この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





小景 ケーキが食べたい!
2015-12-17 07:24:18
テーマ:クロネコ物語





テーブルに平べったくなった彼がいる。
食べきった!
42・195キロ完走!!
かのアピールね。




『立ってもいいぞ。』

サガさんが
ポンと頭をたたく。




頬っぺをテーブルに付けたまま、
見上げる目には
なんと
涙がじわっと滲んでいる。

「た、食べたもん!」





涙声とは
大変ね、サガさん。



『片付けだ。
  動け。』

「やだ!
   立っちゃいけないって言った!!」




なんだ、こりゃ。


サガさんは
ひょいと
少年を
テーブルから起こし、
椅子の背に押し付けた。




動けぬ少年は
涙の痕をサガさんが唇で辿るのを
避けられない。
たまらず微かな声があがる。


唇に唇が辿り着いたときは
少年の唇は微かに開き
サガさんを待ち受けていた。





唇が離れると
少年が囁く。

「……ずるいんだから。」





黙らせたところで
サガさんは
その顔を優しく覗きこむ。

『どこが気に入らない?』 




余韻に頬を染めたまま彼は訴える。

「……見た目、デザートかと思ったんだ。」



『それで?』



「甘くないゼリーだったんだもん。」





くすっ、
と笑ったサガさんは言う。

『わかった。
  何が食べたい?』


「…………ケーキ。」


『買いに行こう。』




買ってきた。
可愛らしいショートケーキ。



サガさんがコーヒーを淹れる。
少年がお皿を出す。

テーブルに花が咲く。
満面の笑顔で

「いただきます!」

と手を合わせる少年の愛おしいこと。



ゆったりとコーヒーを味わいながら
サガさんは少年を見詰める。




なんて美味しそうに
食べるのかしら。

一口食べては
ニコッとするの。




「ご馳走様でした。」

と手を合わせる姿まで
見届けて、

手を伸ばし
その口許についた生クリームを
拭ってやりながら
サガさんは言ったわ。



『俺もご褒美はもらうぞ。
  そんな顔を見せて
  ただで済むと思うなよ。』



真っ赤になった彼。

まだ時間はあるわね。
仔猫完食には充分だわ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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