アウジーイウカ攻撃のロシア軍、1平方km占領ごとに1300人死傷 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎アウジーイウカ攻撃のロシア軍、1平方km占領ごとに1300人死傷

 

 

 ロシア軍はウクライナ東部のわずか数kmの1つの戦場でこの2カ月に、ウクライナで戦争を拡大してから最初の2カ月にウクライナ全土で出したのに近い数の死傷者を出した。
 ウクライナ軍の損耗人数はもっと少なく抑えられている。
 ロシア軍は戦争拡大後の最初の数週間以来、途方もない損害を被り、ここへてきて損害はさらに拡大しているが、大きな前進は遂げていない。半面、これほどの損害を出しながらも、ロシアの独裁者ウラジーミル・プーチンの体制が崩壊しそうにないのも確かだ。
 ジョー・バイデン米政権が今週、機密解除された情報評価文書で明らかにしたところによると、ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカのウクライナ軍守備隊に対する2カ月の攻撃で、ロシア軍はおよそ1万3000人の死傷者を出した。アウジーイウカはロシアが支配するドネツク市の数km北にある町だ。
 一方、米国防総省は先に、ロシアがウクライナに全面侵攻した2022年2月からウクライナが半年後に反転攻勢を始めるまでに、ロシア軍の死者は2万人、負傷者は5万〜6万人にのぼったと推定している。
 機密解除された文書によれば、戦争拡大から22カ月後、ロシア軍の死傷者は31万5000人に膨れ上がった。アウジーイウカでの犠牲者もそれに含まれる。ロシア軍の兵力は戦争拡大時点で現役と予備役を合わせ290万人だった。その後、兵士を40万人募集している。
 ウクライナ軍の死傷者については、ニューヨーク・タイムズ紙が今年8月、米当局者の話として20万人近くと報じていた。ウクライナ軍の兵力は2021年末時点で110万人で、以後130万人に増えている。
 米政府によるロシア軍の死傷者数の推計は多すぎると思えるかもしれないが、ウクライナ側による見積もりはもっと多い。ウクライナ軍の集計では、2022年2月から2023年12月までのロシア軍の人的損失は約34万人となっている。
 ロシア軍の損害の大きさについては傍証となるような証言もある。アウジーイウカ周辺で戦うあるロシア兵は最近、攻撃を始めた時には仲間の兵士が70人いたが、うち56人を失ったと語っている。

 ロシアの損害に関してとりわけ愕然とするのは、その見返りである。ロシア軍はウクライナ軍が今年6月上旬に始めた反攻を地雷原で遅滞させ、ウクライナ軍の旅団を2つの主攻勢軸で15〜20km程度の前進に抑え込んだ一方、この間、自軍側も大きな前進はできていない。
 実のところ、ロシア軍にとっては、膨大な犠牲を出して「肉挽き機」状態となっているアウジーイウカ戦が、5月のドネツク州バフムート制圧以来、最も成功した作戦になっている。とはいっても、ロシア軍の連隊はアウジーイウカの北と南で1.5km程度しか前進できておらず、獲得した領域も10平方kmほどにとどまる。アウジーイウカ自体は落とせていない。
 ロシア軍はアウジーイウカ周辺で、支配領域を1平方km広げるごとに1300人の死傷者を出している計算だ。大半はウクライナ軍の砲兵旅団の餌食になっている。ウクライナ軍の砲兵将校、コールサイン(無線通信時のニックネーム)「アーティ・グリーン」は、各旅団は突進してくるロシア軍の縦隊を互いに競い合うように砲撃していると述べている。
 ロシア軍がウクライナでウクライナ軍よりもはるかに多くの死者を出し、その見返りも小さいのは明らかだ。だが、この不均衡さが問題になるのかどうかはそれほど明らかではない。
 ウクライナは民主主義国であり、その主要な支援諸国もそうだ。これらの国の決定は民意に従う。一方、ロシアは名ばかりの民主主義国であり、プーチンに逆らうのは違法も同然で、信頼できる対抗者はたいてい死ぬか投獄されている。
 ロシアの主要な仲間である中国、イラン、北朝鮮も権威主義国である。暴力をともなう革命でも起きない限り、これらの国で世論はあってないようなものだ。「ロシアにも不満をもっている人はたくさんいるが、それを吐き出すのはますます難しくなっている」と、ジャーナリストのローランド・バソンはインターナショナル・ポリティクス・アンド・ソサエティー誌への寄稿で書いている。
 ロシアは何万人も徴募し、犠牲をいとわずウクライナに送り込むことができる。人的損失がかさんでも、戦争努力が損なわれることはない。他方、ウクライナ軍の反攻が予想ほど進んでいないことで、米議会のロシア寄りの共和党員らは、今後の対ウクライナ支援の拒絶を正当化するのに必要な理由を手にした。
 プーチンは最近、ウクライナに「未来はない」と言い募った。「われわれには未来がある」とも。だが、プーチンの言う「われわれ」とは、自身がウクライナで起こした戦争で命を落とした大勢のロシア人のことではない。プーチンにとっては、ウクライナ人の命がどうでもいいように、ロシア人の命もどうでもいいものなのだ。