◎米海兵隊ロケット砲を空輸 離島防衛見据え共同訓練―陸自
陸上自衛隊は7日、米海兵隊との共同大規模訓練「レゾリュート・ドラゴン21」の一環で、米軍の高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)を沖縄の基地から空路で八戸駐屯地(青森県)まで運ぶ様子を公開した。国内の訓練でハイマースを空輸展開するのは初。南西諸島の離島防衛などを想定し、陸自の地対艦誘導弾(SSM)との連携体制の迅速な構築が目的とみられる。
訓練は海兵隊の新たな作戦構想「機動展開前進基地作戦」(EABO)と陸自の領域横断作戦を踏まえた日米連携の向上が主眼。EABOは小規模な部隊を島しょ部に分散して速やかに展開し、対艦・対空ミサイルなどによる攻撃拠点を確保する構想で、陸自がEABOに基づいた訓練を行うのも初めて。
この日は、米軍嘉手納基地から米空軍のC130輸送機が約4時間かけてハイマースと海兵隊員を運び、陸自のSSM部隊と合流した。8日以降、共有した情報を基に射撃目標を調整する対艦戦闘訓練などを行う。
米海兵隊ロケット砲を空輸 離島防衛見据え共同訓練―陸自:時事ドットコム (jiji.com)
<独自>米軍が最新鋭砲空輸へ 離島防衛を想定
(沖縄県の米軍キャンプ・ハンセンで訓練する高機動ロケット砲システム「ハイマース」=9月30日)
海兵隊がハイマースの長距離空輸を行うのは、陸自との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン21」。12月4日から17日まで、八戸演習場(青森県)や矢臼別演習場(北海道)などで陸自約1400人、海兵隊約2650人が参加する。
訓練では、海兵隊部隊がC130J輸送機で米軍普天間飛行場(沖縄県)から海上自衛隊八戸基地までハイマースを空輸する。海兵隊はこれまで日本国内ではハイマースの長距離移動を艦艇で行ってきたが、EABOが展開スピードを重視することを踏まえて空輸を行い、陸自のSSMと標的の調整などを行いながら連携を確認する。
EABOはミサイルなどを装備した小規模部隊が分散展開し、中国などのミサイル網に対抗する作戦構想。在沖縄海兵隊はインド太平洋地域でローテーション展開しており、有事の際に遠隔地から緊急展開する能力が重要となる。
日本側は離島防衛などでEABO部隊の来援に期待する。3月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)共同声明で「実戦的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要」と明記されたことを踏まえ、自衛隊としては初めて、EABOとの連携を訓練の目的に据えた。
平成30年末に改定した防衛計画の大綱では陸海空の領域に宇宙・サイバー・電磁波領域を融合させる「領域横断作戦」を打ち出している。陸自の吉田圭秀幕僚長は18日の記者会見で「領域横断作戦と米海兵隊のEABOの連携を図ることが最大の焦点だ」と述べた。
◇■遠征前方基地作戦(EABO) 米海兵隊が策定を進める作戦構想。EABOはExpeditionary Advanced Base Operationsの略。中国などが高精度の長距離ミサイルを展開する中で、敵の射程内にセンサーやミサイル、補給拠点などを分散配置して「島のバリア」を形成。敵の標的を分散させると同時に敵の艦艇や航空機を攻撃。従来の海兵隊が基本としてきた大規模部隊による上陸作戦から転換を図る。