「バズライトイヤーの脚」の修理

 

 要約

 バズの左脚が根本から折れた。

 体幹側がボールで大腿側のソケット状の構造であった。

 折れた基部は支点として使えなかった。

 アルミ板で別の基部を作製し、ボルトで固定した。

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 トイストーリーのバズライトイヤーの左脚が根本から折れました。

 身長30cmはある大きいサイズです。

 英国で購入されたとのことで、おしゃべりは英語のみです。

 以前ウイングを修理しましたバズとサイズ的には同じですが、ウイングのたたみ方がやや異なります。

 メーカー名の刻印はありませんが、Desny Pixer とありますから、ディズニー公認の製品でしょう。

  

  左脚のジョイント部分で折損が見られます。

 

  

 関節内部をのぞきますと、折れた部分にのりしろの無い事が分かります。

 

 「最悪、動かないけれどくっつけることは出来るかも知れないです。」と、修理が厳しいことをお伝えして、お預かりしました。

 人間の股関節でも、破壊が著明で機能改善が見込めない場合は、「関節固定術」と言う手術をします。動いていた股関節を動かなくして、しかし歩ける様にする手術です。

 

 スペースの問題、強度的な問題を考慮して悩んだ結果、出来るだけ残ったパーツを利用して股関節の運動も回復出来るように試みることとしました。

 

 分解しました。

 骨盤部分は後方の隠し蓋内のビスで前後に分割出来ます。

 これで胴体とも離れます。

 骨盤中央にプレートがあり、左右の股関節のボールがあります。この左側の根本から折れています。

 大腿部の後方のビスを外すと、ボールを取り出すことが出来ます。

 

 

 骨盤部分を前後に外し、胴体・骨盤・脚が分離されます。

 

 

 中央のプレートに戻すことは困難と判断しました。

 

 プレート側には「のりしろ」はなく、ここにあらたにボールを取り付けることは困難でしょう。ただし、骨盤内腔にはスペースがあります。

 そこで、このスペースに別のプレートを置いて支点を作ることにしました。

 

 最終的に行き着いた方法は、1.5mmのアルミ板でプレートを作り、ボールは元々の物に3mmの穴をあけ、ボルト固定とする方法です。

 ボールと支柱のサイズが小さいので、支柱には樹脂を盛って強化した上でドリルホールを開けました。ボールの頂点にはボルトヘッドが隠れるダボ穴を掘って沈めるようにしました。

 

  

  イメージの図案と1.5mmアルミ板で作った新しいプレートと3.0mm

  のボルトナット。割れたときのために長いナットを用意しましたが、

  割れずにすみました。

  ボールは本来のものを使用しました。

 

  

  骨盤に入れたアルミプレート。挟み込むだけで接着・ネジ止めはしません。

 

 全体を3.0mmのタップ切りでネジ山を切って、ボルトナットで固定しました。

 ボルトの長さを調整して、左右の股関節のバランス取りを行い、運動範囲も概ね本来の可動域が得られました。

 

 2.5mmでドリルホールを開けた後、3.0mmのタップ切りでネジ山を付けます。

 

 

 シャフト部分はBONDIC(紫外線硬化型樹脂)で補強してあります。

 ボルトの頭が出ないように埋め込みます。(6.0mmドリル穴)

 

 

 後方はダブルナットにして、余剰のボルトはカッターで切り取ります。

 

 アライメントを確認して、微調整をします。

 

 

 左右対称であることを確認します。

 

 

 埋め込まれたボルトの頭はBONDICでコーティングします。

 このままでも関節運動には支障ありません。

 

 この製品は固定用のビス穴をボディーと同色のプラスチックの隠し穴埋めダボで塞いでいます。ビス穴を見えなくして見栄えを良くする工夫です。

 分解途中で一つのダボ栓を壊してしまいました。この穴はお湯丸君(熱可塑性プラスチック)を使ってダボ栓を作って塞ぎました。着色は修正インクの白を使いました。(写真を撮り忘れました。)