「自衛隊ドローン」の性能と実力 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎「メリットしか見当たらない」戦場の”ゲームチェンジャー” 最新「自衛隊ドローン」の性能と実力
 陸自は「スキャンイーグル」ほか多種多彩 空自の「グローバルホーク」は36時間連続で飛行 海自 「シーガーディアン」は無人攻撃機からの転用

 

 

 ウクライナ軍のドローンが塹壕(ざんごう)を逃げ惑うロシア兵を空から追跡。ある程度、数が集まったところで爆弾を投下して一網打尽にする――こんな映像が、衝撃をもってSNSを駆け巡っている。
 パレスチナでも、ハマスの数万円のドローンが10億円を超えるイスラエル軍の戦車を破壊する場面が散見されるなど、もはや近代戦はドローンがなくては成り立たない。戦場の″ゲームチェンジャー″となったドローンの戦果と、費用対効果の高さを目の当たりにした防衛省はようやく、本格配備へ舵を切った。
 陸海空で最も早くドローンを導入したのが陸上自衛隊だ。’80年代に富士重工(現SUBARU)と開発に着手し、’02年には遠隔操縦観測システムFFOSの量産化に漕ぎつけている。
 当初は30㎞先まで飛んでいく野砲(大砲)の着弾の様子を確認するのが目的だった。これを無人偵察機として改造したのが無人偵察機システムFFRSで、’07年に配備が開始されたが、同機の飛行には機体運搬車、統制装置、レーダー装置一式と、かなりの車両や装備が必要になるというデメリットがあった。
 そこで陸自は民生品のドローンや諸外国軍のドローンの研究に注力。ヤマハの農薬散布用農業用ドローンを無人偵察機として使用し、プロペラで飛行する民生品ドローンの発展型「スカイレンジャー」を’18年から配備した。これらは低空専用で飛行時間も数十分。継続した長時間の偵察行動を行うため、翌’19年に中空域用無人偵察機「スキャンイーグル2」の配備を始めた。
 開発したのは米ボーイング・インシツ社。全長1.7m、翼幅3.1mと成人男性ほどの大きさのボディにエンジン、尾部にプロペラを持つ。戦闘機は1時間飛ぶのがやっとだが、「スキャンイーグル2」は18時間連続飛行が可能。最大速度は時速約150㎞で最大高度は約6000m。機首に高画質カメラを備える。

〇偵察衛星なみの能力
 今年1月23日、航空自衛隊の三沢基地(青森)に新編された「偵察航空隊」に「RQ-4Bグローバルホーク」が配備された。米ノースロップ・グラマン社が製造している全長14.5m、翼幅約40mの大型ドローンで、36時間連続飛行が可能。米軍が’04年から運用を始め、イラク戦争にも投入されており、その能力は偵察衛星なみと言っていい。
 たとえば――台湾有事が発生との一報を受けて三沢から東シナ海へ飛んだ「グローバルホーク」は、1万8000mの高高度から中国艦隊および爆撃機等の編隊を俯瞰(ふかん)する形でキャッチ。機首部分の巨大アンテナ、機内及び機体下面の各種レーダーやセンサー等で微弱な電波をとらえ、軍艦や爆撃機の数、速度、通信の内容までを、総理官邸および防衛省とリアルタイムで共有することができるのだ。
 海上自衛隊も今年から偵察用ドローンを導入した。まだ試験的運用だが、5月9日から八戸基地(青森)を拠点として、「MQ-9Bシーガーディアン」を配備している。米GA社が開発し、米空軍が運用している攻撃型無人機「MQ-9リーパー」をベースとしたドローンで、翼幅24mとかなり長い翼を有している。胴体も約12mと長く、かつ細長い。
 機首下部に搭載された可視赤外線カメラは、富士山の高さからでも地上を走る車の車種を特定することが可能だという。胴体の下にある大きなふくらみには海洋監視用レーダーが搭載されている。

 偵察能力のみならず、「シーガーディアン」はその運用方法にも特徴がある。
 運航は海自の指示を受けたGA社が担当する。パトロールが主任務で攻撃等の行動を伴わないため、″任務のアウトソーシング″が可能になる、というわけだ。少子高齢化に伴い、各部隊の維持が難しくなっていくなかで、″任務のアウトソーシング″は防衛省が抱える重要課題だ。
 現在、P-1及びP-3C哨戒機が担っている警戒監視の一部を、海自は将来的にドローンに任せる腹積もりだ。
 自衛隊では陸海空とも、偵察用の各種ドローンがようやく揃いつつある状況だが、今後はさらに踏み込み、攻撃型ドローンの配備も進めると見られている。
 たとえば、陸自には機関砲やミサイルを搭載したAH-1SやAH-64Dといった戦闘ヘリが配備されているが、近い将来、全廃する方針であることを政府は昨年12月に閣議決定した「安保三文書」で明らかにした。戦闘ヘリの後継者として期待されているのがドローンなのだ。
 防衛省は配備計画の詳細を明らかにしていないが、「パイロット不足、航空機不足を解決し、かつ確実にピンポイントで敵を殲滅(せんめつ)できる攻撃型ドローンにはメリットしか見当たらない」というのが現場の声だ。日本の国防はロボット――無人機に託されることとなりそうだ。