近頃、動画サイトなどを見ているとお勧めにたくさん出てくるカテゴリのものが有る。
それは動物に関わるもので、簡単に言うと傷ついたり親からはぐれたりした動物を人間が保護して手厚く世話をして動物と信頼を高めて仲良くしていくというものである。
大抵は徒歩や車でスマホで動画を撮影しながら傷ついた犬や猫を見つけ、綺麗な布にくるんで家に連れ帰り、ミルクや餌をやり、お風呂に入れてドライヤーで乾かしてやり、場合によっては獣医や動物のトリマーなどに見せながら、だんだんと大きくなる動物とじゃれたり触れ合いながら家族の一員としての絆を深めていくというものだ。
最終的に保護した動物を回復後に森などに返すという場合も有るが、多くの場合は「その後は人間一家と動物は末永く幸せに暮らしました」みたいな結末になっている。
多くの場合この手の動画はショート動画などで、心地いい音楽やかわいいテロップなどで装飾され、見るものに「本当にいい飼い主に助けてもらって良かったね」と思わせるような構成になっているものが多い。
この手の動画はあくまでも「意図せずに偶然見つけた動物」を飼い主が損得勘定を無しに献身的に世話をして動物に無償の愛を注ぎ、その愛に動物が応えて全権の信頼を飼い主に寄せるといったサクセスストーリーとハッピーエンドになっている。
この動物は犬や猫やキツネ、よくみる鳥やフクロウなどの鳥類、リスやハリネズミなどの小動物などであり、たまに馬やシカなどの大型の動物も有るが、全体としては誰が見ても可愛いと感じるどこにでもいる飼いやすい小型の動物なのが特徴である。
確かにケガや事故などで苦しんでいる動物を助けて元気になるまで世話をしてやって、だんだんと動物が心を開いて無二の親友や家族のように関係が深まってく様子を見ると飼い主の心の広さを感じ、動物の可愛いさを感じて良いイメージしか残らないのでこの手の動画は印象が良い。
しかし、よく考えて見るとこの手の動画はおかしな部分が多々ある。最初からカメラを構えながら道端で傷ついて死に瀕している動物を偶然見つけるだろうか。そして傷ついていたり極端に小さな鳥のヒナなどが素人の世話で回復したり無事に生長したりするだろうか。
動画の撮影者はスポイトでミルクをやったり、虫を捕まえて与えたり、獣医に見せたりという献身的な世話をしているように見えるが、たかが30秒ほどの動画の中で最初から最後まで完結しているものが殆どだ。まるでパラパラ漫画のように保護して世話してエサを与えて生長して懐いて幸せに過ごす、みたいな紋切り型のストーリーになっているものが多数となっている。
そして、これもおかしなものだが全ての感動的な映像がスマホの映像で撮られ残されているという事だ。最初に保護する部分から始まってエサをやったり、風呂に入れたり、医者に連れて行ったり、回復して悪戯して怒られたり、顔を摺り寄せて自撮りしたりする全てが動画に記録されている。どうぶつの回復が芳しくなくて悲しんだり悩んだりする部分も会話を含めて映画のように全て撮影されている。
調べてみると、お勧め動画に出てきた動物系のお涙頂戴の動画を専門に公開しているチャンネルは数万に及ぶ同じような動物系の感動を呼ぶ動画を公開していた。
世界は広いと言えども偶然に保護した動物の成長記録がこんなにあるのはおかしくないだろうか。中には同じ人が何回も偶然動物を保護していたり、いかにも体裁だけを整えてそれらしく見せていると思われる動画も複数あった。
動物系の動画は再生数を稼ぎやすいと聞く。かわいい動物や可哀想な動物が幸せになる動画は好きな人が多く、繰り返し見てしまうのも事実だ。
この手の動画はそんな人間の心理を良く突いている。
一説によるとこの手の動画は意図的に作られているものが少なくないらしい。わざと不幸な動物をつくって助けたように見せ、いかにも感動的なストーリーを作り上げて再生数を稼ぐためだけに利用する。その後の動物がどうなるかは知るよしもない。
いい加減な動画になると途中で保護した動物が変わっていたりするものも有る。保護したリスの種類が途中でなぜか変わっていたなど見るものをバカにしている。
まあ、この手の動画は見るものが居るから成立して無くならないのだろうが、それに利用される動物達がいるとしたら不幸な事である。
日常生活で頻繁にかわいい動物がなんとなく治りそうな感じで道端に倒れて救助を待っている事って有ります?
そして仮にあったとしても元どおりに治って本当に可愛いペットとなって末永く一緒に暮らす事って有るだろうか。
犬や猫ならともかく、小さな鳥のヒナだとか普段は目にしないような小動物の生まれたての赤子などを見よう見まねで育て上げる事なんて難しいと思うのだが。
需要が有るから供給が必要となる。それが簡単に金になるからやる人が出てきてもおかしくない。
でもそれが当たり前になって単なるハリボテの劇場型のお涙頂戴の感動ストーリーならやめて欲しい。
単なる動物虐待のサイコ野郎と大して変わらない。
この手の動画の投稿者は自分が怪我をして回復していく様子を動画にして公開するだろうか。
まあ、やりかねない。再生数の為なら命でも売りそうだ。