マーク・ボイル著「ぼくはお金を使わずに生きることにした」を読みました。

 
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本書は、Amazonで「あなたのおすすめの本」と表示されていて、読んでみたくなりました。私が「なるべくお金を使わない生活」を習慣にしていこうと思っていることに加え、最近はソローの「森の生活」、Jomonさんこと雨宮国広さんの本を読んで、原始的な生活に興味があったので。

 

本書は、まさにお金版の「森の生活」です。著者のマーク・ボイルは、丸一年、金銭の授受を全くしないで生活。その後2年半続けたようです。彼の生活スタイルは、野草を摘んで食べ、ゴミ箱を漁り、コンポストトイレなど、環境にやさしくて「持続可能な生活」になっています。

 

このカネなし生活は、単に「世捨て人」のようになるのでなく、お金のために続く「競争社会」を変えようとする取り組みです。お金のやりとりをしないでも、人と関わって「分かち合うコミュニティー」を作ろう、と。「競争社会」から「分かち合うコミュニティー」へというのも、人類が原始に返る試みのようにも思えてきます。

 

恋愛問題

 

お金を使わずに暮らすというと、まず物質面の困窮が浮かぶ。だが、精神面や感情面も非常に苦しかった。

 

実験開始前に付き合い始めたクレア。彼女は「喜んで協力する」と言っていたが、別れることになる。ボイルは、彼女の車に同乗してガソリン燃料を使うことに、「説得力に欠ける」と思うようになり、彼女の目にはそれは「やりすぎ」と思えるようになる。

 

理想のいくばくかを犠牲にしても、週末は彼女とベッドでのんびり過ごすべきなのか。そう自問した。しかし、汗かき仕事を再開しないと、秋以降の収穫がなくなってしまう。この生活の皮肉さが浮き彫りになった。会ったことすらないない人のために時間をさいておいて、多忙を言い訳に、自分にとって本当に大切な人をないがしろにしていたなんて。

 

自分自身の生き方は、非常に個人的なジレンマも突き付けてくる。ぼくはこういう生き方を選び取ったけれど、今後もこの生活を続けていくと言った場合、それでもぼくと付き合ってくれる女性がいるだろうか。

 

【私の感想】

お金を使わない生活は、身の回りすべて自給自足。それで恋人や家族を作っていくには、ものすごくハードルが高くなります。現代社会に暮らし、パートナーや家族と折り合いをつけて暮らすのは難しいことです。ボイルさんは、自らの実体験を通じて、ユーモアを加えながら教えてくれます。

 

富と健康は比例するか

 

春を迎えるころまで、10代前半の頃のように体調が良いと感じるようになり、体重も12キロ以上増えた。まさに望み通りだった。どんな食生活を選んでも、それが正解だったかは外見と行動で判断されるから。

 

子どもの頃からの酷い花粉症は、漢方薬で症状が治まっていた。その漢方薬も今年は買うわけにはいかない。野草の本を参考にして、西洋オオバコを採取。ティーポットに入れてお湯を注ぐ。毎日コップ一杯を飲み続けた。飲みにくい人はソーダ水を加えるとよい。ぼくはそのままでも平気だった。

 

石油と石油製品を一切使わずに過ごすと、最初は疲労感と気分の落ち込みに悩まされた。近隣で有機栽培されたナッツや大豆だけでは、タンパク質、栄養素、ミネラルの代わりが見つからなかったからだ。栄養士に相談したところ、必須アミノ酸のトリプトファンが欠乏していることがわかった。そこで、トリプトファンを豊富に含む食べものを探した。からし菜、野外採取したヘーゼルナッツ、海草、ブロッコリー、ケールなど。何週間かすると、調子を取り戻した。体内にかつてないほどに気力に満ち溢れ、睡眠の質も向上した。

 

【私の感想】

お金を使わない生活でも、栄養を保てることを実証しています。しかも、野草やナッツなどから。著者のこだわった「化石燃料不使用」に則りながら。

花粉症も薬も飲まずに、野草で治しています。その徹底ぶりは凄まじいです。

食べるものも相当に気を使っています。ただ、我慢するだけでなく、栄養不足で、心を衰えさせないように、気を配っていてカッコいいと思いました。私も、心が弱りやすいところがあるので、自然なものから良い状態を保つ術を身につけたいと思いました。

 

スローライフ

 

何をするにも時間がかかる。衣類の洗濯にしてもそう。以前なら、汚れた服をまとめて洗濯機に投入して、すんだら取り出して、ヒーターの上に広げるだけ。でも今はちがう。洗濯の前に石鹸を作らなければならない。まず火をおこすのに木を拾って、自転車で運ぶことから。

一杯のお茶を淹れるのに20分。ときには飲むのをあきらめた方が、気が休まる。トイレに行くのも時間を取られる。まずあたりに人影がないことを確かめなければならない。

 

大自然のなかで、孤独をまぎらわすだけの日々を送っていたわけではない。街で無料の映画上映会もあったし、ほとんど毎週、フリースキルのつどいに出かけていた。こうした集まりは、面白くてためになる上、共同作業している実感も与えてくれる。

 

スローな生活には時間がかかる。でもリビングと呼ばれる部屋でテレビのリアリティー番組に時間を費やすよりは、自分自身の生活のために時間を費やすほうがずっといい。長い目で真に持続可能な生活を送りたければ、こうするしかない。

 

【私の感想】

洗濯、食事など、ひとつひとつに手間と時間がかかる。現代は、機械でそれらを済ませる。出来た時間は、スマホやテレビを観ている。それは、地球レベルで考えれば愚かなことかもしれない、と思えてきます。

 

身の回りにお金を使わずに手間をかけること。それはケチではなくて、持続可能な社会づくりなのかもしれない。そう思わせてくれます。

私が、今まで「可燃ごみ」で捨てていた庭の雑草を使って、堆肥を作って花を育てるのも、小さな循環を感じられて嬉しく思っています。そんなことも、繋がって考えられてきました。

 

マーク・ボイル氏のチャレンジは、単にカネなし生活の笑い話でなく、私が日常に取り入れるべきヒントがたくさん詰まっていると思いました。

 

ありがとうございました。