53分ごろ、北朝鮮の内陸部から、弾道ミサイル1発が北東に向け発射された。
 ミサイルは、最高高度およそ50km以上、少なくともおよそ500km飛び、日本のEEZ(排他的経済水域)の外側の日本海に落下したと推定されている。
 北朝鮮の弾道ミサイル発射は、2023年12月のICBM(大陸間弾道ミサイル)以来で、2024年に入って初めて。
 岸田首相「今後の対応に万全を期すよう指示を出した」
 政府は、北朝鮮に厳重に抗議し強く非難した。
 一方、韓国軍は、飛行距離およそ1,000kmで、中距離弾道ミサイルだと推定している。
 韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国防相は10日、北朝鮮が2023年11月に、固体推進モーターの燃焼実験をした新型の中距離弾道ミサイルの発射が、「今月中に行われる可能性も排除できない」と述べていた。

 

 

 

◎「徹頭徹尾、第一の敵対国」朝鮮中央テレビの天気予報に異変…ロシアに供与された“北”ミサイルが日本を揺さぶる!?
 フジテレビ上席解説委員 能勢伸之

 

 

北朝鮮版「極超音速ミサイル」の発射
金正恩総書記が、韓国を「徹頭徹尾、第一の敵対国」と定義づけた2024年1月15日の前日にあたる14日、北朝鮮は、新型ミサイルの発射試験を実施した。
 極超音速ミサイルとは、マッハ5以上の極超音速で飛行し、軌道が変化する、いうなれば、豪速球かつ変化球のように飛び、西側の弾道ミサイル防衛をかわすように開発されるミサイルのことだ。
 北朝鮮メディアは「発射試験は、中長距離極超音速機動型操縦戦闘部の滑空及び機動飛行特性と、新開発の多階式大出力固体燃料発動機の信頼性を確証することを目的として進められ、成功裏に行われた」(朝鮮中央通信1月15日付)と説明した。
 この一文で目を引くのは「極超音速機動型操縦戦闘部の滑空及び機動飛行特性」という表現である。
 極超音速ミサイルは、ミサイル防衛をかわして標的を叩くのが目的で、大まかに二つの種類がある。
 どちらもロケット・ブースターで加速した上で先端部を切り離すことになるが、その勢いを利用して、先端部がマッハ5以上の速度で飛ぶ極超音速滑空体(グライダー)型と、先端部がスクラム・ジェットという特殊なエンジンを装備した極超音速巡航ミサイル(HCM)型の二種類だ。
 北朝鮮メディアの表現が正しいとするなら、14日に試験発射されたミサイルの先端部は、「極超音速」で「滑空」する。分類するなら「極超音速滑空体ミサイル」ということになるだろう。
 北朝鮮が「極超音速ミサイル」と称するモノを試射するのは、今回が初めてではない。北朝鮮は、かつて2022年1月5日と11日にも「極超音速ミサイル」を発射していた。
 ただ、2022年1月発射の際のブースターは、射程約3700~6000kmの火星12型中距離弾道ミサイルの液体燃料+液体酸化剤を使用する一段式ブースターを改修したものを使用していた。
 火星12型長中距離弾道ミサイル(2017年)ブースターは液体推進一段式 メインの噴射口の周りに姿勢制御用のバーニアが4個噴射しているのが見える
 2024年1月14日に発射された「極超音速ミサイル」で使用されたブースターについては「新開発の多階式大出力固体燃料モーター」と記述されているので、北朝鮮メディアが、去年11月11日に第一段用固体推進剤モーター、14日に第二段用固体推進剤モーターの噴射試験を実施したと画像付きで紹介した「新型中距離弾道ミサイル用の大出力固体燃料モーター」(朝鮮中央通信2023年11月15日)を使用した可能性が高いだろう。
「新型中距離弾道ミサイル用の大出力固体燃料モーター」第一段と第二段(朝鮮中央通信・2023年11月15日)
従って、2024年1月14日の発射で使用されたのは、画像をみても、ブースターの側面におそらく電気配線を保護するカバーが上下に二か所あるので二段式の固体推進ブースターということになり、一段目と二段目がそれぞれ、噴射試験を実施していた前述の「大出力固体燃料モーター」とみれば、つじつまがあうだろう。
「極超音速ミサイル」には配線カバーが上下2か所あり、二段式であることを示している(労働新聞・1月15日)
一段式の液体燃料エンジン・ブースターと二段式の固体推進ロケット・モーターのブースターでは、何が異なるのだろうか。
 固体推進剤を使用するブースターは、工場で組立ての際に、燃焼室内部に固体燃料と酸化剤を混ぜた”固体推進剤”を貼り付けてあるので、ミサイルを立て、着火すれば噴射が開始される。
 個体推進ロケットモーター概略図(米・会計検査院(GAO)HPより)
 これに比べて、液体燃料と酸化剤を使用するロケット・エンジンを組み込んだブースターの場合、発射前にタイミングを計って液体燃料と液体酸化剤を注入する必要があり、さらに発射前に燃焼室にポンプで燃料と酸化剤を送り込んでから着火、噴射を開始する。
 両者を比較すれば前述の固体推進モーターの方が噴射までの手間が掛からないことになる。
 液体燃料ロケットエンジン概略図(NASAのHPより)
 2022年1月11日の発射の際、北朝鮮メディアが示した画像や、韓国軍が発表した情報を合わせると「極超音速ミサイル」は、最高速度マッハ10、最高高度約60kmで抑えられ、水平面で約600km飛んだところで、極超音速滑空体である先端部が分離。大きく左に旋回し、約1000km飛んだことになっていた。
 2022年1月11日の北朝鮮版「極超音速ミサイル」の飛行コース(労働新聞・2022年1月12日)
 ところで、肝心の先端部については、2022年1月の画像と2024年1月の画像は、どちらも、4枚の操舵翼があり、形状も極めてよく似ている。2022年の発射の際の低高度での大旋回は、この操舵翼の成果と言えるのかもしれない。
 北朝鮮版「極超音速ミサイル」先端部(極超音速滑空体)
 左:2022年1月発射。右:2024年1月発射。
 北朝鮮ミサイルと"核"能力
 2022年1月に発射された「極超音速ミサイル」の先端部(極超音速滑空体)のブースター部分との結合部の直径は、83~85cm程度とも推定されているので、“核兵器”との関係も気に掛かるところだ。
 なぜなら、北朝鮮が昨年3月に戦術核弾頭として紹介した火山31型弾頭は、超大型放射砲の直径600mm とされるKN-25短距離弾道ミサイルに搭載する計画を画像で示しており、大きさから言えば2022年1月に「極超音速ミサイル」の先端部に搭載できる可能性も否定できない。
 さらに、それと、そっくりな2024年1月14日に発射された固体推進剤使用の「極超音速ミサイル」先端部に「火山31」弾頭が搭載可能かどうかも気に掛かるところだ。
「火山31」戦術核弾頭か?視察する金正恩総書記(左)KN-25超大型放射砲弾体先端部と金正恩総書記(右)
2024年1月の発射の際には、韓国・国防部は、北朝鮮のミサイルは約1000km飛翔したとし、日本の防衛省は、最高高度50km以上で、500km以上飛行したと発表したので、日韓の防衛当局の間で食い違いが生じた。
 防衛省発表:北朝鮮版「極超音速ミサイル」の飛行ルート。(1月14日)
 発射ポイントについては、米軍の早期警戒衛星SBIRSが、宇宙から北朝鮮の発射の瞬間にその場所を特定し、米軍は、その情報を日韓に送るので、発射ポイントというミサイル発射の起点については、日韓で差異はないはずだ。
 地球の周りで弾道ミサイルの発射を探知する米SBIRS衛星概念図。(米国防省公式映像より)
北朝鮮から約500kmでは、日本に届きそうもないが、約1000kmでは、西日本などに届くことになりかねない。
 能登半島には、弾道ミサイルの追尾能力があるはずのJ/FPS-3Aレーダーを備えた航空自衛隊・輪島分屯基地があるが、能登半島地震で、防衛省や自衛隊が地震対応に追われていた時期だった。
 日本各地に多数のレーダーを抱える航空自衛隊のトップ、内倉空幕長は、1月18日の記者会見で、輪島分屯基地で「複数の建物に被害が出ている。基地機能の一部には支障が出ている」ことを認めたうえで「ミサイル防衛の体制には遺漏がない」ことを強調したが、前述の日韓の発表内容の差異は、日本のレーダー/センサーの能力に関わる事項を示唆するものだったのだろうか。
 航空自衛隊・輪島分屯基地 J/FPS-3Aレーダーのアンテナカバーが見える(航空自衛隊・輪島分屯基地HPより)
ところで、「韓国を第一の敵対国」と定義づけた金正恩総書記だったが、日本に対しては、どうであったか。
 1月5日、金正恩総書記は、能登半島地震に触れ、「日本国総理大臣 岸田文夫閣下」という宛名を付して「日本で残念なことに、新年の初めから地震による多くの人命被害や物質的損失を被ったというニュースに触れ、わたくしは、あなたとあなたを通して遺族と被害者に深く同情と慰問を表します。私は被害地域人民が一日も早く、安定した生活を回復することを願っています」との異例の見舞いメッセージを送っていた。
 能登半島地震は、1月1日の出来事だったが、その翌日の2日、日本の安全保障を揺るがすかもしれない出来事が、ウクライナで起きていた。
 ウクライナに着弾した北朝鮮ミサイルの正体
 ウクライナの第二の都市ハルキウには、1月2日にロシア軍が撃ち込んだミサイルの残骸が転がり、崩れた建物の間にはクレーターが広がっていた。
 残骸を調べた現地の検察庁は1月6日、その調査結果を発表した。
 ミサイルの残骸は「(ロシアの)イスカンデルか、そっくりなミサイル」としつつ、「責任を明らかにするため、ロシアでは工場職員の名字書くが、このミサイルにはない」「部品の番号を消して、ミサイルの情報を隠したがっているようだ」
 ロシアから撃ち込まれたミサイルを分析したウクライナ・ハルキウ検察庁の公式HP。
そして「イスカンデルより直径で10mm大きかった」としたうえで「北朝鮮のミサイルには、イスカンデルをベースにしたものがある。北朝鮮のミサイルと、ノズルや後部が似ている。北朝鮮のミサイルかもしれない」と分析したのである。
 ハルキウ検察庁が発表したミサイル残骸の画像。(ウクライナ・ハルキウ検察庁の公式HPより・1月6日)
撃ち込まれたのが、北朝鮮製なのかどうか?結論を下したのは米国だった。
 米国のカービー戦略広報調整官は、1月4日、「北朝鮮は最近ロシアに発射装置と数十発の弾道ミサイルを提供した。(中略)1月2日、ロシアは夜間、複数の北朝鮮弾道ミサイルをウクライナに向けて発射した」と明かしたのである。
 カービー戦略広報調整官が示したボード(ホワイトハウスNSC・1月4日)
そして、カービー戦略広報調整官は、ミサイルの種類には言及しなかったが、その説明ボードには、「ロシアに引き渡される前に、北朝鮮で行われた弾道ミサイルの発射試験の画像」として変則軌道で飛べる北朝鮮のKN-23短距離弾道ミサイルとKN-25超大型放射砲の画像が添えてあった。
 北朝鮮のKN-23短距離弾道ミサイル(左)とKN-25超大型放射砲(右)(ホワイトハウスNSC・1月4日)
そして「一連の発射から、ロシアと北朝鮮は学ぶだろうと予測している」と言い添えた。何を”学ぶ”というのだろうか。
 気になるのはカービー戦略広報調整官は、発射された「北朝鮮の弾道ミサイルの射程は約900km」と明かしたことだ。
 KN-23とみられるミサイルが撃ち込まれたハルキウは、北のロシアとの国境から30km強、東のロシアとの国境からでも100km強程度しかない。900kmも飛んだのなら、その飛翔ルートのほとんどは、ロシア領空内ということになるだろう。
 そうだとすれば、ロシア国内の対空レーダーで、飛行中のデータを取得できたのではないか。
 もうひとつ気がかりなのは、北朝鮮が昨年3月に明らかにした前述の「火山31」弾頭だ。
 北朝鮮は、火山31を「戦術核弾頭」と呼び、昨年3月の時点で、火山31とKN-23を並べた画像を北朝鮮メディアで公開し、KN-23に搭載する計画があることを強く示唆していた。
 画面左にKN-23ミサイル 右に火山31弾頭(左) KN-23ミサイル(右)(労働新聞・2023年3月28日)
韓国の中央日報英語版(2023年4月10日付)によれば、火山31の推定重量は150~200kgとされている。
 仮に火山31を積むシミュレーションとして、KN-23に150~200kgを積んで飛ばしてみた結果、射程900kmにも達したのなら、「火山31」搭載の「KN-23」は、西日本にも届くことにもなりかねない。
 射程約900kmのミサイルは西日本に届く?
 ハルキウの検察当局の分析では「着弾したミサイルの残骸は、ロシアのイスカンデル(システムから発射される9M723弾道ミサイル)と異なり、妨害電波から内部の配線を守る措置が取られていなかった」という。
 ハルキウ検察庁はミサイルに妨害電波対策が施されていないとの見方を伝えた(ハルキウ検察庁公式HPより・1月6日)
ロシアが、北朝鮮から入手したミサイルを今後、ウクライナにどれだけ発射するかは分からない。
 また、北朝鮮が、ロシアから何らかのミサイル技術を新たに入手するかどうかも不明だが、日本の安全保障の観点からも注目せざるをえないのではないだろうか。
 北朝鮮の海を泳ぐ"核"兵器
 そして、北朝鮮は、1月15日から3日間、米空母カール・ビンソンを含め、日米韓が済州島周辺の海上で行った訓練は「地域情勢をさらに不安定にする」「わが国家の安全を甚だしく脅かす行為だ」として、「対応措置として、開発中の水中核兵器システム「ヘイル-5-23」の重要実験を日本海水域で行った」と発表した。
 北朝鮮の無人水中攻撃艇ヘイル。北朝鮮は核搭載を可能としている。(朝鮮中央テレビ・2023年7月28日)
今回、言及された「ヘイル-5-23」がどんな兵器で、どんな試験なのかは不明だが、従来、北朝鮮メディアが公表していたへイルには、二つのバージョンがあり、どちらも火山31を搭載し、「ヘイル1」は41時間27分掛けて航続距離約600km、「へイル2」は71時間6分で約1000kmという低速で海中を進んだと主張した。
 北朝鮮は、核兵器をミサイルに限定するつもりはなく、へイル2のように、いうなれば、日本海を渡れるほどの航続距離をもつ、「泳ぐ核兵器」にも、手を出そうとしているのかもしれない。

 

◎激変する世界情勢に乗じる金総書記…「戦争カード」に三つの狙い

 

 

「極超音速IRBMの発射に成功」と主張
▲北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は15日、「1月14日午後に朝鮮民主主義人民共和国ミサイル総局は、極超音速機動型操縦戦闘部を搭載した準中距離固体燃料弾道ミサイルの試射を行った」と報じた。/労働新聞・ニュース1
 北朝鮮は14日に、新型固体燃料ロケットを用いた極超音速準中距離弾道ミサイル(IRBM)の試射に成功したという。北朝鮮側が15日に主張した。音速の5倍以上のスピードで変則機動まで可能な極超音速ミサイルは、北朝鮮の主張が正しければ、北東アジアの安全保障を揺るがす「ゲームチェンジャー」になりかねない。北朝鮮はこの日、南北関係を「最も敵対的な2国家」とし「ちっぽけな火花一つでも巨大な物理的衝突の起爆剤として作用し得る」と主張した。相次ぐ軍事挑発と対南関係断絶で脅威の水位を高めるとともに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)が言及した「大事変」は虚勢ではないというメッセージを相次いで投げかけているのだ。
 二つの戦争(ウクライナ、パレスチナ)に足を取られている米国、反中陣営が勝利した台湾総統選挙後に緊張が高まった両岸関係、中東初のグローバル・サプライ・チェーンの混乱など、揺れ動く国際情勢の中に新たなチャンスを見つけ出そうとする金正恩の「ばくち」が本格化しつつあるとの分析だ。とりわけ、米国でドナルド・トランプ前大統領が選挙に勝利した場合に備え、南との断絶を通した米朝直接取引を狙っているものとみられる。
 北朝鮮によるIRBM挑発は、台湾総統選挙(13日)の直後に行われた。IRBMの射程は3000キロから5500キロで、平壌からおよそ1400キロ離れた沖縄、およそ3500キロ離れたグアムなどが攻撃圏に入る。現在の迎撃網では撃墜が難しく、米国の空母機動部隊も脅かされかねない。両岸の緊張の中で、米国としては神経を使うほかない。北朝鮮は、これを通して中国のさらなる支援を引き出すこともできる。北朝鮮の朝鮮中央通信は、これに関連して「(極超音速ミサイルの)試射は地域の情勢とは全く無関係に行われた」と伝えたが、これは逆に、最初から地域情勢を見据えていたことの傍証だ。
 崔善姫(チェ・ソンヒ)外相を団長とする北朝鮮政府代表団が14日にロシアを訪問したのも、同じ流れで解釈される。ロシアは、北朝鮮から武器を輸入する代価として最新の兵器技術などを伝授してやっており、北朝鮮がタイミングよく兵器開発の力量を誇示し続けているのだ。ロシアのクレムリンは、崔善姫外相がモスクワを訪問した15日、「ウラジーミル・プーチン大統領の訪朝が間もなく実現するだろう」と発表した。金正恩総書記は昨年9月にロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を行った。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は「北朝鮮とあらゆる次元の対話を続ける」と述べた。今月17日まで予定されている崔善姫外相のロシア訪問で、北朝鮮は労働者の海外送り出しを含む新たな支援パッケージを得る可能性が高い。中国に続きロシアが北朝鮮制裁の「抜け穴」役となり、北朝鮮制裁の無力化を加速しているのだ。
 金正恩は、南に向けては「敵対的交戦国関係」だとして「対南政策の根本的転換」を強調している。北朝鮮は韓国を明示的に「核攻撃」の対象に挙げ、戦争の脅しは虚勢ではないということを示そうとしている。トランプ前大統領が米国大統領選レースで先行しており、北朝鮮としては再度、シンガポール・ハノイで存在した談判を通して事実上の核保有国として認められ、北朝鮮制裁の解除を勝ち取ろうとする可能性が高い。トランプ前大統領は否定したが、米国の政治専門メディア「ポリティコ」は「北朝鮮の核廃棄ではなく核凍結の代価として北朝鮮制裁の緩和などを提供する対北アプローチ法を推進する」とも報じた。米国ミドルベリー国際研究所のロバート・カーリン研究員とジークフリート・ヘッカー教授は今月11日(現地時間)、北朝鮮専門メディア「38ノース」に寄稿した記事で「韓半島の状況は1950年6月前半以来、いつになく危険」だとし「金正恩が、1950年に祖父がそうしたように、戦争をしようという戦略的決定をしたと思う」と記した。戦争の脅しを通して核保有国認定などを狙う北朝鮮の戦術が、米国にもある程度食い込んでいるのだ。
 金甲植(キム・ガプシク)統一研究院先任研究委員は、報告書で「韓米日対朝中ロの構図の中で、北朝鮮制裁が無力化され、米国の影響力が衰退していると判断しているらしい」とし「今年4月の韓国総選挙、11月の米国大統領選挙など、大きな政治イベントを控えて韓半島問題の主導権を先占しようとしている」との見方を示した。

 

 

Is Kim Jong Un Preparing for War? - 38 North: Informed Analysis of North Korea