バグダッドからからドゥラ・ユーロポス、そしてパルミラ

シリア砂漠を渡る旅の記録です。






 

ベドウィンのテント、

そこで顔を合わせてラクダの用意を頼むNHK一行。




取材する全員が旅人として映像に残り、

事前にすべて準備が整うわけにはいかなかった1983年当時、

まさに夢だった「シルクロード」が浮かびます。

 

思わずもう一度その映像をしみじみと眺めたくなりました。

イスラムの民族衣装は、

ニュースでは恐怖と兵器と共にありますが、

この映像では厳しい環境を生き抜くための工夫であり、

ベドウィンの生活と共にあります。





 

寝る前には

テントの周りのサソリ退治。

53匹を退治してようやく休息の夜が始まります。

「都会の人が刺されたりしたら、

 一発で死んでしまいますよ」

過酷な環境です。


 

夕闇迫る砂漠をキャラバンが行きます。



撮影機材に食糧、

2tの荷物がたった10頭のラクダで十分だと言います。

ラクダ最強でございます。

操る少年も、また果敢。


隊商の運ぶ荷が

この砂漠を超えて西から東、東から西と旅をした。

取材班の興奮が伝わってきます。


 




ホジェイルの井戸で一日休憩。

深さは25M、直径1Mの井戸水は冷たく、

顔を洗うNHKの方は嬉しそうです。

ドラム缶一本の水を一頭のラクダが飲み干すとか。

井戸には守りが必要です。

井戸一つに一家族、

四つの井戸に四つの家族が井戸を守ります。



宴です。



 

 

取材班10人。ベドウィンの牧童13人。

一同そろった食事の場は

男ばかり。

「わぁ こぼれちゃいますよ」

取材班のおしゃべりが飾らぬというか、

彼らの感じたことを

そのまま番組の根幹としているようです。

すごいよ 

驚いたよ 

ラクダで旅してるんだよ

その興奮を日本に伝える日を夢見て、

夜が更けます。

 

 

そして、

パルミラです。

1キロ半の列柱道路。

キャラバンの旅が終わりました。

 



 

ありがとう

ありがとう

次々と抱擁が交わされます。



「ラクダが一番がんばったよ」

そんな声が聞こえます。



 

キャラバンとの別れも

旅の風景です。

生き抜くことそのもの厳しい環境、

学校とか別世界です。

一つの井戸を守る生活の中で、

男の子は足の裏で砂漠を学ぶとお父様がおっしゃる。




 

日本では考えられない生活、

それでもそこに確かにある安息。

厳し過ぎる環境の中で、

家族全員が役割をもって働いている姿が、

ゆっくりとした生活に浮かびます。

 

 

 

割礼の風習、

きっとこの家族にもあったことでしょう。

残虐な風習です。

消えていくべきものもございます。

 

子どもたちは学校に行くことで

世界が開けます。

羊とラクダと供に老いていく人生だけが未来ではありません。

 

女性も共に食卓を囲む権利があります。

男ばかりが社会に向かって扉を開いている。

それは不平等です。

 

 




ですが、

この風景は、

そうした批判を要さぬものです。

そこに家族の風景がどっしりと根付いている。

 

半世紀前ですと、

長野の田舎で生きる店主宅では、

父親だけの小皿がありました。

向田邦子さんの随筆でもあったように思います。

小さな家族の風景です。

 

 


思ってしまいますのは、

何が暴力をもたらしたのだろうということです。

 

 

戦争が心の中に生まれますように、

暴力も心の中に生まれます。

何がその土地に渦巻くようになるのか、

アフガニスタンも日本も戦争をいたしました。

 


 

その毒は“夢”だったのだろうか。

物質的な豊かさや他を足下に見る万能感、

焦がれれば焦がれるほど、

今の自分を卑小に感じさせる“夢”かなと。

 

 


偏見と差別という視点、

それが提示されたときにどう振る舞えるかで

未来は決まるものです。

それ以前と以後に繋がる自分をもって、

見つめる心の目を大事にしたいなと思います。

 


 

最後は

何回も繰り返し見た

パルミラの姿です。

破壊される前のパルミラ。




 

人が作り出す美は

発達した技術や財力を前提とするものが多い。

パルミラに集まった富が作り上げた壮麗な都は、

遺跡となってなお美しく、

美しいがゆえに破壊されました。

人の夢が作りあげ、

人の夢ゆえに滅びた美しい都です。

 



 

…………オチは無常観となりそうです。

見返した映像の中のベドウィンのご家族に、

このままであってほしいと感じました。

家族の風景の一つ一つが豊かだったからです。

 

でも、

人は立ち止まれません。

だから一枚の絵として焼き付けて心にしまい、

新たな日を生きていく。

今の目で見たら偏見と差別にあふれた、

それでも

その時には豊かで慕わしかった風景が、

たとえば映画の中に凍結して残っています。

 

そこからにじみ出る温かさを思いますと、

諸行無常を思わずにいられません。

 

 

さあ

明日はワクチン接種です。

6時からがつがつ仕事が待っていますが、

それを終えたら金曜日も含めて三日半の連休入りです。

発熱、倦怠感、筋肉痛、吐き気等々が

どうか少なめにすみますように。

 

画像はお借りしました。

ありがとうございます。



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