しのはら(滋賀県) | すずきBのブログ「B's Blog」 Powered by アメブロ

しのはら(滋賀県)


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フォーリンデブ、はっしー という男をご存知か?
肉をはじめ、あらゆるグルメに精通する。

何がいいって、その食べっぷりがいい。
彼が食べると、ひときわ美味しそうに見える。

肉のオンザライス。
誰もが美味しいことを知っている。

タレのついた餃子をライスにバウンドさせて、熱々の餃子を一口いき、
餃子のタレがしたたったコメで餃子を追いかける。

焼けた肉の焦げとテリと肉汁、
割ったコロッケから出る湯気。

これを見て、生唾を飲まない人はいない。
これが業界用語でいう「シズル感がある」というやつだ。

テレビも雑誌も、シズルを大切にする。
シズルがないと、見てもらえない。
茂木先生が言っていた。
シズルがあると、ヨダレが出てつい見てしまうのは、
心理学の「ミラーリング効果」らしい。

世にグルメレポーターは数あれど、
今、最も注目の、シズル感ある食べ方をするのが、
この男だと僕は勝手に思っている。

デブという見た目も、シズルに一役買っている。
もし彼がガリガリだったら美味そうではないだろう。
フォーリン・ガリじゃ、ダメ(笑)。

思えば石塚さんもマツコさんも彦摩呂さんも内山くんも、
美味しそうに食べる人はみな太っている。
食べたときの美味そうな笑顔は、
つねに太ることを恐れず食べてる証、幸せの顔だ。

そして、大事なのは、はっしーが、ただ肉やコメが好きで、
ハイカロリーなものばかりを食べてるわけではないというところ。

そのアンテナは実に敏感。
B級グルメから、高級感のある和食に至るまで広く精通している。

そんな彼、はっしーと僕は、「たべあるキング 」というブロガーたちのプロジェクトで、
色々ご一緒させてもらっているのだが、
彼が「日本で一番の和食」という店が滋賀県にあるというので、
その貴重な席に同行させてもらった。

滋賀県。
琵琶湖の南東、草津線というローカル線の、
三雲駅から、タクシーで15分ほど移動した、周りは山や田んぼの
実にのどかな場所にある。

一戸建て。
普通の和風な民家なのだが、
玄関を開けると、鎧兜を横に見ながら、
鉄板のあるカウンターに通される。

我々5人でいっぱいのこじんまり空間。
だがそこで、まさに篠原劇場とでも言うような、あらゆる料理と
パフォーマンスで緩急つけながら、ずっと我々を楽しませてくれる。

アワビと、ウニソースの茶そばでいきなり掴まれる。
ウニは下北半島のもの。
かすごと卵のお椀で、ほっこり落ち着かせ、
鯉と鮎という、琵琶湖ならではの食材で、独特な世界観に
引き込んでいく。

鯉の歯ごたえは、歯を跳ね返しながらもザクッと入っていく、
今までに感じたことのない食感。

近江牛とフグの白子あんかけ。
とろとろと、白子がソースとなって肉をまとう。

トリガイがすごい。
通常トリガイは、先の薄い部分を鮨屋などでいただくが、
ここは、見たことのない親指大の太さで出てくる。
聞けばこれ、通常使わないワタの部分。
ここをあえて残し、それでいて泥臭さを微塵も感じさせないのは、
ご主人の腕なのだと思う。

さらに衝撃は続く。
フォアグラとパッションフルーツを合わせる。

笹の葉鮨のもち米で胃を満足させたかと思うと、
すかさず、いい感じで焼けた猪と、花山椒の甘酢漬け(写真)。
これが、目がさめるような美味さ。

花山椒というのは、
京都の割烹などでは定番のこの時期(4~5月)ならではの素材。
記憶に残るこの香りとビリビリ痺れる感じは、
食通の間で、「合法麻薬」(笑)と言われるほど、病みつきになる。
山椒の香りがしながら、花の甘み。

これが野山をかけぬけた猪の肉と、実に合う。
野生の猪と、その山で育った花山椒は、鴨葱を超える相性だ。

料理人は、素材と会話し、そのポテンシャルを最大限に引き出すのが
仕事だという。
だとしたらこのご主人は、すごく丁寧な会話をし、
けして気取らず、素朴に、そしておしゃれに、最大限に引き出しながら、
皿の上で、また口の中で料理を完成させてくれる人だと思う。

東京から地方へ、遠路はるばる行くべきご飯屋さんが
果たして、日本に何軒あるのだろう。

この店は、その価値のある一軒だと感じながら、ギリギリで東京へ向かう新幹線の最終に、
なんとか間に合ったのだった。

デートはもちろん、接待や親孝行におすすめ。