詩ばっかり読んでいますのは、
老眼に優しいからでございます。

ほんとに優しい。
お陰様で
若い頃には目にしなかった詩に
次々と出会います。

一方、
流行のためか見なくなっていた詩に
わあ 久しぶり!
再会を喜ぶこともございます。



懐古趣味に浸る今日でございますから、
再会の詩から参ります。
高校で出会った詩でございます。
京都修学旅行も経て、
そこそこ古文の学習もして、
雰囲気を味わう素地ができた頃に出会いました。

三好達治さん、
詩集も買いました。
いつしか断捨離してしまったんですね。
堀辰雄さん
佐藤春夫さん
同じくでございます。




甃のうへ  三好達治

あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃
のうへ


 五七調の調べが
 風に流れる花びらそのままに
 ひらひらと破調に裳裾をなびかせる。

 “をみなご”の一語に浮かぶ女人らは
 花の下に置いて明るく、
 ただ光ある春を思わせる。

 その美をはんなりと描ききる詩人は
 その美の中を影を抱きつつ
 甃を行く


店主、
短歌と俳句を愛しながら
微妙に五七の定型をきっちり守る文語詩に
心が添いきれぬことが
多うございます。

 大きな声では言えませんが
 藤村の初恋………苦手でございます。
 あ、上田敏訳の“山のあなた”は好きです。

その中で
こちらには酔いました。
堀辰雄さんに酔い、
佐藤春夫さんに酔いました。


少年愛の美学を追う一方、
乙女の感傷に浸った女子高時代が思い出されます。



次に
老いたからこそ
うふふと読める詩をご紹介します。

これを女子高生がニタニタ読んでましたら、
こらこら分かって笑ってるのかな
ムッとしてしまう。


新年の声  天野忠

これでまあ
七十年生きてきたわけやけど
ほんまに
生きたちゅう正身のとこは
十年ぐらいなもんやろか
いやぁ
とてもそんだけはないやろなあ
七年ぐらいなもんやろか
七年もないやろなあ
五年ぐらいとちがうか
五年の正身………………
ふん
それも心細いなあ
ぎりぎりしぼって
正身のとこ
三年………………

底の底の方で
正身が呻いた
   そんなに削るな


こうして
お布団うれしいな
宝くじうれしいな
書き留めますこと
今を生きる大切な生の瞬間瞬間でございます。


剽軽な言い回し、
どの瞬間もうっふっふー
楽しめる軽みあることばと感じます。
それありましてウンウン頷けるものある還暦でございます。





たとえば、
壁に爪を立てるようにして
生きた!
叫ぶようなとき





たとえば
ああ一生懸命だったな
不器用だったな
ほろ苦く思い出す若き日々




たとえば
美しいものに打たれ
ただ見つめる時間





どれもたいそう短いものです。
思い出せぬ膨大な時間を
ふにゃふにゃと生きまして
人生還暦まで参りました。





ああ あの時と
時によみがえる瞬間が
生きてきた飛び石のようなもの。
その飛び石を糧に
明日も生きたいなー
などと思います。



こうして、
書き留めますは、
細やかな生きるを愛しむためも
ございます。

今日も生きました。
うんうん生きました。
うっふん
お風呂入って裸眼読書楽しみます。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。





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