この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








黒猫物語番外編 不在の1週間<初秋>7
2015-12-31 02:47:15
テーマ:クロネコ物語






署に行き、
確保された三人の供述を読んだ。

サガは
やはりただ者ではない。
一撃で確実に動きを封じている。
お陰で三人は捕まえられた。


夏の事件もこいつらだった。
リーダーは天使をなぶった奴。
風貌が一致する。

その風貌を語れるのは
この三人以外には
天使だけだ。

公園の月明かりでは
顔形は鮮明には分からない。
店内ではっきり顔を見たのは
天使だけなんだ。

この連中
互いに個人情報は
一切知らない。
ネットだけの繋がり
しかも
足跡は丁寧に消されている。
厄介なものだ。



天使の調書をまとめ
公園周辺の聞き込みをし、
7時を回る頃、
帰宅した。

玄関に灯が灯っている。
ああ
天使がいるんだ
そう思うと
足取りも急に軽くなる。



ドアを開けると
温かなシチューの匂いがする。

天使とサガが
テーブルに着いていた。

二人とも
俺を見て立ち上がる。

俺は絶句した。


妹はうきうきだ。
あら
お帰りなさい

どう?
絶対似合うと思ったのよ。

なんて綺麗なんでしょ。
明日はね
すごく可愛いのを着せたげるの。
たっくさん買ってきたんだから。

あ、
私の楽しみなんだから
お金はいただかないわよ。
そのかわり、
毎日ちゃんと着てみせてね。



何なんだ
俺の家に妖精がいる。


ヒラヒラのふわふわだ。

ヒラヒラした衿が
首回りを幾重にも囲んでる。
細い首が
すっと伸びて
小さな愛らしい顔が花のようだ。

袖はフワッと膨らんで
袖口でキュッと締まってる。
これ、
女の子の服でもおかしくない。

なんて華奢な体をしてるんだ。
昨夜の事件に
改めて胸が痛む。

そして、
とにかく綺麗だよ。



俺が
あんまり
マジマジと
見ていたからだろうか。

天使は
頬を染めて
サガの後ろに隠れてしまった。



ほら、
口開けて見てないで
兄さんも座ってちょうだい。

この子
日本のシチューが
好きだっていうから
今夜はシチューよ。

デザートはブラマンジェ。
甘めにしてあるから
覚悟してね。


はいはい
まだパンケーキの甘さが
口に残ってるが
まあ
いいだろう。
天使は甘いものが好きなんだ。



携帯が鳴る。
署からだ。

おいおい
これから夕食なんだぞ。

【モーガンか?
   例の三人が拘置所内で
   射殺された。

   お前んとこの
   被害者は無事か?】

返事もしないで切った。

《サガ!
   捕まえた三人がやられた。
   この子は主犯を見てる。》



サガが
飛び付いて
電気のスイッチを消す。

俺は妹を抱え
サガは天使を抱えて
床に伏せた。

同時に
窓ガラスが
銃弾で砕け散った。



こちらは丸腰だ。
銃はどうしたって?
拳銃は署に置いてきてるんだよ。
俺は平和主義なんだ。


妹と天使を
客間に放り込む。

確実に
誰かが警察を呼んだだろう。

サガと二人だ。
頼もしい。



割れた窓から
入ってくる人影が見える。
二人か。
素人だ。
街灯の明かりを考えていない。



なんて考えていたら
いつの間にか
サガがいない。

廊下から
ギャッ、と悲鳴が響く。
一人倒したな。

そのまま
また
静まり返る。



続いて三人目が
窓に現れた。
散弾銃を抱えている。
窓ガラスを割ってくれたのは
こいつらしい。

空を裂いて何かが廊下から飛んだ。
そいつは
抱えた銃を
廊下に向けて
発砲する。

廊下から
男が倒れこんだ。
サガではない。
二人目だ。

同時に銃声が響く。
散弾銃野郎は肩を撃ち抜かれて
膝を着いた。

続いて二発目が
その膝を撃ち抜く。

こいつは
もう
気にしなくていい。

サガは
拳銃を手に入れたな。



犯人グループは七人だ。
三人が拘置所で射殺され
残りは四人。

今三人を倒し
残りは一人か。



入ってくるだろうか。

窓ガラスを踏んで
次に入ってきたのは、
警官だった。

何だ?
もう到着したのか?

声をかけようとして
俺は踏みとどまった。

代わりに
手に触れたフォークを
部屋の向こうに
放ってみた。

カチャーン
とたんに発砲しやがった。
やっぱりな
と思ったときには

サガが
拳銃を蹴り飛ばし
そいつを組伏せていた。

俺は電気のスイッチを入れた。
天使が言った通りの風貌の男が
サガの下にいた。

サガは
表情も変えずに
そいつを殴った。

一発目は顔に叩き込んだ。
ガン!
と床に頭を打ちつけて
そいつは昏倒した。

立ち上がると
二発目は蹴りだった。
男の股ぐらだ。
男の体が浮き上がり
どすんと床に落ちた。

可哀想に
一生使い物になるまい。
完全に潰すつもりで蹴っていた。

サガが潰すつもりで蹴ったなら
まあ
潰れただろう。
二度と悪さはできまいよ。



パトカーのサイレンが聞こえる。
もう終わったよ。

ちくしょう。
俺の家がめちゃめちゃだ。

これじゃ
天使を泊められないじゃないか。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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