この小品は純粋な創作です。 
実在の人物・団体に関係はありません。




雨の音


窓ガラスは闇に沈み
鏡となっている。


華奢な夜着の肩先が映る。
腕が上がり、
その細い指先が
そっと流れ落ちる雨を辿る。
辿る指先が 
男の輪郭に誘われる。


男は
ゆったりと
椅子に身を預けている。


読んでいた本は
閉じられ、
その視線は少年を見詰めていた。


男はバスローブの帯を締め、
長い足を組んで、
頬杖をついていた。



視線は
絡み合って
指先は留まる。


男の眸に留まる。


  見えないよ
   
  ぼく

  見てないよ


その指先に
鏡の中の男を隠し
少年は
自分の華奢な指先を見詰めている。



男が立ち上がり
背を向ける。


あっ
窓ガラスから
指先は
離れる。



男は
小テーブルに本を置き、
ゆっくりと振り返る。


窓ガラスを
見詰める視線は
少年の眸を捉えて止まる。


ガラスにつたう雨に
男の眸が揺れ
少年は
みじろぎする。


男が動き出す。
少年は
近寄ってくる男を待ち受けて
頑なに背を向ける。



  もう
  おやすみなさい
  の
  時間じゃないのか


男は囁く。



  海斗が
  ご本読んでるんだもの

少年は
囁き返す。



  悪かった
  

カーテンが閉じられた。



生身の体を残して
鏡は消える。


眸は眸に絡み
唇は唇に重なる



  おやすみなさい
  は
  まだだよね

  ああ
  まだだ


ボタン一つ外されれば
少年の夜着は
その肩を滑り落ちていく。


イメージ画はwithニャンコさんに
描いていただきました。


⭐すみませーん
    一日たらたら寝たり起きたりで
   幻想で許してくださーい。



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