鏑木毅著「プロトレイルランナーに学ぶ やり遂げる技術」を読みました。

 
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鏑木さんは、トレイルランナー。山道を走るレースに挑み続けることをプロとして生業にされている方です。

私は鏑木さんのチャレンジや語る言葉に大いに力をもらっています。著書「究極の持久力」や「マインドセット」についても、以前のブログに書かせていただきました。

 

 

 

 

 

今、私が取り組み始めた仕事で怖気づいている自分がいました。そんな私に気合を入れようと本書を読んでみることにしました。

 

およそ100マイル(168キロ)の山道を1昼夜に渡って寝ずに走り続けるという、化け物のような世界最高峰のウルトラトレイルレース「UTMB」。その「UTMB」で、鏑木さんは3位になった実績をお持ちです。心身ともに最も過酷な世界で自分の力を発揮できた鏑木さんの言葉から、私が何を受け取れるでしょうか。

 

意図的に自分の限界に挑戦する

 

160キロを走るという行為には、修験道の苦行にも似た面があります。「悟りを開く」というような大それた目的はありませんが、レースを終えると、自分のバージョンが明らかに変わっていることがあります。

 

限界を超えた先に待っているのは、生まれ変わった自分です。

 

仕事を通じて成長したい、生きている意味を見つけたいという人は、いまの力でラクにできることだけしていると、やがて伸びしろがなくなります。

 

自分を追い込んで、能力の限界に挑む。それが自らの能力をストレッチして、今までとは違う次元の人間になれるのです。

大きく飛躍するためには、意図的に自分の限界に挑戦することも必要なのです。

 

【私の感想】

私の仕事上のチャレンジは、鏑木さんの「限界を超えたチャレンジ」に比べたら、恥ずかしいような小さいもの。いまの力でラクにできるほうを選んでいては、飛躍はない。意図的にビビってしまうようなチャレンジをするんだ。私はそう受け取りました。私が怖気づくような場面は、むしろ自分の力を伸ばすチャンスです。気合、入りました。

 

修羅場をくぐることでしか、自分のバージョンアップはできない

 

心を鍛えるにはどうしらよいか。

心を鍛えるには、真剣勝負の場が必要です。修羅場をくぐることでしか、自分の心をバージョンアップさせることはできません。

企業でも、将来の幹部候補には、赤字事業部や子会社のリストラなど、あえて困難な環境を経験させることが一般的になっているそうです。

 

僕(鏑木さん)にとっての修羅場は、年に1、2回のウルトラディスタンスのレースです。10年前の僕は、フィジカル面ではいまの僕より上ですが、メンタル的にはそこまで強くなかった。10年かけて心のキャパシティを広げてきたから、今の僕にはそれが耐えられるのです。

 

「これはチャンスなんじゃないか」と思っただけで、修羅場の乗り越え方も全く変わってきます。自分の次のステップにつながるのではないかという期待感がどこかに生まれます。

逆に、修羅場を避けて逃げ回ってしまうと、メンタルを鍛えるチャンスを失います。それはもったいない。修羅場はどんどんくぐるべきというのが、いまの僕の素直な気持ちです。

 

【私の感想】

鏑木さんの「修羅場はどんどんくぐるべき」という言葉が響きました。私は弱気になったり、逃げようとしたり。ちょくちょくそうなります。そうなったときに、この言葉を思い出します。

鏑木さんが限界に挑戦し続け、それに皆が共感し、力を受け取れます。テレビで見た、鏑木さんを追ったドキュメント「50歳でのUTMB挑戦」も心を打ちました。鏑木さんは本のなかでも、子どもの頃にいじめをうけてきたり、二浪して入った大学で箱根駅伝出場の夢を断たれたり、就職した県庁で悶々と過ごしたり、うまくいかなかった時代のことも晒しています。

カッコ悪くても、「修羅場をどんどんくぐるべき」。わたしはそう、受け取りました。

 

他人と違う強みを言葉にして伝えられること

 

プロのトレイルランナーといっても、野球やサッカーのように競技戦歴で年俸が決まるという世界ではありません。プロリーグがあるようなメジャースポーツとちがって、マイナースポーツのほとんどは、企業がその人のスポンサーになることで、プロ生活がスタートします。

 

企業がその人に出資したくなるには、まず人に負けないような戦歴が必要です。次に必要なのは、他の人はないオンリーワンな価値を持つことです。同じ山を登るスポーツでも、あるジャンルでは圧倒的な強さを誇るとか、誰もチャレンジしたことのないことをしているとか。とにかく他人とは違う強みがあって、それを言葉にして伝えられること。それがプロでやっていく資質です。

 

海外のトレイルランニングのレースに出場してきて、それを日本の皆さんにも体感してもらおう、といくつかの国内大会をプロデュースしています。UTMBのようなレースを日本にも作りたい、その思いで富士山を一周する「UTMF」を実現に向けて動きました。そこで行政の人たちと話すのに、県庁の役人だった僕の経験が生きました。

 

本来、人前で話しをするのは好きではありません。しかし、UTMFという夢の舞台を実現させるための話し合いでは、気合が入りました。口から出る言葉も、真剣みの溢れたものになりました。それが説得力につながったのだと思います。

 

【私の感想】

鏑木さんはチャレンジを続けてきたから、それがオンリーワンの価値を生んでいます。だから、人が集まり、応援されます。プロとして活動できます。ただ黙々と走っているだけではなくて、自分の実現したい夢を語り、経験から得た教訓を語ってくれます。

鏑木さんにそれができるのは、自分の限界を超えるチャレンジをしてきたから。鏑木さんは「UTMB3位」の実績だけじゃなく、経験された苦境とか挫折とか、それも含めて私たち読者に力をくれます。苦労やチャレンジが一切無駄になっていない。そう思いました。

 

ありがとうございました。