◎北朝鮮、ゴルフ場の人造湖から弾道弾6発を同時発射…韓米は探知できず

 

 

 北朝鮮が今月9日、平安道江西郡のゴルフ場にある「台城湖」という湖の一帯から「新型戦術誘導武器」6発を同時に発射し、翌10日にそのときの様子を公開した。今回のミサイルは飛行高度が通常の短距離弾道ミサイル(SRBM)より低く、距離も短かったため、韓米両軍当局は正確に探知できなかったことが分かった。北朝鮮が、韓米の監視網を回避する新型ミサイルを続々と開発しているのだ。
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は9日、西部戦線の火星砲兵部隊の火力襲撃訓練を現地指導した。朝鮮中央通信が10日、こうした内容と報じると共に複数の写真を公開した。訓練場で金正恩総書記の娘ジュエさんが視察している様子も捉えられた。写真を見ると、台城湖中央部に細長く突き出た地形で6台の移動式発射台が一列になって停まり、各1発ずつ、計6発を同時に発射した。なお同通信は、ミサイルの飛行距離や高度などは報じなかった。韓国軍の合同参謀本部(合参)の関係者は「北のミサイルの飛行軌跡をリアルタイムで探知した」としつつ、「飛行時間は非常に短かった」と語った。
 北朝鮮が「新型戦術誘導武器」と表現した弾道ミサイルは、高度2万5000メートル前後で西海に向けて120キロほど飛んだと推定される。これは、韓国軍が対応に重点を置いているKN23(北朝鮮版イスカンデル)、KN24(北朝鮮版ATACMS)、KN25(超大型放射砲〈多連装ロケット〉)など、北朝鮮の他のSRBMより高度が低く、飛行距離は短い。近距離弾道ミサイル(CRBM)に似た軌道だという。合参は今回の北のミサイル発射を巡り、初期段階では「1発を発射した」としていたが、2時間後に「数発」と訂正していた。
 韓国軍は、発射地点の把握にも時間を要した。韓国軍は当初、発射地点は「南浦」だとしたが、実際には南浦から北に10キロほど離れた人工湖の台城湖であることが判明した。湖の中央部へ半島のように突き出た地形に移動式発射台が設置された状態で、夕方の時間帯(午後6時20分)に奇襲発射し、正確な探知が難しかったという。台城湖周辺には、北朝鮮が2020年に再オープンした「平壌ゴルフ場」が造成されている。北朝鮮が、対北制裁を避けて観光地として開発したゴルフ場を、対南打撃ミサイルの軍事訓練場として活用したものとみられる。
 軍事専門家らは、今回のミサイルは固体燃料ベースで奇襲発射が可能であり、戦術核弾頭も搭載できると分析している。韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ局長は「北朝鮮は、今回の訓練目的が『西部戦線の敵(韓国)作戦飛行場襲撃』だと明かした」とし、「空中戦力が劣勢な点を克服するため、韓米の空軍基地を先制攻撃する訓練をしている」と語った。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者