ウクライナ軍、ドローンで地雷敷設 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナ軍、ドローンで地雷敷設 ロシア側の後方脅かす

 

 

 ウクライナ軍はドローン(無人機)に新たな技能を習得させた。地雷の敷設である。
 ウクライナのドローン部隊はクワッドコプター(回転翼が4つのドローン)やヘクサコプター(同6つのドローン)、オクタコプター(同8つのドローン)といった比較的大型のドローンをどんどん飛ばし、道路などに地雷をまくようになっている。
 以前は、兵士がたいていは夜の闇にまぎれてロシア側の陣地のほうへ忍び寄り、手ずから地雷をまいていた。こうした細心の注意を要する任務を、いまではドローンが代わりにやるようになっている。
 地雷の敷設は、その目標がロシア側の陣地と、近くにあるウクライナ側の陣地との間に地雷原を設けることである場合、危険な作業になる。ロシア側の陣地の後方に地雷原を設けるのが目標だとすれば、それこそ自殺も同然の任務だ。
 だが、ドローンの場合はそうではない。
 「ドローンは現在、目標の識別や攻撃、空中からの偵察、擲弾の投下だけでなく、地雷の敷設にも使われている」と独立系の調査分析グループ、コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は最近解説している。「地上に落とされた弾薬は、衝撃で爆発するのではなく、そのまま残って地雷になる」
 CITによれば、ウクライナ軍がドローンで設置している地雷は旧ソ連の古いPTM-3対戦車地雷とされる。PTM-3は珍しいボックス型の筐体に1.8kgの爆薬が詰め込まれている。
 ウクライナ軍はPTM-3のオリジナルの信管を「ジョニー」と呼ぶ特別な信管で換装しているという。この信管は「ジャイロスコープや加速度計、磁気計を備え、地雷が踏まれたり動かされたりすると起爆させる」とCITは説明している。
 ジョニーは「装甲車両、あるいは武器を携行したり防弾服を着たりした兵士が近くを通った際にも作動する」という。米掲示板サイトのレディットには、ウクライナ東部バフムート近郊で最近、ロシア兵がドローンから落とされたPTM-3を拾い上げようとして起爆させてしまい、吹き飛ばされる様子を捉えた凄惨な動画が掲載されている。
 ウクライナ東部ハルキウ州シンキウカを防御するウクライナ軍の旅団は先月、ロシア軍の機甲部隊による攻撃を立て続けに7回も受けたが、その合間に非常に重要な地雷原に地雷を補充していた。これもドローンのなせるわざだったのかもしれない。

 ウクライナ軍のドローンは、海兵隊が南部ヘルソン州でドニプロ川を渡って左岸(東岸)のクリンキに築いた薄い橋頭堡(きょうとうほ)と、ロシア軍の後方をつなぐ数少ない道路にも地雷を落としている。
 ロシアの著名な戦争特派員であるアレクサンドル・スラドコフは、クリンキ方面の戦況に関して「わが軍が前線と後方地域の間を移動するのは困難で危険になっている」とソーシャルメディアで報告している。その一因として「夜間、大型の無人機がわが軍の通る小道や道路に地雷をまき、移動を妨げている」ことを挙げている。
 奇襲という要素は決定的に重要である。CITは「ウクライナ側は、繰り返し使われている小道やわだち、地雷が除去されたばかりの区域など、ロシア側が安全と判断している場所に地雷をまけるようになっている」と指摘している。
 ロシア軍の部隊はいつ、どこで地雷に出くわすかわからない。安全を図るには、ドローンが飛行できる範囲、つまり接触線から15kmかそこらの範囲内にある道はすべて、地雷があるものと想定して行動しなくてはならない。
 つまり、ロシア軍の部隊は、これらの道を通る際にはゆっくり進まないといけなくなる。ウクライナ軍はロシア軍の後方にある道路の一部に地雷を仕掛けるだけで、後方のすべての道路でロシア軍側の動きを鈍らせることができるだろう。
 もちろん、例によってロシア側も同じことをやっている。ロシア軍の第1親衛戦車軍のドローン操縦士は先月、クワッドコプターを用いてPTM-3や、POM、PMN-4各対人地雷、PTM-4対戦車地雷を敷設していることを明らかにしている。
 とはいえ、いくつかの重要な戦域ではウクライナ軍の電波妨害(ジャミング)が非常に効いており、ロシア軍はドローンを使って地雷をまくことはおろか、ドローンを飛ばすことにすら苦慮しているのが実情だ。