ウクライナが徹底的な電波妨害 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナが徹底的な電波妨害、ドローンを飛ばせないロシア軍に多数の死者

 

 

 ウクライナ軍は同国南部へルソン州のドニプロ川左岸(東岸)で、ロシア軍のドローン(無人機)の電波を徹底的に妨害している。
 この電波妨害のせいで、左岸に展開するロシア軍は、昨年10月中旬以来、漁村クリンキに張り付いているウクライナ海兵隊の小部隊を押し返せずにいる。
 ウクライナ軍は「クリンキ近辺に無人航空機(UAV)を大規模に投入している」と、ウクライナのシンクタンクの防衛戦略センターは説明する。「電子線部隊が敵のUAV使用を妨害している」。
 クリンキでの戦闘について、ウクライナと外国のメディアは昨年12月、ウクライナ軍第35旅団の海兵隊員にとって「自殺任務」のようなものだと報じた。だが実際には、持ち堪えられないほどの死者を出しているのはロシア軍の方で、第810海兵旅団第104親衛空挺師団、そして陸軍付属部隊の兵士が犠牲となっている。
 爆薬を搭載したウクライナ軍のクアッドコプター(回転翼が4つの航空機)は、自爆型の一人称視点(FPV)タイプと、夜間飛行する大型の「バーバ・ヤハ」などの繰り返し利用できる爆撃タイプがあり、クリンキ上空とその周辺では四六時中、あちこちに飛んでいる。一方、ロシア軍のドローンは、ウクライナ軍の電波妨害のために、飛び立つことすらできないことが多い。
「ウクライナ軍のUAVは攻撃的で群れをなして活動している」と、ロシアの戦争特派員であるアレクサンドル・スラドコフはソーシャルメディアで説明。「敵はFPVドローンを使って、ロシア軍の車両や兵器、歩兵部隊を攻撃し、我々がいる側の道路や陣地を難なく大砲で狙うため、我々は前線や後方で身動きが取れず、危険だ」と書き込んだ。
「そして夜間には、大型のドローンが我々の進路や道路に地雷を投下し、部隊の動きを妨げている」とスラドコフ。「我々は敵のドローンの射程圏内でウクライナ軍と空中戦を展開する用意ができているが、大規模な電子攻撃によって妨げられている」

 ウクライナ軍がクリンキ周辺に配備している電子戦システムの詳細ははっきりしないが、推測は可能だ。ロシア軍が2014年にウクライナ東部ドンバス地方の上空で始めたドローン作戦を受けて、ウクライナ企業プロキシマスは「ブコベルAD」というトラック搭載型のジャマー(電波妨害装置)を新たに開発した。
 この5万ドル(約720万円)のシステムは、周囲約100kmのドローンを探知することができ、50km程度まで近づくとドローンと地上の操縦士をつなぐ無線にスクランブルをかける。
 ウクライナ軍は2021年には数十基のブコベルADを保有していたと報じられている。ロシア軍の攻撃でそのうちのいくつかは破壊されたが、プロキシマスが代替システムの構築と全体的な戦力拡大に必死に取り組んでいるのは間違いない。ウクライナは、外国の同盟国から入手した詳細不明のジャマーでブコベルADを補強している。
 もちろん、ロシア軍も独自のジャマーを保有している。だが、ウクライナ軍は計画的に大型装置を標的にしている。また、ロシア軍の乗員が戦車や戦闘車両に取り付けているバックパック型のRP-377のような小型の電子戦システムは、数十mの範囲でしか機能しないようだ。
 ソーシャルメディアには、ウクライナ軍のFPVドローンがRP-377を搭載した車両を攻撃するところをとらえた動画が多数出回っている。少なくとも1つのケースでは、ドローンが車両に取り付けられたRP-377そのものを直撃している。
 防衛戦略センターによると、クリンキでの戦いが始まって3カ月近くが経過したいま、ウクライナ軍はドニプロ川左岸に張り付いているだけでなく、「橋頭堡(きょうとうほ)を着実に拡大」しているという。