「看板建築 昭和の商店や暮らし」を読みました。

 

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私は本書の表紙に、地元で見慣れた洋食店「パリ―」が載っていたので、興味を持ちました。

私の地元、秩父からは「パリ―」と「たから湯」が紹介されていました。

 

「看板建築」とは

「看板建築」とは、昭和初期の関東大震災復興時に東京で数多く建てられた商店建築。建物自体は和風建築だが、正面をまるで一枚の看板のように装飾したことから「看板建築」と呼ばれるようになったそうです。

 

昭和初期に建てられた庶民的な商店。そこに当時の時代背景をうかがわせるようなデザイン性が感じられる建物があります。本書では、東京近郊に点在する「看板建築」が数多く収められて、特に10の特徴的なお店では店主のインタビューも掲載されておりました。

 

【私の感想】

帝国ホテルや東京駅に代表されるような「近代建築」。それには、日本に洋風の文化が入ってきた頃の独特の美しさがありながら、どこか厳かな雰囲気も感じられます。私も深谷で「誠之堂」などを観に行き、その魅力に触れてきました。

しかし同じ時代に作られた建築でも、この「看板建築」は庶民的で、地域や店主らの暮らしに根差している感じ。それがまた、違った魅力を生んでいます。特に、「看板建築」たちが現役で活躍している様子がいいですね。

 

昭和11年創業「たから湯」

 

店主中澤道三さんのインタビューより。

中澤さんの母親が昭和11年に開業、兄夫婦が2代目を継ぎ、兄が亡くなったことから、学習塾で英語の先生をしていた中澤さんが3代目を受け継いだ。

 

「ふろの空間っていうのは、ざっくばらんだよね。そういう場所はどっかにないおまずいような気がするな。最近はみんな内向きで自分のことばかりに一生懸命で忙しくてさ。仕方ないのかもしれないけど、だからこそみんなでざっくばらんになれる空間はどこかにあったほうがいいよ。そういうとき風呂ってのはいいと思うんだよね」

 

【私の感想】

わが家からも徒歩で行ける距離ですが、実際に入ったことはない銭湯です。息子と散歩がてらにいってみましたが、営業してなさそうでした。

 

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本書の解説にみあるように、シンプルな外観ながら、「多可ら湯」をくずした丸みを帯びた字体が可愛らしい屋号が掲げられていました。中に入って見られないのは残念ですが、中は昔ながらの富士山の絵が掲げられたお風呂があるらしいです。

 

コロナ禍もあって、まずます「ざっくばらんな空間」はなくなってしまいます。銭湯は、日帰り温泉とはまた違った魅力があると思います。私も入れるうちに、生き残った銭湯に浸かってみようと思います。

 

昭和2年創業「パリ―」

 

店主・川辺義友さんインタビューより

「店自体は、いつからやっているかわからないんだ」

火事で焼けたことをきっかけに、繁華街の番場通り沿いで昭和2年に店を再建。板前だった父親とその手伝いで母親が厨房に立っていた。

 

店名の由来を尋ねると、

「わかんねえんだよ。たぶん父親がつけたんだろうけど」

「昔はさ、向こうに『ロンドン』っていう店もあって、『キング』というとんかつ屋と『世界』っていう肉屋もあって、当時はそういう外国の名前を付けるのが流行ったのかもしれないねえ」

 

【私の感想】

この店は私も何度か食事をしたことがあって、本書でインタビューを受けたご主人のつくるオムライスを頂いたことがあります。店内も昭和の当時そのまんま残っているという雰囲気です。

店名の由来のエピソードも、なんとなくゆるい感じも可愛く感じました。昭和初期の「欧米に追い付け追い越せ」という時代に名付けられたと考えると、また味わい深い名前です。

建物とともに、店内の雰囲気や店主の存在も含めて貴重なものだと思います。

 

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ありがとうございました。