田渕義雄「森暮らしの家」を読みました。

 

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地元の図書館で目について、これからの私の休日に参考になると思ったので。

 

著者は、八ヶ岳に程近い金峰山麓の山里に居を移し30年、作家活動と自給自足的生活をされた方だそうです(故人)。私は、庭で小屋づくりや堆肥作りをしてみたりして、休日の庭時間を楽しみ始めたところなので、田渕さんの暮らしを大いに真似したいと思っています。

 

ソロー「森の生活」を読んで

 

・田渕氏は、「森の生活」を読んで、ソローの小屋生活に憧れた。そして、東京都国立という郊外から、妻と共に、その山里へ引っ越した。

 

・ソローは、年間34ドルの生活費で、森で暮らした。ソローや宮沢賢治を語る人は、彼らを聖人のようにして語るのが好きだ。だが本当は、彼らは快楽主義者だったのではないだろうか。人生は楽しむためにあるという生活態度であったろう。今にして思えば、それは享楽主義的な自然生活のための山小舎のようなものだったのではないだろうか。

 

ソローのキャビンは2年2カ月を暮らすだけにしては案外贅沢なものだった。ソローは道楽息子だったのである。その点、著者の家は、よりシンプルなものなのです。

 

 

【私の感想】

私もソロー「森の生活」を読んで、憧れている部分があります。田渕さんがスゴイのは、それを本当に実現し、しかもソローのように2年で終わりにすることなく、何十年も、そして亡くなるまで、山里暮らしを楽しんで過ごしたということ。冬の寒さのなか、薪ストーブで暖を取る生活は、ある意味贅沢で、道楽としてやる類のこと。決して、お金の節約でやることではありません。本当に楽しんでいればこそ、しかも奥さんも一緒に!

 

田渕さんは、山里での手作り生活をしながら、作家として、家具製作者や園芸家として情報発信し、多くの方に影響を与えました。田渕さんのような発信力を身につければ、その楽しんでいるライフスタイル自体が誰かの役に立てるのです。私は、芸能人の所ジョージさんやヒロミさんをイメージしましたが、暮らしを楽しんでいるなぁというふうに感じました。

 

新築された家は、二十五年経ってやっと住み心地のいい家として完成する

と、いうのが私の見識だ。家は建ったその瞬間から、朽ちていくか、そうではなくて、かえってよりよくなっていくかのどちらかである。家は生き物だ。家に現状維持ということはない。

 

この山小舎を愛している。それがどんなに安普請であれ、家は愛されることで日々生まれ変わる。

 

「山小屋風の板張りの家を建ててください」といって、この家を建ててもらった。その後木工を勉強するようになり、ハウジングに興味を持ち、この家をリノベイション(改築)してきた。いまでも年ごとに進化し、住みやすくなっている。

 

ソローは「森の生活」でこう書いている

「われわれは、自分の家を自分で建てる歓びを、いつまで大工任せにしておくつもりだろうか」

 

【私の感想】

田渕さんは自ら改築を繰り返し、家を進化させました。しかも、家も庭も独学で学んでコツコツ積み上げたというから、ソローよりスゴイです。そして、田渕さんの文章の面白さと、カッコつけずに自己開示している感じが心に響きます。自分でもできるような気持ちになってくるから。私はローンで建てた自分の家を自ら改築するほどの度量はまだありませんが、小屋づくりから「毎年進化させる」という意識で、楽しみたいと思いました。

 

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ゴミになるな、土になれ

 

私は何も考えないで、ひたすらコンポスト(堆肥)を作り続ける。わたしにとって園芸は、菜園や花壇の植物が奪った肥沃な土を、堆肥として庭にかえしていくことである。

それはとめどない繰り返しとも思える行為だが、それでいいのだ。土への献身。それが園芸家の仕事だと思っている。

 

枯れ葉、除草した草、野菜くず、台所のゴミ、木工室のおがくず、薪ストーブの灰。それらをすべて混ぜ合わせて堆肥化し、庭にかえす。自然が作ったものに、無駄な物は一つもない。卵の殻や貝殻や魚の頭や骨は、薪ストーブで焼いてやれば、きれいな灰になり、植物を元気にする。

 

「ごみになるな!土になれ!」

そう叫びながら、堆肥をホークで切り返して、その発酵と腐食を促す。すると、堆肥の山がこう応える。

「わかった!きみもな」と。

 

【私の感想】

田渕さんの文章は、読んでいて楽しくなるし、田渕さん自身が楽しんでいるのが伝わってきます。園芸も、木工も、薪ストーブも、ものすごく手間と時間がかかります。でも、それがいいのかもしれません。あくまで「楽しいからやる」っていう感じ。ストイックに節約したり、仙人のように自らを高めようというのでもない。私も、休日には園芸や木工を楽しもうと思っていたので、田渕さんのスタンスが参考になりました。

情報発信しようとすると、かっこつけようとしてしまいます。

 

私は、寒いのをガマンするのは嫌、スマホなどの便利なツールを手放すのも嫌。でも、田渕さんから伝わってくる暮らしの「楽しさ」は、ソローよりもわかりやすく伝わってきました。

 

ありがとうございました。