この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。
どうでもいいくせに! 加筆
2015-12-12 15:47:45
テーマ:クロネコ物語
カチッ 玄関が開いた。
大きな荷物で出た二人が
大きな荷物で帰って来た。
彼がサガさんに
何か言いかける。
サガさんは
テキパキと片づけに入り、
彼は居間に残される。
その片付けは暫しの余裕ね。
居間に戻れば
あなたは
彼に
向き合うのよ。
出掛けるまでの幾夜かを
二人は
祈りを込めるように
過ごしていた。
静かな
静かな夜。
狼の腕に
小さな頭がある。
互いの心音を
二人は聴いている。
ゆっくりと打つ狼の鼓動が
小さく応える仔猫の鼓動を包む。
「見ていてね。」
仔猫が囁く。
『お前しか見ていない。』
狼が応える。
眠りに入る前
安らかに
と労りだけを込めたキスが
仔猫に与えられる。
仔猫は
そのキスを受け
そっと目を閉じる。
見ていてね
見ている
毎夜
繰り返される
愛の挨拶。
1週間の不在があり、
二人は戻ってきた。
サガさんが居間に戻るのを
彼は立ったまま
迎えた。
「見てくれた?」
真っ直ぐに
サガさんを見詰める彼。
少し震える足。
今、
この子は、
賭けている。
入り口に
狼は
立ち尽くす。
仔猫は待ちすぎていた。
もう
労りは
要らないのね。
仔猫は駆け寄り
狼に体ごとぶつかる。
「わかんないの?!」
後は言葉にならなかった。
ただ狼の胸を
拳で叩く。
涙は溢れ
思いは、
悲鳴のような叫びとなって
部屋を満たした。
狼が抱き締めても
仔猫は暴れる。
欲しいのは労りじゃない。
そんなものは要らないのよ。
狼が暴れる仔猫を抱えあげた。
毛を逆立てた仔猫が
逃れようともがくのを
ものともせずに
寝室に運び
ベッドに放り込む。
泣きながら拒む仔猫を押さえ付け
いやいやをするように
首を振る仔猫から
服を剥ぎ取っていく。
狼が
もどかしく
脱ぎ捨てた服が床に散らばる。
「僕の気持ちなんか
どうでもいいくせに!」
全身で狼を拒んで仔猫が叫ぶ。
『済まなかった。』
泣き濡れた仔猫が
狼を見上げる。
『お前を傷付けたくなかった。』
仔猫の目に
また
涙が溢れる。
『間違っていた。
済まなかった。』
仔猫が狼に訊ねる。
「僕の気持ち、…………
………………………… わかった?」
触れるくらいに
思いがわかる。
思いだけが
空気を満たして
狼の返事しか
返すものがない。
身を投げ出して
己を求める愛しい者。
どうして
応えないでいられるかしら。
狼は
仔猫の耳に
そっと囁いた。
『俺が欲しい
俺と一つになりたい』
仔猫は
はにかみ
狼にしがみついて
顔を隠した。
その羞じらいが
切り捨てたはずのものを
呼び戻す。
狼は
その耳を甘く咬んだ。
仔猫は微かに声をあげ、
身を捩る。
その声に
狼は応える。
昼下がり
明るい陽光が
絡み合う二人に降り注ぐ。
その光が翳り
夕闇が部屋を包むころ
二人の渇きは
ようやく満たされた。
最後にあげた声を
抱き締めた体ごと味わい、
狼は仔猫の全てを受け止める。
『まだ抱けない。
待てるか?』
まだ余韻に身を震わせている仔猫に
狼は優しく問う。
「……うん」
夢現に応える仔猫の唇に
狼はそっと唇を重ねる。
日は落ちたわよ。
ご飯も食べさせてね。
仔猫を食べる時間は終了!
お昼も食べさせてないでしょ。
画像はお借りしました。
ありがとうございます。
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実在の人物・団体に関係はありません。
どうでもいいくせに! 加筆
2015-12-12 15:47:45
テーマ:クロネコ物語
カチッ 玄関が開いた。
大きな荷物で出た二人が
大きな荷物で帰って来た。
彼がサガさんに
何か言いかける。
サガさんは
テキパキと片づけに入り、
彼は居間に残される。
その片付けは暫しの余裕ね。
居間に戻れば
あなたは
彼に
向き合うのよ。
出掛けるまでの幾夜かを
二人は
祈りを込めるように
過ごしていた。
静かな
静かな夜。
狼の腕に
小さな頭がある。
互いの心音を
二人は聴いている。
ゆっくりと打つ狼の鼓動が
小さく応える仔猫の鼓動を包む。
「見ていてね。」
仔猫が囁く。
『お前しか見ていない。』
狼が応える。
眠りに入る前
安らかに
と労りだけを込めたキスが
仔猫に与えられる。
仔猫は
そのキスを受け
そっと目を閉じる。
見ていてね
見ている
毎夜
繰り返される
愛の挨拶。
1週間の不在があり、
二人は戻ってきた。
サガさんが居間に戻るのを
彼は立ったまま
迎えた。
「見てくれた?」
真っ直ぐに
サガさんを見詰める彼。
少し震える足。
今、
この子は、
賭けている。
入り口に
狼は
立ち尽くす。
仔猫は待ちすぎていた。
もう
労りは
要らないのね。
仔猫は駆け寄り
狼に体ごとぶつかる。
「わかんないの?!」
後は言葉にならなかった。
ただ狼の胸を
拳で叩く。
涙は溢れ
思いは、
悲鳴のような叫びとなって
部屋を満たした。
狼が抱き締めても
仔猫は暴れる。
欲しいのは労りじゃない。
そんなものは要らないのよ。
狼が暴れる仔猫を抱えあげた。
毛を逆立てた仔猫が
逃れようともがくのを
ものともせずに
寝室に運び
ベッドに放り込む。
泣きながら拒む仔猫を押さえ付け
いやいやをするように
首を振る仔猫から
服を剥ぎ取っていく。
狼が
もどかしく
脱ぎ捨てた服が床に散らばる。
「僕の気持ちなんか
どうでもいいくせに!」
全身で狼を拒んで仔猫が叫ぶ。
『済まなかった。』
泣き濡れた仔猫が
狼を見上げる。
『お前を傷付けたくなかった。』
仔猫の目に
また
涙が溢れる。
『間違っていた。
済まなかった。』
仔猫が狼に訊ねる。
「僕の気持ち、…………
………………………… わかった?」
触れるくらいに
思いがわかる。
思いだけが
空気を満たして
狼の返事しか
返すものがない。
身を投げ出して
己を求める愛しい者。
どうして
応えないでいられるかしら。
狼は
仔猫の耳に
そっと囁いた。
『俺が欲しい
俺と一つになりたい』
仔猫は
はにかみ
狼にしがみついて
顔を隠した。
その羞じらいが
切り捨てたはずのものを
呼び戻す。
狼は
その耳を甘く咬んだ。
仔猫は微かに声をあげ、
身を捩る。
その声に
狼は応える。
昼下がり
明るい陽光が
絡み合う二人に降り注ぐ。
その光が翳り
夕闇が部屋を包むころ
二人の渇きは
ようやく満たされた。
最後にあげた声を
抱き締めた体ごと味わい、
狼は仔猫の全てを受け止める。
『まだ抱けない。
待てるか?』
まだ余韻に身を震わせている仔猫に
狼は優しく問う。
「……うん」
夢現に応える仔猫の唇に
狼はそっと唇を重ねる。
日は落ちたわよ。
ご飯も食べさせてね。
仔猫を食べる時間は終了!
お昼も食べさせてないでしょ。
画像はお借りしました。
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