レオパルト1A5戦車がウクライナ東部で戦闘開始 | すずくるのお国のまもり

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◎レオパルト1A5戦車がウクライナ東部で戦闘開始 強みは射撃能力と機動性

 

 

 フランスの通信社AFPによると、ウクライナ軍のドイツ製レオパルト1A5戦車は、雪の降るウクライナ東部ですでに戦闘を経験している。「われわれは戦闘任務に就いている」。第44独立機械化旅団に所属していると思われるフリホリーというレオパルト1A5戦車の乗員は、AFPにそう語っている。取材が行われたのは今週とみられる。
 AFPが話を聞いた戦車兵らは1980年代製のこの戦車に満足しているようだ。重量40トン、乗員4人のレオパルト1A5は砲塔の厚みが70mmほどしかなく、ロシアがウクライナで拡大して1年9カ月たつ戦争で使用されている戦車としては、おそらく最も装甲の防護が弱いにもかかわらず、だ。
 AFPの報道からは、ウクライナ軍の戦車兵がどのようにレオパルト1A5の防御力の低さをカバーしているかもうかがえる。ビタリーという乗員はこう話している。「(レオパルト1A5では)3.5から5kmくらい離れた目標に照準を合わせられる」
 ドイツの戦車メーカー、クラウス・マッファイ(現クラウス・マッファイ・ヴェクマン)はレオパルト1A5の主砲に、製造当時、世界有数の性能を誇った戦車砲を採用した。英ロイヤル・オードナンス(王立造兵廠)が手がける「L7」105mmライフル砲である。
 最新の120mm砲に比べるとさすがに威力は若干劣るものの、40年たった今もL7はなお有効だ。L7の射程はおよそ3.5km。ロシア軍の戦車の技術では「わが軍と長射程の撃ち合いはできない」とビタリーは述べている。
 もっとも、レオパルト1A5を優れた射撃兵器にしているのは砲自体ではない。それは砲とその安定装置、砲手が用いる光学機器、コンピューター化された射撃統制システムなどを含む、この戦車の統合戦闘システム全体だ。
 ドイツ軍やデンマーク軍に配備されていたレオパルト1A5では、射撃統制システムにEMES-18が採用されている。EMES-18は、レオパルト1A5よりもかなり重いレオパルト2でも引き続き使われている。一方、ウクライナに供与されるおよそ200両のレオパルト1に30両含まれる元ベルギー軍のレオパルト1A5には、独自の射撃統制システムであるSABCAが搭載されている。
 EMES-18は戦車の射撃統制システムとしてはいまだに最高の部類に入るものだ。EMES-18はレーザー測距器と弾道計算機を兼ね備える。静止した状態で砲の照準を合わせるには、砲手は光学機器をのぞきこんでジョイスティックで十字線を目標に重ね、レーザーを作動させてコンピューターに射程を計算させる。それから射撃を行うことになる。

 この射撃統制システムでは、コンピューターがレーザーから得た射程データに基づいて砲の仰角を自動調節する。コンピューターによるこうした支援のおかげで、砲手は適切な仰角を手作業で計算せずにすむ。コンピュータの計算速度も速く、レーザーの反射を読み取ってから砲を調整するまでに1秒しかかからない。
 レオパルト1A5は遠距離から精確に射撃できるので、乗員は砲弾を数発撃ったあと、ロシア側が長射程兵器で照準を合わせる前に、素早くその場を立ち去ることができるとフリホリーは説明。さらに「われわれは車両1両で離脱できます」とも述べ、レオパルト1A5は戦車1両での襲撃も可能だと示唆している。
 ウクライナ東部の天候は現在、雪が多く、じめじめし、気温も低い。ウクライナ軍でレオパルト1A5を運用する最初の旅団とみられる第44旅団はこの方面で、行き詰まりつつあるロシア軍の攻撃に対しておおむね防御的な戦いをしてきた。レオパルト1A5は最終的に数個旅団に配備される可能性がある。
 ルスランという戦車操縦士の話では、830馬力で高速のバックギアも備えたレオパルト1A5はこうした気候条件でもよく働くという。従軍する前はトラクターを運転していたというルスランはAFPに、この戦車は「とても操縦しやすい」とも語っている。
 装甲の薄いレオパルト1A5に乗り組むウクライナの戦車兵にとって、こうした扱いやすさは好都合だ。爆発反応装甲などを追加しない限り、レオパルト1A5は重機関銃以上のロシア軍の兵器に対してきわめて脆弱(ぜいじゃく)だと考えられるからだ。
 レオパルト1A5に乗るウクライナ兵の多くを訓練したデンマークの教官たちは、敵の砲火などをかわすために素早く頻繁に動くことの重要性を強調していた。ある教官は、レオパルト1は「走行と射撃に適している」とも評している。