このところの私の「直江兼続ブーム」。未だ続いております。

今回は、「NHK大河ドラマ・ストーリー天地人」を読みました。

 

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これらは大河ドラマ「天地人」の解説本で、前編、後編、完結編の3冊が出ていました。大河ドラマがとっても良かったので、これらも全て揃えてみました。

 

この3冊、期待以上の充実の内容!読みごたえがありました。

Amazonの中古本にて各1円で購入していますので、お買い得感も大きいです。

 

特に印象に残った3点を残しておきます。

 

  1. 紅葉の教え

     

幼少の与六(のちの兼続)が5歳で、喜平治(のちの景勝)の小姓に出ることになり、母が与六に言って聞かせます。

 

「木は、厳しい冬を乗り越えるため、力を蓄えねばなりません。紅葉が散るは、その身代わり。燃え上がるようなあの色は、わが命よりも大切なものを守る決意の色。そなたは、あの紅葉になるのです。

紅葉のような家臣になりなされ」

 

このシーン。私の記憶にも強く残っています。この「紅葉の教え」は、兼続が亡くなるシーンまで前編に渡り貫かれていました。

 

この「ドラマヒストリー天地人」では、脚本家の小松江里子さんのインタビューがふんだんに載っていて、嬉しいです。

 

この「紅葉の教え」は小松さんの創作だそうです。

紅葉が美しいのはなぜなのか。厳しい冬を乗り越えるため木は幹に栄養を蓄える。養分が届かなくなった葉は赤くなり、命を託して散っていく。この紅葉のような家臣になって上杉家を守っていけ、と。これはまさしく武士の生き方だと小松さんは語っています。

 

【私の感想】

私は、兼続の家臣としての生き方に自分を重ねて感情移入できました。信長や家康のような天下人ではない兼続の魅力は、ナンバー2で組織に生きる人間のカッコよさを表してくれていました。

だから、私も心惹かれるのです。

 

2.兼続と景勝の対立シーン

 

上杉に向かっていた徳川軍が三成軍と戦うために西へ翻したとき、家康を倒すチャンスだと主張する兼続と、背後からの追い討ちは義に背くという景勝と対立する場面。

景勝役の北村一輝さんと兼続役の妻夫木聡さんとの対談で、この場面を振り返って語られていました。

 

北村さんは、どっちも正論だと言います。家康のようなずる賢い人間に天下を獲らせてはいけないという兼続の思いもわかる、だからといって目先の利に目がくらんで義に反する行いをするのは絶対によくない。

 

妻夫木さんもこのシーンは上杉にとって大きな分岐点になるシーンだと思って熱が入ったと振り返ります。兼続の思いもわかっていながら景勝は「それでも敵を追いたいならば、わしを斬ってからにせよ」と言い、兼続は刀を持って空を斬ります。

 

そこで兼続はシフトチェンジした、と妻夫木さんは語ります。

義とか愛とかに焦点を合わせて生きてきたけれども、頭でっかちな武士としての思いなんか大したことはなくて、ただひたすらに生きるということに希望があるんじゃないか、と。

 

それに応えて北村さんが、

関ヶ原の戦いでも敗れるけれども、負けたからってなんだというね(笑)。勝とうが負けようが、生きて、民のために動くことが大切というか

 

【私の感想】

さすが名優のおふたりの表現力だと思いました。ただ歴史上の人物の人生を振り返るのではなくて、「生きるのに何が大切か」「人としてどう生きるのか」に示唆を与えてくれている気がしました。俳優さんが物語の真の部分を表現しようと熱心に取り組まれたことがよく伝わってきました。

 

3.関ケ原で敗れて真の愛の意味を知った

 

脚本家の小松江里子さんが天地人を書き終えたあとのインタビューで、最初の頃の兼続はまだ、本当の愛の意味をわかっていなかったように思うのです、と語っています。

関ヶ原で負けたことによってようやく、真の愛の意味を知ったのではないか、と。

 

兼続は結局、何も残さずにこの世を去りました。景勝に天下を獲らせることもかなわず、個人的にも3人の子供を亡くし、直江家を断絶させています。そんな兼続の姿は、ナンバーワンにならなくとも幸せになれる、ということを私たちに教えてくれています。

 

ただ、忘れてはいけないのが、兼続がオンリーワンの生き方の素晴らしさを示せたのは、一度は天下というナンバーワンを目指して挫折を味わったからである、という事実。最初から夢に向かうことをしなければ、兼続の成長はありえなかったでしょう。人はやはり、壁にぶつかってこそ強くなれるもの。

 

【私の感想】

小松さんは「天地人」の脚本を通じて、人の幸せはなんたるかを教えてくれているように思います。「紅葉の教え」を最後まで守り、勝っても負けても、家族と支え合い、友と語らい、そこに人生の喜びを感じます。更には、苦渋をなめても「民のため」になることに精いっぱい生き、悔いのない人生を生ききる。そこに「どう生きるか」のモデルがある気がしました。

 

脚本家の方や俳優さんのインタビュー記事がこんなに面白いとは。作家による小説や歴史家による解説本にはない表現があって、新鮮でした。

 

ありがとうございました。

 

追伸:先日の日曜日、いつものランニング中に赤く色づいた紅葉が目に留まりました。この葉も幹に栄養を与えて、散っていくのです。

 

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