北朝鮮の対韓政策に変化、「敵対国」として外務省管轄へ組織改編 | すずくるのお国のまもり

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◎焦点:北朝鮮の対韓政策に変化、「敵対国」として外務省管轄へ組織改編

 

 

[ソウル 4日 ロイター] - 北朝鮮は対韓国関係を抜本的に見直し、韓国を実質的に別国であり敵対国として扱うべく政策を変更し、政府組織を改編しつつある。  
 アナリストによると、これは数十年続いた政策との決別であり、今後は北朝鮮外務省が対韓関係を担う可能性がある。将来戦争が起こった場合、韓国に対する核兵器の使用を正当化することにもつながりかねない。
 1950─53年の朝鮮戦争が膠着(こうちゃく)状態で休戦となって以来、両国は互いを諸外国とは異なる方法で扱う政策を実行してきた。
 具体的には、外務省ではなく特別な機関や省庁が南北関係を担い、南北が平和裏に統一して1国2制度となる将来を見据えた政策を遂行してきた。
 しかし北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は年末の党中央委員会拡大総会で、南北共存は不可能だと明言。政府は「敵対国」との関係について「断固たる政策変更」を実行すると述べた。自国軍に対しては、危機に際して韓国を制圧、占領するための準備を命じた。
 韓国統一研究院(ソウル)の上席研究員、ホン・ミン氏はこうした政策変更について、北朝鮮が韓国に核兵器を使用することの正当化に手を貸しかねないと指摘。「平和裏の統一を断念し、外交関係を持たない敵対国として韓国を再定義するのなら、同一民族に対する核兵器の使用という矛盾も取り除かれるだろう」と語った。
<現実を反映しただけか>
 ただ、北朝鮮の宣言は深く分断された両国の現実を反映したものに過ぎない、とみる有識者もいる。
 米スティムソン・センターのレイチェル・ミンヨン・リー氏は「北朝鮮は近年、対韓政策を根本的に変えていくと示唆してきた。2023年12月の党中央委員会拡大総会は、それを確認しただけでなく、正式なものにした」と解説した。
 組織改編の程度は不明だ。金氏の発言は現状をより正確に反映しているだけであり、かねて敵対的な南北関係の大きな変化にはつながりそうにない、と言うアナリストもいる。
 トランプ前米大統領が北朝鮮に「炎と怒り」で対抗する、と述べた17年など、過去に北朝鮮を巡って緊張が高まった局面の後には、緊張緩和と対話の時期が訪れることも何度かあった。18年と19年には金氏と米韓の大統領が会談を行っている。
 韓国・統一省の高官は3日に書面で、北朝鮮はこれまでも共存と統一を「真摯(しんし)に推し進めたことはない」と述べ、金氏の発言は目新しい内容ではないとの考えを示した。
<外務省>
 北朝鮮では伝統的に、労働党の統一戦線部(UFD)が諜報活動やプロパガンダを含む対韓関係を担ってきた。
 しかしスティムソン・センターの北朝鮮指導部専門家、マイケル・マッデン氏によると、いずれ南北対話が再開するにしても、対韓関係を管轄するのは崔善姫外相になりそうだ。
 マッデン氏は「南北統一と対韓政策に関する実質的なアドバイザーとしての彼女の役割は、金正恩氏が19年、金剛山観光地区を視察した時にさかのぼる」とし、崔氏が対韓関係の面で影響力を拡大していく前兆だったと振り返った。
 これまで南北問題でほとんど役割を果たしてこなかったキャリア外交官の崔氏が、韓国に関連する団体の「解体・改革」作業を主導したという事実は、外務省がこれらの組織とその機能を吸収することを意味するかもしれない、と北韓大学院大学(ソウル)のヤン・ムジン学長は語る。
「伝統的に南北関係を扱ってきたUFDと祖国平和統一委員会は、完全に解体されるか、少なくともその役割が大幅に縮小される可能性がある」と学長は述べ、北朝鮮は南を完全に切り捨て、米国とだけ取引することを決める可能性もあると付け加えた。
 マッデン氏によれば、外務省幹部らはこれまで南北問題について助言することはあったが、分かっている限りでは金正恩政権下で外務省・UFD間の幹部の行き来はない。
 どのような変化があろうとも、UFDの主要な諜報幹部が主流から外される可能性は低く、またUFDはいくつかの重要なプロパガンダ放送・ウェブサイトに関する権限を保持する可能性が高いと同氏は付け加えた。