矢野龍彦ら著「ナンバ走り 古武術の動きを実践する」を読みました。

 

私は趣味のランニングに、「ナンバ走り」を取り入れようとしています。疲れない動きで、日本人に合っているということを学んだので。

 

本著は、実際にバスケットボールや陸上のコーチをされている著者らが古武術の動きをどうスポーツの動きに応用するかを書かれた本です。「走る」以外にも、「投げる」「打つ」「投げる」「跳ぶ」などについて解説されていますが、私が日常に取り入れるにはやや難解に感じました。実際の体の動きを言葉や写真で伝えるのに限界があるのでしょう。

 

私には、「走り」のヒントにできる言葉が大事なので、それを拾ってみます。

 

一方の手足を同時に出すことをあまり意識しすぎない

 

・江戸時代の飛脚は一日200キロも走ったという。彼らの走法が「ナンバ」と言われるものである。「ナンバ走り」の基本的な概念とは、同じ側の手足を一緒に出すという動作。その際、重心を低く保ちながら、滑るように足を運ばなければならない。

 

・歌舞伎演出家の武智鉄二氏は「右足が前に出るときに右肩が出る。左足が前に出るときに左肩が出る」と述べており、体幹部の捻じれを極力抑えるというのがポイントになってくる。

 

・武術研究家の甲野善紀氏は「一方の手足を同時に出すことをあまり意識してはいけない」としたうえで、「見た目には腕は振っていないが、体の中で振っている感じですね」と語っています。

「左右交互型の走りは、体の捻じれが全体の動きの流れの中にブレーキをかけてしまう。それに比べてナンバ走りは、スタミナの省エネにつながります。」

 

【私の感想】

「一方の手足を同時に出す」を意識して歩いてみると、動きがぎこちなくなるだけで、省エネになるような動きに感じません。「体の捻じれを抑えて動いてみる」、というほうがわかりやすい気がしました。それと、「重心を低くして、滑るように足を運ぶ」。やってみると、武士が腰に据えた刀を持ちながら走る感じがイメージに浮かんできました。

 

末續慎吾選手のナンバ走り

 

世界陸上の200メートルで銅メダルを獲得した末續慎吾の走りは、ナンバ走りにヒントを得ている。

 

末續の走りは、他の走者と比べて重心が低く、体が真っ直ぐゴールを向いている。体の上下動もほとんどない。また肩のラインが斜めになるのでなく水平を保っている。

足の運びは、足の接地からキックに移行した後、膝が伸びることなく屈曲を保っている。

 

逆にキック後に膝を伸ばすとどうなるか。体の上下動が激しくなり、推進力が削がれる。特にスタミナが切れる後半は、ターンオーバーが遅れ、減速を引き起こす。

つまり末續の走法は、足の高速回転を維持する走りということになるだろう。

 

末續は、こう口にしている。

「腕振りを前後に振るという感覚ではなく、後ろから前に振るという感覚に変えてきました。相撲のテッポウのように腰と一緒に腕を前に送る動きで、「ナンバ走り」にような力の出し方なので、ナンバ的な腕振りと言ったんです」

 

【私の感想】

 ナンバ走りは長距離で疲れない走りと捉えていましたが、短距離のスペシャリストにも役立てられていました。そういえば、桐生祥秀選手も「筋トレはしない」と何かで読んだことがありました。

 末續さんや桐生さんも、古武術を取り入れていると思うと、ナンバ走りの可能性の広がりを感じます。私が思うに、やはり「彼らの体型や体の使い方に合っていた」、と捉えるべきと思います。ネットで末續さんの走りの動画を見てみましたが、他国の選手の体形と全然違いますし。

だから「ナンバ走り」の有効性は、普遍的というより自分に合っているかで判断するものだと思います。

 

ナンバ走りのコツをつかむ

 

ナンバ走りをおこなうとき、感覚として必要になってくるのは、左右の腸骨を柔軟にして、それぞれを独立させて前に出す感覚である。それが、局部を主役にするのでなく、肉体全体に「走る」仕事を分担させることにつながる。

 

ナンバ走りのコツをつかむ予備段階としては、歩きの中から習得する。

・両手を太腿に置いて歩いてみる。右手右足、左手左足が同時に出るナンバ的感覚が分かるだろう。

・階段や山を上る際、右足を踏み出した時に右手をその膝に添える。これは疲労困憊したときに自然にでるポーズだが、体を楽にするという意味で、しごく理に適った動きである。

・竹馬に乗って歩くのもナンバ的感覚を養う手段として有効である。

・骨盤で走る感覚を養うには、「骨盤歩き」が有効。これは、仙骨と腸骨の分離感覚を促進する。

 

【私の感想】

ナンバ走りの感覚をつかむ具体的な方法が載っていて、非常にありがたいです。上記の4つをできるだけやってみて、ナンバ走りのコツをつかみたいと思います。

かつての日本人は、足裏の感覚や機能を良く使っていたのだと思います。それに加えて、一体としてとらえがちな骨盤を左右の腸骨と仙骨の3つの骨に分けて動かしていたのだと思えてきました。

私もやってみます。

 

ありがとうございました。