唇へのキスは神聖。

という教えは、

よく知られております。


☆プリティー・ウーマンより


それは愛の証。
しっとりと描かれた唇へのキス。
大事な場面でした。


そのキスに愛をこめる。
そうしたキス。
たとえば、
店主が読みすぎてバラバラになってしまった山田ミネコさんの「西の22」。

サイボーグの体をもつマリンノウツである侏羅は、
水圧で死ぬことを覚悟で、
愛するアストロノウツと弟を2人乗りの救命艇に乗せ、
深海へと沈んでいきます。



救命艇のガラス越しのキス、
 愛してる。
お別れのキスです。


店主内での
キスの名場面は数多く、
それを挙げていくには選ぶことが苦痛ともなりそうです。
以前あげた芥川さんとの茉莉花の衝撃的ファーストキスなど、
名場面の一つですが、
大人の怖さを隠し持つ芥川さんの魅力がポイントであって、
色恋沙汰ではありません。

そこで、
以下には色恋沙汰度数が低いか、
踏み外し度数が高いかのものをご紹介します。

「風と木の詩」より、


かつての性奴隷から
今や義兄など歯牙にもかけぬまでに力を得たオーギュスト・ボウの別れのキス。


名香智子さんの「緑の目」シリーズ「緑の誘惑」より、
婚約者といえど安易に体を許さぬ操正しき乙女マルグリートの語る女の本音。



人形を思わせるエミールの虚ろな瞳が、
痛ましい無垢を感じさせます。

財力も美貌も身分も有する婚約者に対する利害も含めて理にかなった欲情とも違う、
愛玩物を眺めて楽しむ女の非情。
怖いな。
色情に溺れるフォンタンジュより怖いと思いました。


伸たまきさんの「パームシリーズ」より、
もっとも人気を集めたジェームスの怖さを物語るキスシーン。

刑務所時代の副官だったボアズの姉が、
理不尽にも開店資金を騙しとられました。
その手先が雇い主カーターのろくでなしのいとこだったわけで、
もちろんム所仲間一同ご立腹です。



ジェームス・ブライアン。
シンジケートの大ボスの義子で、
義父にも義父の敵にも憎まれて命を狙われ、
11歳で誘拐されましてから、
紆余曲折を経て刑務所へと避難し、
さらに
元医者の私立探偵カーター・オーガスのもとにたどり着いた男です。

基本、
たいへん高い知能をもった無欲な男です。



人は欲があると行動が読みやすいのですが、
無欲であると難しくなります。


刑務所において、
ジェームスがボスだったについては、
無論のこと腕力の強さも不可欠でしたが、
この無欲の恐怖はあったように思います。


さて、
最後は、
王道に戻りたく思います。
心にしみいる本来のキスは、
木原敏江さんからお借りします。

世阿弥の恋を描いた夢幻花伝です。




「そういう時代でありましたよ」
の一文に、
語り尽くせぬ様々が昇華していく。
木原さんの物語は恋を語って他に類を見ない情感がございます。

では、
お風呂で切り替えられるか、
ちょっと恋愛に傾きすぎのところ、
どうなるかで
また記事にします。

画像はてもちの漫画を撮影してお借りしました。
ありがとうございます。